道徳教育と道徳科の授業展開 の商品レビュー
基本的に☆は五つを選ぶ、☆四つはよほど気に入らないことがあったときだ。つまり☆三つとはそういうことである。 内容そのものよりもまず日本語そのものがおかしい。いくつか引いておこう。 「学校における道徳教育の重点目標を明確にして推進することができる学校としての重点目標を明確に...
基本的に☆は五つを選ぶ、☆四つはよほど気に入らないことがあったときだ。つまり☆三つとはそういうことである。 内容そのものよりもまず日本語そのものがおかしい。いくつか引いておこう。 「学校における道徳教育の重点目標を明確にして推進することができる学校としての重点目標を明確にし、それを全教師が共有することにより、学校の教育活動全体で行う道徳教育に方向性をもたせることができる」(P.30~31) この日本語の意味を一読分かる人がいるだろうか。 なおこの箇所、おそらく『学習指導要領 特別の教科 道徳編』から抜き出しものだろうが、『学習指導要領』では以下のように書かれている。 「(イ)学校における道徳教育の重点目標を明確にして推進することができる 学校としての重点目標を明確にし、それを全教師が共有することにより、学校の教育活動全体で行う道徳教育に方向性をもたせることができる」 何のことはない、『学習指導要領』の小見出しと本文を単純につないだだけであるが、つないだことで意味の通らない文章になってしまっている。 同様の箇所は他にもある。 「道徳教育や道徳科の特質を理解し、教師の意識の高揚を図る全教師が、道徳教育及び道徳科の重要性の重要性や特質について理解を深められるよう云々」(P.33) これも『学習指導要領』では以下の通りである。 「(イ) 道徳教育や道徳科の特質を理解し,教師の意識の高揚を図る 全教師が、道徳教育及び道徳科の重要性や特質について理解を深められるよう云々」 仮に学生がこんな引用をしてきたら教員はどのような指導をするのだろうか。私なら間違いなく横着するなと怒る。ましてこれは大学のテキストで2,000円ほどする代物である。どのような意図でこのような文章を作成したのか正直理解に苦しむ。 次のような文章はどうだろうか。 「道徳科においては、児童が道徳的価値の理解を基に物事を多面的・多角的に考える体験などを通して、そのよさや意義、困難さ、多様さをなどを理解することが求められる」(P.148) この引用個所の「そのよさ」の「その」が何を指すか指摘できるだろうか? 「道徳的価値」なのか、それとも「体験」あたりだろうか。私には決めかねる。 そしておそらくこれは『学習指導要領』の「解説」を改変したものだと思われる。 「道徳科においては、児童が道徳的価値の理解を基に物事を多面的・多角的に考えることができるようにすることが大切である。道徳的価値の理解は、道徳的価値自体を観念的に理解するのではなく、道徳的価値を含んだ事象や自分自身の体験などを通して、そのよさや意義、困難さ、多様さなどを理解することが求められる。」 これなら「そのよさ」が指すのは「自分自身の体験」であろう。「解説」の二文をむりやり一文に圧縮した結果の改悪である。 他にも引用個所の対する注意書きとして『「児童」を「児童・生徒」と置き換えて受け止めたい』とわざわざ断っておきながら、引用個所に「児童」という単語がないという箇所もある。 学生に読ませるなら、読ませるだけの責任を持って執筆していただきたいものである。 本当は☆一つにしたいところだが、内容的には読むべき個所は多々あるので(教科書だから当たり前だが)、ひとまず☆三つでとどめておく。
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