戦争と性暴力の比較史へ向けて の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
たまにはちゃんとした方の上野先生本も読まないとと思って読了。 もちろん非常に悲惨な話題を取り扱っている本だから、読み始めるのに時間がかかったけど、きちんと学問的に取り組まれていて、研究の方法論的な部分も多いから、読みだしてしまえば、しんどくはない。 中心的なテーマとしては、研究者と証言者との距離、証言者による語りと「生の記憶」との距離がある。 最近の本なので、黒川開拓団におけるソ連軍への性接待についてとか、まさに最近話題になった内容が取り上げられている。 完全に知らなかった話としては、ナチスの強制収容所内の売春施設についてぐらいで、その存在が長らく不可視化されてきたことの理由についての分析など、面白かった。
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日本軍「従軍慰安婦」や満蒙開拓団引き揚げ者のソ連兵への「性接待」など、従来は近現代史に詳しい中央大学教授の吉見義明氏が歴史学を中心に、丹念に調査し、証拠資料を元に歴史的事実が紹介されてきました。本書では、歴史学的研究は一定評価しつつも、被害者やその関係者からのナラティブな「聞き取...
日本軍「従軍慰安婦」や満蒙開拓団引き揚げ者のソ連兵への「性接待」など、従来は近現代史に詳しい中央大学教授の吉見義明氏が歴史学を中心に、丹念に調査し、証拠資料を元に歴史的事実が紹介されてきました。本書では、歴史学的研究は一定評価しつつも、被害者やその関係者からのナラティブな「聞き取り」とその積み重ねを丹念に行い、整理を進め、また膨大な資料を調査・対比し、編集されているのが特徴です。 被害者である女性は何十年も「沈黙してきた」、いや「沈黙せざるを得なかった」。その背景を、「男尊女卑」、「家父長制」、「ミソジニー(女性蔑視)」、「男性の女性に対する支配欲」などの観点から読み解きます。 現代もなお続く女性への「性差別」と「性被害」の問題の根底が、この書籍に集約されています。ジェンダー平等を進める学習書としても、是非本書をお読み下さい。
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