人間であること の商品レビュー
文春が当該書の帯に「日本のソクラテス」と紹介した大碩学の時代を超えた名著。文春の帯紹介が決して大袈裟ではないと感じさせる真の意味での思想家であった。 一例をあげる。 日本の近代批評の確立者と言われる小林秀雄が畢生の大著「本居宣長」を書き終えた後、「もうあれに付け加えることは何もな...
文春が当該書の帯に「日本のソクラテス」と紹介した大碩学の時代を超えた名著。文春の帯紹介が決して大袈裟ではないと感じさせる真の意味での思想家であった。 一例をあげる。 日本の近代批評の確立者と言われる小林秀雄が畢生の大著「本居宣長」を書き終えた後、「もうあれに付け加えることは何もない」とまで言っていた「本居宣長」について、「本居宣長補記」を執筆した契機となったのは、当書に掲載されている田中美知太郎「哲学の文章について」であった。 小林秀雄は、本居宣長補記にて、 「先日の田中美知太郎氏の「哲亭の文章について」と題するお話(日本文化曾議月例懇談曾)を、収録集で、大愛面白く讀んだ。哲學者プラトンは、文章といふものについて、非常に鋭敏な、異様とも言へるほど鋭敏な意識をもつてるた。その事を、田中氏は、「パイドロス」から、いろいろ例を引いて話された。今度、「本居宣長」の仕事で、私が、まともに取組まねばならなかつたのは、やはり「哲学の文章」といふもの、論理の進行を追ふより、文章の曲折を味はふのが先決ではあるまいか、といふ問題であつた。「パイドロス」は、プラトンの作の中でも愛讀したものだし、それに、この作の發想には、宣長の基本的な考へに、直ちに通ずるものがあると思はれるし、同じ問題につき、私の思ひ附いたところを述べる。」と記している。 洋の東西を問わず、賢哲の赴く先は重なるものか。 この本に収められた田中美知太郎氏の論説に、小林秀雄がいかに感銘したことか。小林はその後、学生への講演でも「哲学者の文章」として熱弁を奮い、その模様は講演CDにも収められている。
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【日本を代表するギリシア哲学者の講演集】「人間であること」「歴史主義について」「日本人と国家」など八つの講演に「徳の倫理と法の倫理」等二篇の論文を加えた碩学の肉声。
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