不当逮捕 の商品レビュー
林克明『不当逮捕 築地警察交通取締りの罠』(同時代社、2017年)は築地警察署による不当逮捕事件を明らかにした書籍である。ある寿司店主は築地市場に仕入れに来た際に警察官と駐車違反をめぐり、ささいな口論になった。ところが、ヒステリー状態になった警察官が「暴行を受けている」と緊急通報...
林克明『不当逮捕 築地警察交通取締りの罠』(同時代社、2017年)は築地警察署による不当逮捕事件を明らかにした書籍である。ある寿司店主は築地市場に仕入れに来た際に警察官と駐車違反をめぐり、ささいな口論になった。ところが、ヒステリー状態になった警察官が「暴行を受けている」と緊急通報した。寿司店主は駆けつけた多数の警官たちに公務執行妨害で逮捕され、19日間も勾留された。 寿司店主は冤罪に泣き寝入りせず、東京都(警視庁)と国(検察庁・裁判所)を被告として国家賠償請求訴訟を提起した。事件から9年後の2016年に東京高等裁判所で勝訴判決を言い渡され、判決は確定した。この経緯を明らかにしたドキュメントである。泣き寝入りせずに闘った寿司店主は立派である。 この事件は本来ならばヒステリー状態になった異常な警察官一人の問題である。悪徳警察官の狂言による公務執行妨害でっちあげという話になる。警察の体質批判には直結しない。ところが、日本では警察や検察、裁判所までが一体化して警官が作った冤罪を組織的に正当化してしまう。文字通り組織の問題である。ここが最大の問題と感じた。 本書のタイトルの『不当逮捕』と言えば、私はナンシー・テイラー・ローゼンバーグの小説を想起する。これは主人公が不当逮捕される小説である。この小説には以下の言葉があるが、本書の事件にも該当する。「警官たちは、たとえ罪のない人々が苦しむ結果になろうと、仲間を守りあい、ミスや不祥事をかばいあいます」 一方で小説では権力側の人間にも主人公側の味方がいて、強大で陰湿な警察権力相手の孤立無援な闘いではなかった。これは小説と現実の違いというよりも、米国と日本の違いに感じてしまう。それだけ日本は救い難いのではないか。
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