技術の街道をゆく の商品レビュー
問題を解決するのは大事だが、問題が何かを正しく認識することのほうがもっと大事だ、という趣旨のことが書いてあって、そのとおりだと思いました。 筆者が大学生の時に釜石の転炉をみたことや、たたら製鉄や、マンチェスターとリバプールの鉄道の話は面白かったです。 日本の技術者には「物を作る」...
問題を解決するのは大事だが、問題が何かを正しく認識することのほうがもっと大事だ、という趣旨のことが書いてあって、そのとおりだと思いました。 筆者が大学生の時に釜石の転炉をみたことや、たたら製鉄や、マンチェスターとリバプールの鉄道の話は面白かったです。 日本の技術者には「物を作る」ことの前に「考えを作る」ということが今は求められているということだそうです。 巻末の付録で筆者が提唱してる思考展開図の方法がありましたがこれは、KJ法に似ていると思いました。
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<目次> はじめに 第1章 鉄の道をゆく 第2章 たたらの里をゆく 第3章 津波の跡をゆく 第4章 ミクロの世界をのぞきに行く 第5章 技術の系譜をたどる 第6章 道なき道をゆく 附録 考えを作る~思考展開法とは何か <内容> 「失敗学」で有名な工学者の本。後半にはモノを考えるためのノウハウ(思考展開法)のレシピも載る。第3章の東日本大震災の後の田老を旅する話やイギリスの鉄道の話から日本のものづくりの衰退の理由を考える件まで、なかなか示唆に富むものだった。
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失敗学の畑村洋太郎の技術エッセイ。司馬遼太郎の「街道をゆく」に似せて、技術の観点から様々な人工物の歴史を読み解く。事例として挙げているのは、たたら製鉄の村下の仕事。ここでは、伝えることについて考察している。 伝えるとは、相手の知識経験・価値観等のテンプレートを見抜き、知りたい欲求...
失敗学の畑村洋太郎の技術エッセイ。司馬遼太郎の「街道をゆく」に似せて、技術の観点から様々な人工物の歴史を読み解く。事例として挙げているのは、たたら製鉄の村下の仕事。ここでは、伝えることについて考察している。 伝えるとは、相手の知識経験・価値観等のテンプレートを見抜き、知りたい欲求に対して対処すること。「して見せて、言って聞かせて、やらせてみる」ということが、技術の伝授につながる。伝えることは、伝わるとは違う積極的な行動であること。他にも、津波、ダムのコンクリート、ホンダのベトナム戦略等の事例を取り上げる。 自分の職場でも知識や経験、技術の伝授には大変苦労している。伝える側のベテランは、相手の事はお構いなしに自分の知識経験(場合によっては自分の手柄も)を話すが、受ける側には知りたい事と違っているので、何を聞いたのか判らない。仮に聞いただけでは、行動に移せない。職場ではそういう事例が多々発生していて、「伝える」事の難しさを感じている。この本はそういった問題解決の参考になりそうだ。
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p.160 直列の並列化こそ生き残る道。これは、全体のビジョンや考え方の共有ができていないと空中分解する。 思考展開法:種出し(黄色のポストイット、番号つけて、A4に順番に並べる)。くくり図(A3,.A2に関連有る種を種群。ピンクのポストイットでラベルをつける。70%縮小。種群...
p.160 直列の並列化こそ生き残る道。これは、全体のビジョンや考え方の共有ができていないと空中分解する。 思考展開法:種出し(黄色のポストイット、番号つけて、A4に順番に並べる)。くくり図(A3,.A2に関連有る種を種群。ピンクのポストイットでラベルをつける。70%縮小。種群を囲む。切り抜く)。思考関連図(描く。台紙の外から内へ、下位概念から上位概念へ。線で結ぶ。結線にピンクのポストイット)。作る途中で問題点をメモする。解決すべき課題群をつくる。課題の分析・分解し、要素に対しての解決方法を考える。 詳しくは『技術の創造と設計』 け
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東大名誉教授である工学博士による、日本の技術と技術者について書かれた本。長年、創造学、失敗学、加工学について研究してきた経験を基に、説得力ある主張をしている。納得できる面白い内容だった。 「日本の技術はいま苦境に立たされている。なぜか。それは、日本の技術者が、技術とはどこかに良...
東大名誉教授である工学博士による、日本の技術と技術者について書かれた本。長年、創造学、失敗学、加工学について研究してきた経験を基に、説得力ある主張をしている。納得できる面白い内容だった。 「日本の技術はいま苦境に立たされている。なぜか。それは、日本の技術者が、技術とはどこかに良いお手本があり、それを見つけてきてきちんと学べば獲得できるものだ、さらに発展させられるものだ、という見方をしてきたからである。(日本では)明治の昔からこのかた、新しく技術を生み出す苦しさや大変さを経ずに、ただ要領よく技術を取り入れることばかりに長けた技術者が育つことになった。現在の日本の苦境は、出来上がったものを手に入れることに慣れてしまった、技術者自身の弱さに発している。筆者にはそう思われるのである」ii 「技術革新にもとづく成長は、やがて物量に基づく成長に乗り越えられる(同じものを安く大量に生産される)」p13 「「良い技術」というだけで生き残れるほど、技術の世界は甘くない」p14 「日本の製造業の多くはこれまで「良い物」を作ることに心血を注いできた。端的に言えば、今の日本の製造業の苦境は、「良い物」が「良い物」というだけでは価値が生まれず、売れなくなったためである。しかし、もしもその「良い物」すら作らなくなってしまうならば、日本の技術にはもう未来はないであろう」p15 「(現代製鉄は)たたら製鉄の鋼と比べて不純物が1ケタ多い」p38 「(防潮堤は津波を押しとどめるものという見当違い)防潮堤は侵入してくる水の量をできる限り少なくし、住民が避難する時間を稼ぐための構造物(新しかった防潮堤は、津波を押しとどめようと作られたため、津波で木端微塵に崩壊した)」p55 「人間は自分自身が経験したことでしか考えられない。人間の記憶はせいぜい100年くらいの間に起こったことしか思い浮かばないのである」p74 「日本の技術者の最大の欠点は、技術者の作る製品が顧客の求めている製品になっているかどうかを、技術者自身が考えたり確かめようとしないことである」p126 「技術者はとかく「物の世界」に閉じこもりがちである。なぜか。「物の世界」は楽しいからである。目の前の技術的課題をどうやって解決するか。あれこれ知恵を絞って解決し、「良い物」が出来上がった時の喜びは大きい。その喜びが、技術者を細部へ細部へと向かわせる。そうして細部の作り込みに専念し、「物の世界」に閉じこもっているうちに、人々が「欲しい」と思う製品からどんどん離れていってしまうのである」p127 「一昔前の携帯電話を思い出してほしい。あれもこれもと余分な機能をくっつけて、結局、誰も使わない機能だらけの製品が作られてゆく。これを「付加設計の弊害」という」p127 「Howとは、誰かのお手本を見習って、それをどうやって作ろうかと考えるやり方である。ところが、ビジネスと結びついた技術の世界では、お手本と肩を並べた後は、Howのままではいけない。お手本とは全く違う、自分たち独自の「新しい価値」を生み出す製品を作らなくては、生き残れなくなるからである」p128 「開発目標を自ら考える能力のない技術者は、身の回りにころがっているさまざまな機能を手あたり次第に取り込んだ、いりもしない機能満載の製品を市場に出すことになる。結果は「チットモ売れない」になるのである」p128 「(後進国でのコマツの重機)世に出るイミテーション(製品)は、形自体を見れば、正規の部品とほとんど同じである。したがって、みな安いイミテーションを買っていく。「それじゃあ、商売あがったりだよね」と聞くと、意外にも「いえ、大丈夫です」という答えが返ってきた。「どうせ、すぐ摩耗して駄目になりますから。結局はオリジナルを買いたくなるんです。宣伝なんか全然いりません」」p138 「これからの日本の技術者は、お手本のない世界で、利益の源泉を自分で探してくる必要がある。それには、Howだけで考えるのではなく、Whatでも考えなくてはいけない、ということである。つまり「物を作る」より前に、「考えを作る」必要があるのである」p140
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技術者視点で徒然なるままに残される示唆に富んだコメント。特に価値を考えることの重要性を理解するための技術者向けマーケティング啓発本とも言える。 津波石は、次のベネチアビエンナーレ日本館の題材として関心を持っていたので、本書で技術面の解説を知り、満足。
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どのような技術も、生産量の推移はS字カーブを描く どのような技術も、生産量は30年でピークを打つ 石見銀山 江戸時代の最盛期には人口20万人 当時の江戸100万人 してみせて 行って聞かせて させてみる とは上杉鷹山の言とされている (山本五十六の言葉のルーツ) 人間は3...
どのような技術も、生産量の推移はS字カーブを描く どのような技術も、生産量は30年でピークを打つ 石見銀山 江戸時代の最盛期には人口20万人 当時の江戸100万人 してみせて 行って聞かせて させてみる とは上杉鷹山の言とされている (山本五十六の言葉のルーツ) 人間は3日、3月、3年、30年という周期で失敗を繰り返す ベトナム ホンダバイクのイミテーションが出回る 売った対策 中国製のオートバイはすぐ壊れる こわれた部品をホンダ純正部品にとりかえる フレーム以外はすべてホンダ製となる まず部品の販売に集中した 次にウェイブアルファという7万のベトナム市場向けのバイクをつくって、大当たり イミテーションと敵対するのではなく、イミテーションメーカーを寺社にとりこみ。イミテーションの抱き込みをおこなった 頭を悩むのに使うのでなく、考えるのに使う 日本人は空間効率や動線の無駄に目が行くようだが、市場の要求がどんどん変わることをまるで考えていない 機会逸失による損のほうが、非効率や無駄による損よりも大きいことをもっと知る必要がある
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