コリーニ事件 の商品レビュー
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200ページぐらいの本なのだが…日本では、こんな本は書けないんじゃ無いかと思うかな。 無益な戦争、ナチス時代を背景にした悲劇。そして法律の落度…歴史に翻弄される人々…中々難しい本だと思う。 小説には、内面的な描写はあるけど、なんだろう著者の描写は、読者側が読んで想像するような書き方が、とても印象的だったので、深読みしてしまった…嫌いじゃないし、著者が何となく答えを教えてる、ちっとな文章と中々良かった! 読んだ事の無いタイプの本。外国作品は、登場人物ごちゃごちゃになるので、あんまり読まないが、この作品は数人だけで読みやすくて良い。 気になったら読んでみてください!
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禁忌と同じタイミングで読んだため、すこしキャラクターが混じってしまった。 基本的にこの人の作品では、警察、法曹界野の人たちは常に善良に自身の仕事と向き合っていて、嫌な人間がいないところが良い。 被害者の二面性、被告人の救われなさ、さすが弁護士、と感心した。おまけに、これは自分自身の話でもあるなんて。すごい。
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以前の職場でお世話になったS先生は、刑法の研究者で現役の弁護士。囲碁とジャズをこよなく愛し、時おり絵筆も握られる、文人とお呼びするにふさわしい方です。仕事で研究室にお邪魔したときも、趣味の話で盛り上がることがしばしば。今は数年に一度お会いするくらいですが、フェイスブックを楽しく読...
以前の職場でお世話になったS先生は、刑法の研究者で現役の弁護士。囲碁とジャズをこよなく愛し、時おり絵筆も握られる、文人とお呼びするにふさわしい方です。仕事で研究室にお邪魔したときも、趣味の話で盛り上がることがしばしば。今は数年に一度お会いするくらいですが、フェイスブックを楽しく読ませていただいています。 本書は、先生がFBで推薦されていたドイツのリーガルミステリー。 作者のシーラッハは著名な刑事弁護士。短い文章をテンポよくつなぎ、結末まで一気に読ませます。 ベルリンの高級ホテルの一室で、高名な老人が命を奪われます。容疑者として逮捕されたのは、イタリア人の元職人コリーニ。 国選弁護に指名された新米弁護士ライネンは、被害者が幼馴染ヨハナの祖父であることを知り、個人の感情と職業的使命感の板挟みになりつつも弁護を決意します。状況からコリーニの犯罪は決定的。にもかかわらず動機について硬く口を閉ざすコリーニ。被害者遺族側には辣腕弁護士マッティンガーがつく圧倒的に不利な状況の中、ライネンは真相を追います。 背景には第二次大戦時の出来事がからみ、ドイツ刑法学の権威ドレーアーが大きな鍵を握っています。物語は裁判を縦糸に、ヨハナとの葛藤を横糸に展開します。ミステリーとしても一級品で出版後たちまちベストセラーになりました。また、本作がきっかけでドイツ政府が調査委員会をもうけるなど、実際に社会を動かす結果となりました。シーラッハ自身、祖父が戦争に関与していて、過去の戦争とどう向き合うのか問う側面もあり、多面的な読み方ができます。 S先生とは、ある規制を巡って長時間議論させていただきました。守るべき法益は何か、安易に規制を持ち出していないか。趣味の話と打って変わって、学者としての厳しい問題意識を教えていただいたのが懐かしい思い出です。久しぶりに一献傾けながら、お話をお伺いしたいものです。
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「訴訟はひっきょう正義を求める戦いだ、法を定めた先達はそう意図していた。決まりは明快で厳密だ。それが考慮されるときのみ、正義が生じる」 67歳のイタリア人元労働者コリーニが、85歳のドイツ人実業家マイヤーを惨殺する。 弁護士となって最初の仕事に、コリーニの国選弁護人を引き受けた...
「訴訟はひっきょう正義を求める戦いだ、法を定めた先達はそう意図していた。決まりは明快で厳密だ。それが考慮されるときのみ、正義が生じる」 67歳のイタリア人元労働者コリーニが、85歳のドイツ人実業家マイヤーを惨殺する。 弁護士となって最初の仕事に、コリーニの国選弁護人を引き受けたライネンだが、マイヤーは少年時代の親友の祖父であり、恩人でもあった人だった。公職と私情の間で心は揺れる。 コリーニはなにも語らず、マイヤーは非の打ちどころのない人間だった。 本来犯人と被害者の間にあるはずの接点も、殺害の動機もなにひとつ見出せぬまま時間だけが過ぎていく。 何より、「弁護を望んでいない人間をどうやって弁護したら」良いのかわからない。 裁判には負ける。誰の目にもそう見えていた。しかし覚悟を決めたとき、ライネンはひとつの手がかりを掴む。 “彼は生涯待ちつづけ、つねに黙して語らなかった。” やがて法廷で明らかになる、ドイツの暗い過去の向こうに萌芽していた悲劇のきっかけ。コリーニはなにを待ち続け、なにに口を閉ざし続けていたのか――。 刑事事件弁護士でもある著者が描く法廷劇。実際に施行されている法律の落とし穴を突く展開は流石。あとがきで判明する著者の出自も作品に説得力を与えていると思われる。 200ページに満たない短篇とは思えない闇の深さに圧倒される。
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人生の成功者で、地位のある老人が殺害されました。犯人はすぐに捕まり、素直に犯行を認めましたが、動機については話そうとしません。被告の国選弁護人となった新米弁護士は学生だった頃、被害者である老人にずいぶん世話になった旧知の仲でした。 若き弁護士は、悩みながらも被告の動機を明らかにし...
人生の成功者で、地位のある老人が殺害されました。犯人はすぐに捕まり、素直に犯行を認めましたが、動機については話そうとしません。被告の国選弁護人となった新米弁護士は学生だった頃、被害者である老人にずいぶん世話になった旧知の仲でした。 若き弁護士は、悩みながらも被告の動機を明らかにしていきます。簡単に終わると思われていた裁判は、意外な展開を見せ始めます。 ヨーロッパならではの法廷劇です。傷ましく、悲しい物語でした。 べそかきアルルカンの詩的日常 http://blog.goo.ne.jp/b-arlequin/ べそかきアルルカンの“スケッチブックを小脇に抱え” http://blog.goo.ne.jp/besokaki-a べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ” http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2
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「犯罪」「罪悪」などの短編集で人気を得た著者の初長編。とはいっても200ページもない。短編と中編の間といってもいいくらい短い。しかし内容は深い。 (簡単な物語の導入部の紹介) 自動車組立工だったコリーニの職場での評判は、いたってまじめで、勤務態度は申し分なかった。定年まで...
「犯罪」「罪悪」などの短編集で人気を得た著者の初長編。とはいっても200ページもない。短編と中編の間といってもいいくらい短い。しかし内容は深い。 (簡単な物語の導入部の紹介) 自動車組立工だったコリーニの職場での評判は、いたってまじめで、勤務態度は申し分なかった。定年まで勤めあげた彼が殺人を犯すとは、誰も思いもしなかった。 処刑スタイルで頭に銃弾を撃ち込まれたあげく、絶命後も激しく顔を踏みつけられ原型をとどめないほどの憎悪を向けられた被害者マイヤー。大手機械工業の代表取締役として世間にも顔を知られた実業家であり資産家。 犯人と被害者の接点はどこにあるのか… 資産家の惨殺にスキャンダルの臭いを嗅ぎつけマスコミは群がる。しかし犯人は黙秘を続け、動機を一切語らない。国選弁護人として弁護を引き受けたのは新米弁護士ライネン。意気揚々と初仕事に挑む。犯人との信頼関係を構築しようと努める。だが問題が判明した。殺された資産家はライネンがまだ少年だったころ、よく遊んだ友人の祖父だったのだ。 そんな犯人を自分は弁護できるのだろうか… 果たして彼の決断は… ここから下は完全ではないけどネタバレ気味。 本の帯から引用 「本書はドイツで一大センセーションを巻き起こし、作中で語られたある事実がきっかけとなり、ドイツ連邦法務省は省内に調査委員会を立ち上げた。まさに小説が政治を動かしたといえる」 そうなのだ。この作中で語られた事実に触れないと感想が書けないのだ。法律の瑕疵とでも言っておこうか。実際に1960年代後半に改正されドイツの法律に意図的に組み込まれたある条項によって、ある人たちの罪が免責されてしまったのだ。 ああ、書きたい。トリックを書きたい。 日独の比較とか認識の違いとか、うだうだうだうだ書き綴りたい。 書評欄に、途中から黒塗りする機能とか追加できないでしょうか? もしそれができるなら、疑惑を追及されて渋々役人が提出してくる内部文書くらい真っ黒にできる自信がある。 この著者の作品は犯罪を扱っているのに、どこか人間味がある。それは短編集の2作を読んでも感じたことだったけれど、この長編にもそれは感じる。 サイコパスやシリアルキラー全盛のミステリー界において、「太陽にほえろ!」に登場してきた犯人たちのように、犯人たちにも赤い血が流れているのを感じる。犯人に共感してはいけないんだけれど、どこかにそんな気持ちが芽生えてしまう。そんな感情と理性のゆらぎをこちらに起こさせるようなミステリーやドラマが昔は多かったような気がするが、どうして廃れてしまったんだろう… 動機が人間らしい。これだけで読む価値がある。
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中編、というぐらいの分量。法廷劇。読み終わったとき、込み上げてくるものがあって涙しそうでした。ネタバレになるのであまり書きませんが、色々と他人事ではないと思います。本国ドイツではこの作品の影響で政治が動いたとか。良い作品でした。
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日本でこういうテーマのミステリってあるんでしょうかね。書けそうもない気がします。 ドイツの裁判制度は面白いですね。 裁判官、参審(市民)検事、弁護士に加えて被害者の代理人(弁護士)も参加し被害者の利益を守るようです。
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この本を読んでいる時には、犯人が被害者を殺害した時には、犯人が実際には手を下してはいなくて、それを主人公であるライネンが暴いて弁護するのだろうかと思いましたが、いい意味で予想が裏切られました。トリックではなく、大きな歴史がその前に横たわっているとは予想だにしませんでした。
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シーラッハ作品の魅力は、地の文で極力内面描写を行わずに読者に登場人物の心情を想像させ、物語のフレームを描かせるところにあると思っています。本作は初の長編になりますが、短編集『犯罪』『罪悪』で見せてくれた筆致は本作でも健在で、総じて楽しめました。訳者あとがきや瀧井朝世さんの解説が充...
シーラッハ作品の魅力は、地の文で極力内面描写を行わずに読者に登場人物の心情を想像させ、物語のフレームを描かせるところにあると思っています。本作は初の長編になりますが、短編集『犯罪』『罪悪』で見せてくれた筆致は本作でも健在で、総じて楽しめました。訳者あとがきや瀧井朝世さんの解説が充実しているのも嬉しいです。 一方で、必要な部分だけに削ってシンプルにした短編と違い、長編では読者に見えるところが多いぶん、いくつか気になるところもあったり。一番気になったのは法廷でライネンが最後に放った一矢で、正直肩透かしを食らった気分になりました。いくら何でも法曹界の人間がそんな基本的なことに気付かないわけないと思うけどなあ。コリーニが黙して語らない理由や、ライネンが真相に気付いたきっかけもいまひとつピンとこなかったですし。あと帯にでかでかとある「この小説が政治を動かした。」は無いほうがよかったんじゃないでしょうか。別にそこは売りにするところじゃないと思うので。 本作のメインテーマについても思うところがあるのですが、困ったことに正面からこれを書くとネタバレになってしまうので、私にはマッティンガーの考えのほうがしっくりくる、とだけ述べておきます。
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