水底の女 の商品レビュー
”「きみの態度は気に入らんな」とキングズリーは言った。硬い声だった。ブラジル・ナッツだって割れそうなほどだ。 「どうぞお好きに」と私は言った。「それが私の売り物というわけじゃありませんから」”(本書p11より) ロサンゼルスの私立探偵フィリップ・マーロウを主人公とするレイモンド...
”「きみの態度は気に入らんな」とキングズリーは言った。硬い声だった。ブラジル・ナッツだって割れそうなほどだ。 「どうぞお好きに」と私は言った。「それが私の売り物というわけじゃありませんから」”(本書p11より) ロサンゼルスの私立探偵フィリップ・マーロウを主人公とするレイモンド・チャンドラーの一連の作品についての村上春樹の翻訳シリーズ最終であり、本書をもってチャンドラーの全ての長編が翻訳されたことになる。 本書「水底の女」は、ストーリー的に言えば、プロットが若干複雑であり、特にキーとなる数人の女性に関しては、読んでいるうちにキャラクターが混同してくる場面があった。そうした読みにくさは若干脇に置いておいたとしても、やはりフィリップ・マーロウという人物の造形はどの作品を読んでも魅力的に映る。 そうした点で、2007年の「ロング・グッドバイ」から始まり、10年近く楽しみにしてきたフィリップ・マーロウともう会えないのだと思うと、一抹の寂しさがよぎる。村上春樹によるチャンドラーの翻訳は全て読み通してきただけに、寂しい気がするが、久しぶりに「ロング・グッドバイ」を読み返したい気分になっている。
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村上春樹のチャンドラー長編新訳、これにて完結。 MONKEYのインタビューだか対談だかで「今年中に出るかも」とのご本人の弁だったので、指折り楽しみにしていた。 予定のない週末、至福の読書時間でした。 村上春樹の解説にもあるように、ストーリーはなんとなく先が読めるのであるが、チャ...
村上春樹のチャンドラー長編新訳、これにて完結。 MONKEYのインタビューだか対談だかで「今年中に出るかも」とのご本人の弁だったので、指折り楽しみにしていた。 予定のない週末、至福の読書時間でした。 村上春樹の解説にもあるように、ストーリーはなんとなく先が読めるのであるが、チャンドラーの小説(村上訳)の楽しみは、文体そのものにあるので、登場人物の把握や関係性にとらわれずに文章そのものを楽しめて、かえって良いくらいであった。 装丁も美しく、クリスマスプレゼントにも良いかもしれない。 再読してチャンドラーらしい比喩などをまた楽しみたい。
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