奴隷小説 の商品レビュー
箸休め的に三時為の短編集を読もうと思い購入。 世界観は独特だが心に響くものが無い。 淡々と読み終えた作品。 厳密にいうと☆2.5
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7つの短編小説が収められた短編小説集。雑誌掲載の作品を集めたものであるが、発表時期は2006年から2014年の間でばらついている。何かに物理的に捉われていたり、あるいは、支配されている状況を描いた小説ばかりである。「奴隷小説」という短編小説集全体の題名も、そこから来ているのだろう...
7つの短編小説が収められた短編小説集。雑誌掲載の作品を集めたものであるが、発表時期は2006年から2014年の間でばらついている。何かに物理的に捉われていたり、あるいは、支配されている状況を描いた小説ばかりである。「奴隷小説」という短編小説集全体の題名も、そこから来ているのだろう。 どれも、やり切れなさ、あるいは、自分が実際に同じ状況に置かれたらどうなるだろうという怖さを感じる小説ばかりである。どの小説が最も印象的かというのは、人によって異なるだろうが、私は「告白」という短編小説が最も印象的で、最も怖かった。他の小説も、絶望的な状況に置かれた人たちを主人公にしているが、それでも、場面が展開する可能性のある終わり方をしている。しかし、この「告白」は、終わり方こそが救いようがない。 【引用】 「ヤジロー様、これは私たちが如何にして、少しずつ希望を失ったかという物語でございます。言うなれば、希望の瓶が底を突く、というお話。次は私の番でございます」 【引用終わり】 主人公のヤジローは、薩摩から逃げ続け、インドのゴアに到着する。そこで、ある老人と知り合うが、気がつくと、暗闇の中で縛られ身動きが出来ない状態のまま、その老人の「如何に希望を失ってきたか」という話を聞かされる。そして、その老人の話だけでは終わらず、「次は私の番でございます」と「絶望、希望を失う話」をしようと手ぐすねをひいている多くの人たちが待ち構えていることに気がついたところで小説は終わっている。身動きのとれない状態のまま、人が希望を失っていく話を延々と、あるいは、もしかしたら永遠に聞かされるというのは、人が思いつける最も絶望的な状況に近いのではないかと思う。それが、とても怖かった。
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タイトル通り、奴隷がテーマの短編集。 どれも結末がわからないというか、これからもうひと山ありそうなところで終わるのが不気味。
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文庫本になってから読む利点は解説があるから、それがいいのか、邪魔なのか。 この文庫版の政治学者白井聡の解説は、なるほどなあと思う。桐野夏生さんの作品が現代の(平成の)新しいプロレタリア文学ではないか、というところはおもしろい。 ここに集められている7短編は、何かに隷属させられ...
文庫本になってから読む利点は解説があるから、それがいいのか、邪魔なのか。 この文庫版の政治学者白井聡の解説は、なるほどなあと思う。桐野夏生さんの作品が現代の(平成の)新しいプロレタリア文学ではないか、というところはおもしろい。 ここに集められている7短編は、何かに隷属させられて藻掻くか、打ち破れる人間たちだ。現代見聞きするありがちな事情あり、昔の時代にさかのぼったのや、もっとおとぎ話的なのもあるが、それぞれが救われないどうしようもない状態なのは一緒で、作者は怒りに満ちて描いている。 デストピアの世界といっても、人間たちが構成している世界だから、そこに矛盾が生じるのは当たり前、前向きに、個人の努力で、なんて言うのんきさからくる希望のかけらもないのである。 作者の小説はいつも「放っぽりぱなし」の結びなのだが、ことさらこの短編たちは途切れて、漂ってしまうようだ、令和の世に。
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スラスラ読めるけど、本当に受け入れ難い思想の人が書いたんだなあって感じ。 面白いけど! オチがほぼ全部微妙。
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奴隷や支配をテーマにした短編集。 神様男はお客様は神様、という言葉をうまく解釈していて面白かった。 比較的淡々とどの話も進んでいくので、あっさりと読み終わることができる。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
まさに奴隷状態に置かれている人々をモチーフ(?)に書いた短編集。 設定はさまざま。ボコ・ハラムに誘拐された女子生徒たちと思われるものや、北朝鮮の人民を連想させるもの、何の情報も得られず、閉ざされたコミュニティでひたすら働くしかない炭鉱労働者、江戸時代に国外逃亡した男、など。 一つだけ現代の日本の女の子(の母)を題材にしたものがあって、「アイドルになりたい」という夢の”奴隷”となり、あらゆることを犠牲にしている、という設定なんだけど、かなりシリアスだった。AKBやら乃木坂なんちゃらやら、次々に現れては消えていくアイドルの、華々しい活躍の陰に、こういう”奴隷化”された人たちがいるんだな…と、ちょっと背筋が寒くなる。 私たちは平和な日本にいて、ニュースで中東のテロや、ボコ・ハラムの誘拐事件を聞いても、「死者何十人」とか、「数百人誘拐された」とか、本当は驚くべき数字だが、多すぎてもうピンと来なくなっている。でもその「数百人」の一人一人は、当たり前だがちゃんと尊厳を持った、大切な一人一人で、その当たり前のことに想像力を働かせて書かれている「泥」という一編は圧巻だった。社会的な問題提起だけが作家の仕事ではないと思うけど、問題提起というか、どんな遠くの国の出来事でも、ここまで想像力を働かせることができる、という意味でとても意義深いと思った。
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大好きな作家様の短編集。 そんじょそこらの胸糞を遥かに凌駕する素晴らしい胸糞で、むしろ清々しいくらい。 どの話も救いはないが、どれもこれも嘘八百のファンタジーとも思えないのが心にキます。
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私は今、日本にいて、この時代に生きているだけで、奴隷みたいな生活をしている人は、今も世界のあちこちにいるんだろうな。日常生活に感謝です。
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「雀」「泥」「神様男」「REAL」「ただセックスがしたいだけ」 「告白」「山羊の目は空を青く映すか」 これら7編が収録されています。 どの短編も日常と掛け離れた一種独特の世界が描かれていて桐野さんらしい「毒」が溢れた作品でした。 現代を描いた「神様男」その他、場所や時代...
「雀」「泥」「神様男」「REAL」「ただセックスがしたいだけ」 「告白」「山羊の目は空を青く映すか」 これら7編が収録されています。 どの短編も日常と掛け離れた一種独特の世界が描かれていて桐野さんらしい「毒」が溢れた作品でした。 現代を描いた「神様男」その他、場所や時代背景は異なるけれど皆、何かに囚われている奴隷状態と言えます。 読後感は決して良くはないけれど、読んでいる間どこか別世界に入り込んだ様な錯覚に陥ります。 不気味で暗鬱な作品だけれど桐野さんの「毒」は癖になります。
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