奴隷小説 の商品レビュー
2006年から2014年に書かれた作品を集め、2017年に単行本化された短編小説集。 「奴隷小説」というタイトルが不思議と全編に結び付いている。特に巻頭の「雀」「泥」や最後の「山羊の目は空を青く映すか」は奴隷化された存在をめぐる寓話的な物語だ。 この社会にあって、女性や経済的...
2006年から2014年に書かれた作品を集め、2017年に単行本化された短編小説集。 「奴隷小説」というタイトルが不思議と全編に結び付いている。特に巻頭の「雀」「泥」や最後の「山羊の目は空を青く映すか」は奴隷化された存在をめぐる寓話的な物語だ。 この社会にあって、女性や経済的弱者は奴隷として扱われているようなものであり、それに対する怒りや悲哀を、桐野夏生さんは常々意識しているのだろう。 個々の短編小説は、一般的な短編小説作法の基準から言うとやはり「オチがない」「唐突に中途半端に終わる」感じがあって、型にはまった書法を嫌う桐野さんが短編を書くとこうなってしまうのかな、と思う。少ない紙数では十全に人間関係や主人公の変化を書き切れないし、長編にあるような「解放への脱出」に到達することも出来ない。多くの場合、一つの状況を描くだけで終わってしまっているような気がする。 桐野さんの場合は、短編小説分野は入門としてはふさわしくなく、この作家の作品世界をじゅうぶんに知った上で読むのでないといささか物足りなく感じるのではないだろうか。 とはいえ、象徴的な領域に描出された苦痛に満ちた世界イメージが示されている点で、楽しんで読んだ。
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『奴隷』ばかりの短編集。 最初の方は、分かりやすく女性が奴隷、という環境。 閉鎖的な村、攫われた女子高生。 夢のために、と頑張る子供の母親の話もありましたが 妹の言葉が、もっともです。 そこまで金をつぎ込ませるという事は そこまでせねばならない素材というのもあるし いつまでも頼...
『奴隷』ばかりの短編集。 最初の方は、分かりやすく女性が奴隷、という環境。 閉鎖的な村、攫われた女子高生。 夢のために、と頑張る子供の母親の話もありましたが 妹の言葉が、もっともです。 そこまで金をつぎ込ませるという事は そこまでせねばならない素材というのもあるし いつまでも頼ればいい、というぬるま湯現象も。 奴隷、といわれて想像するものが出た、と思ったら 次は人生だったり、女性相手に、であったり。 ひたすらに、がむしゃらに。 そのために頑張る奴隷、でした。
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架空の奴隷っぽいシチュエーションを作って奴隷っぽい人の苦労を描いてそれで奴隷小説って言われてもなーという感じ。そりゃ奴隷っぽいのを書いてるんだから奴隷でしょ。だから?ってなってしまう。 著者は現代の人間の嫌な部分や黒い部分を抜き出して見せると異常なくらい優れていて、その点で人間観...
架空の奴隷っぽいシチュエーションを作って奴隷っぽい人の苦労を描いてそれで奴隷小説って言われてもなーという感じ。そりゃ奴隷っぽいのを書いてるんだから奴隷でしょ。だから?ってなってしまう。 著者は現代の人間の嫌な部分や黒い部分を抜き出して見せると異常なくらい優れていて、その点で人間観察の天才だと思っている。著者のそのような特異な才能は、架空の設定だと活かされないのではないだろうか。
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短編集だが内容はズシリと重いものばかり。一気読み。なぜか頭にこびりついて離れない。暗く陰湿な世界にどっぷりと浸って自分もなかなか這い上がれない。
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久し振りの桐野作品! タイトル通りの社会構造を浮き彫りにする短編7編。「雀」「泥」「告白」「山羊の目は空を青く映すか」あたりがお気に入り。特に「雀」の世界観は、理不尽で重層的な支配構造を描いており、気持ち悪くなりながらも頁を捲る手が止まらなかった。
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売れっ子作家桐野夏生の作品を始めて読む。短編集だったが、奴隷についてのフィクションであり読んであまり気持ちのいいものでは無かった。
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女性、低所得層、民族や人種。今もなお、目に見えないところで差別されている人々。 BLMのプロテストが今行われている中でとても考えさせられた。誰しもが、フィジカル的にもメンタル的にも奴隷的に扱われていること扱っていることそしてその可能性があることに気づいているのかな。
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穏やかではないタイトルですが、短編集なのでさらっと読めます。個人的には「泥」と「山羊の目は空を青く映すか」が好きです。どちらも奴隷生活が終わる予感で締められているからかな。もっとも解放されるだけであって、ハッピーエンドというわけではないですが、そのあたりはやはり桐野作品です。 何...
穏やかではないタイトルですが、短編集なのでさらっと読めます。個人的には「泥」と「山羊の目は空を青く映すか」が好きです。どちらも奴隷生活が終わる予感で締められているからかな。もっとも解放されるだけであって、ハッピーエンドというわけではないですが、そのあたりはやはり桐野作品です。 何度でも読みたくなるかと問われれば頷けない短編集ではありました。特に印象的なフレーズも場面もなく、それでもちょっと空いた時間に読むのにちょうどいい長さと重さです。
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ナボコフっぽい短編集( ´ ▽ ` )ノ ナッツ失速後の作品ゆえ、エロもグロも破壊も逸脱もかなり控えめ……(´ヘ`;)ウーム… 各短編、前フリだけで終わってる感……(´ヘ`;)ウーム… カツテノナッツなら、「そこから先でドギモ抜き」だったんだけどね……(´ヘ`;)ウーム…...
ナボコフっぽい短編集( ´ ▽ ` )ノ ナッツ失速後の作品ゆえ、エロもグロも破壊も逸脱もかなり控えめ……(´ヘ`;)ウーム… 各短編、前フリだけで終わってる感……(´ヘ`;)ウーム… カツテノナッツなら、「そこから先でドギモ抜き」だったんだけどね……(´ヘ`;)ウーム… ブクログレビュー(16個しかない……)見るとみなさん「神様男」がお気に入りのようだけど……(´ヘ`;)ウーム… ケチを付けるようで申し訳ないm(_ _)m――あれなんかナッツ失速後の典型作に思える……(´ヘ`;)ウーム… 以前なら、(妹でなく)おっ母さんのほうがトチ狂ってアイドル目指しだすとか、さらなるレッスン料を求められた長女が妹を風俗に売っぱらうとか、メチャクチャな展開になったはずなのに……(´ヘ`;)ウーム… そも、タレント願望・無名事務所・レッスン料って言うから、てっきり詐欺→借金→AVという典型的な「奴隷」堕ちストーリーになると思ったんだけど……悪い意味で予想を裏切られた……(´ヘ`;)ウーム… キモヲタのほうを主人公にして、AKB握手券商法で地下アイドルの奴隷となっていく話のほうがまだよかったような……(´ヘ`;)ウーム… 全体に寓話・ファンタジー的な体裁にしたのも良し悪しで……(´ヘ`;)ウーム… 「奴隷」というテーマが極端に観念的になっちゃって、今一つも二つもピンとこない……(´ヘ`;)ウーム… 「女神記」なんか、こうじゃなかったんだけどなあ……(´ヘ`;)ウーム… 「奴隷」テーマなら、西村寿行作品(「怒りの白き都」など)をゲップが出るほど読んだから、本作ていどじゃぜんぜん物足りない……(´ヘ`;)ウーム… 2019/05/24
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どの話も大きな可もなく不可もない感じ。 読みやすいのであっという間に読めはする。 話によって終わり方のできにばらつきがあるような気がする。 基本的に読み手からすると悲劇なんだけど、主人公にとっては悲劇ではなくハッピーエンドなのかなぁという終わり方が多かった気がする。
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