道なき未知 の商品レビュー
例えば誰かに「いつも独りぼっちです。どうしたら友だちができますか」と聞かれたら、そばにいる人にまず自分から話しかけてごらんとか、同じ趣味の人を探してみようとか、あるいは誠意をもって人の話を聞いていたらいつか分かり合える人が見つかるでしょうと答えるだろう。常識的で表面的な考えを基に...
例えば誰かに「いつも独りぼっちです。どうしたら友だちができますか」と聞かれたら、そばにいる人にまず自分から話しかけてごらんとか、同じ趣味の人を探してみようとか、あるいは誠意をもって人の話を聞いていたらいつか分かり合える人が見つかるでしょうと答えるだろう。常識的で表面的な考えを基に、空気を読むことで自分を殺し、周りに合わせることが正しいと、ずっと教えられてきたので。けれど、それって本当に自分のためになるのか?独りぼっちじゃダメなの?友だちがいないのは悪いこと?周りに気を遣うのがあたりまえ?森先生の答えは痛快である。痛快でさっぱりとしていて健康的だ。そんなこと今まで誰も言ってくれなかったぞ、と目からウロコがぼろぼろ落ちまくる。 まぁ、自宅庭園に敷いたレールの上を手作りの鉄道を走らせる資金は貯まったので、と教授職も新規執筆も早々にリタイアした森先生の生き方はとても凡人には真似できるものじゃないけど、その思考や思想、理論や哲学はいろんな意味で刺激となり、蒙をぐわっと啓いてくれる。具体的なことは本書を読んでいただくとして、気を遣いすぎてがちがちに凝った脳みそをさっぱりとほぐし、目に見えない「常識」という狭い檻から解き放ち、本当に大切なことは何なのかを教えてくれる。このエッセイは、生きにくさに悩める仔羊たちにとって、救いの一冊となるだろう。
Posted by