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実践 日々のアナキズム の商品レビュー

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9件のお客様レビュー

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2024/08/04

ますますごく少数の人間が、圧倒的な権力と富を独占する世の中になっていく歴史の奔流に、抗うすべはあるのか? 歴史を振り返れば、革命という名の世直し運動は、それが倒そうとする権力よりも圧倒的に大きな暴力抜きには生じ得なかった。 支配、強制、暴力ぬきに、自由を守る戦い方というのは、...

ますますごく少数の人間が、圧倒的な権力と富を独占する世の中になっていく歴史の奔流に、抗うすべはあるのか? 歴史を振り返れば、革命という名の世直し運動は、それが倒そうとする権力よりも圧倒的に大きな暴力抜きには生じ得なかった。 支配、強制、暴力ぬきに、自由を守る戦い方というのは、ありえるのか? ありえる、というのがアナキストだ。 この本の著者は、篤実で平明な語り口で、実践的な処方箋を断章の形で提示してくれている。 私の目からウロコが落ちたのは、プチ・ブルジョアジーの役割への注目である。 バリントン・ムーアは次のように言っているという。 「急進主義の主要な社会基盤は農民と都市下層職人である。これらの事実から、人間の自由の源泉は、マルクスが見たように権力をまさに握ろうとしている諸階級の大望の中だけでなく、おそらくそれ以上に、進歩という波によってまさに押し流されかけている階級の断末魔の声のうちにこそあるという、結論を引き出せるかもしれない。」 闇深い現代という時代を生き抜くための、希望の書。

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2024/01/26

自分が、国家権力、慣習、会社のルールなど、様々なことに無意識に囚われ、思考や行動を誘発されていることがよくわかった。 また、歴史や人の行動を説明する際に、後付けで物語を作ってしまうこともそのとおりだと改めて思った。ひとり一人の複雑な心理や思考、行動の集合体で社会が変わり続けてい...

自分が、国家権力、慣習、会社のルールなど、様々なことに無意識に囚われ、思考や行動を誘発されていることがよくわかった。 また、歴史や人の行動を説明する際に、後付けで物語を作ってしまうこともそのとおりだと改めて思った。ひとり一人の複雑な心理や思考、行動の集合体で社会が変わり続けている。意味付けは十分に注意しなければならないとも思った。 自分の頭で

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2023/10/16

面白かった! 特に最初の章の、いざというときのために日頃からちょっとしたルール違反(信号無視)をしておこうと行動する内容がお気に入り。その後にアナキストの先輩に諌められたところまで含めて面白い。

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2023/02/21

布団の中から蜂起せよ、からのこちら。 車の来ない交差点で、赤信号であっても自分で安全かどうかを判断して渡るように、「理に適わなぬ」些細な法律を破ること、それが著者の言う「アナキスト柔軟体操」。 世の中の、これって変じゃない?って思うことにいったん態度を保留して、即反応せずに、...

布団の中から蜂起せよ、からのこちら。 車の来ない交差点で、赤信号であっても自分で安全かどうかを判断して渡るように、「理に適わなぬ」些細な法律を破ること、それが著者の言う「アナキスト柔軟体操」。 世の中の、これって変じゃない?って思うことにいったん態度を保留して、即反応せずに、自分の頭で考えてから行動することがアナキストの態度なんじゃないかと思った.

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2022/11/18

アナキズムとは特別な政治運動でも革命でもなく,日々の暮らしの中から社会を変えていく実践である――東南アジアでのフィールドワークを通じて,国家の束縛から離れた社会のあり方を希求してきた政治学・人類学の泰斗スコットが,西欧文明社会で暮らす自らの経験からたどり着いた実践的アナキズムのエ...

アナキズムとは特別な政治運動でも革命でもなく,日々の暮らしの中から社会を変えていく実践である――東南アジアでのフィールドワークを通じて,国家の束縛から離れた社会のあり方を希求してきた政治学・人類学の泰斗スコットが,西欧文明社会で暮らす自らの経験からたどり着いた実践的アナキズムのエッセンスを,軽妙洒脱に説き明かす. はじめに  アナキストの懐疑の眼,もしくはアナキストのように眺めること  組織の逆説  社会科学の実践に対するアナキストの懐疑の眼  一つ,もしくは二つのご注意 第一章 無秩序と「カリスマ」の利用  断章1 アナキスト柔軟体操というスコットの法則  断章2 不服従の重要性について  断章3 さらに不服従について  断章4 広告「リーダーがあなた方の導きに喜んで従うつもりで,支持者を求めています」 第二章 土着の秩序と公式の秩序  断章5 土着と公式,二つの「知る」方法  断章6 公的な知と管理の風景  断章7 土着的なるものの柔靱な反発  断章8 無秩序な都市の魅力  断章9 整然さの裏の無秩序・混沌  断章10 アナキスト不倶戴天の敵 第三章 人間の生産  断章11 遊びと開放性  断章12 なんて無知でばかげているんだ! 不確実性と適応性  断章13 GHP :総人間生産量  断章14 介護施設  断章15 制度のなかの人生という病理  断章16 穏やかな,直感に反した事例――赤信号の除去 第四章 プチ・ブルジョアジーへの万歳二唱  断章17 中傷されてきた階級を紹介する  断章18 軽蔑の病因論  断章19 プチ・ブルジョアジーの夢――財産という魅惑  断章20 プチ・ブルジョアジーのさほど小さくはない機能  断章21 「無料の昼食」,プチ・ブルジョアジーの親切 第五章 政治のために  断章22 討論と質――質の計量的測定に対する反論  断章23 もしそうなったら……? 監査社会の夢想  断章24 当てにならず,必然的に劣化する  断章25 民主主義,業績,政治の終焉  断章26 政治を弁護する 第六章 個別性と流動性  断章27 小口の善意と同情  断章28 個別性,流動性,そして偶発性を取り戻す  断章29 歴史の虚偽をめぐる政治学

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2022/02/06

全六章で本文は約190ページ。まえがきで筆者自身が他の著書とは異なるスタンスで取り組んだことを明かしているとおり、論述というよりエッセイに近い形式の著作だ。章立てのほかに29の短い断章に区切られており、同じくアナキズムをテーマとしたデヴィッド・グレーバーの『アナーキスト人類学のた...

全六章で本文は約190ページ。まえがきで筆者自身が他の著書とは異なるスタンスで取り組んだことを明かしているとおり、論述というよりエッセイに近い形式の著作だ。章立てのほかに29の短い断章に区切られており、同じくアナキズムをテーマとしたデヴィッド・グレーバーの『アナーキスト人類学のための断章』と類似した、アイデアの断片として参照されることを期待したコンセプトといえそうだ。短い断章による構成が目立つが、内容的にはそこまで細切れというわけではなく、基本的には章ごとのまとまりで綴られている。 1章 大きな社会的な変革が、礼節にかなった公的な手続きのなかから生まれることは少ない。多くの場合、匿名で多数の不服従の行為や義務の回避によって為される。それは革命的前衛ではなく、幾千もの脱走、怠け仕事、失踪といった行為のほうが、これまでより多くの体制を、少しずつ屈服させてきた。著者による"不服従のススメ"といった趣きの章となっている。冒頭の信号無視の例がわかりやすい。 2章 国家やグローバル企業が環境だけでなく、いかに人間を均質化しようとするか、そしてそのことが人間の尊厳を傷つけていると説く。人にとって住みやすい町とは、ユートピア的な計画者が好むような直線的な規則正しさではなく、ごちゃ混ぜの多目的な場所こそが活気に満ちている。 「国家はアナキストにとって不倶戴天の敵なのである」 3章 前章に引き続いて国家による均質化を前提に、学校教育をはじめとした権力による制度が人間の精神にどのような影響を及ぼすかについて述べる。「幼児扱いすることが年を取った幼児を生み出すことは想像に難くない」は、先に掲げた『アナーキスト人類学のための断章』にも同様の記述があったことが印象的だ。 4章 資本家と労働階級という対立の外にある、プチ・ブルジョアジーの称揚に割かれる。著者が描くプチ・ブルジョアジーは具体的には、小店主や小作農のような零細事業者で、現在なら個人に近い小企業や個人事業主のような立場が近いだろう。利益に限れば雇われのほうが高い収入を得られるにもかかわらず、プチ・ブルジョアジーたちは「小さなコミュニティにおいて十全な文化的市民権を得ることへの深い欲望」を優先する。 5章 業績主義(数値化)の致命的な欠陥を指摘する。ひとつは、そもそも指標自体が役に立たないケース。もうひとつは、測定方法が考案された時点では妥当だったとしても、しだいに測定方法の存在そのものによって振り回されるようになること。「測定方法が行動を植民地化する」。質を量的に計量しようとする欲望に警鐘を鳴らす。この点については、やはり前述のデヴィッド・グレーバーが『ブルシット・ジョブ』でも論じている。 6章 歴史的な出来事は首尾一貫した物語として捉えられるが、現実は往々にして偶発的である。単純化や簡略化の傾向は公的な権力の好むところであり、「人間の自由のための偉大なる解放が獲得されたのは秩序だった制度的な手続きによる結果ではなく、無秩序で、予想できず、自然発生的な行動が社会秩序を下から断裂させていった結果である」。不服従を説く第1章に立ち返ったうえで、「未来は決定されていない、閉ざされてはいない」というメッセージにも受け取れる。 全体を自分なりに要約すると以下のようになる。 国家やグローバル企業といった権力は常に人々を均質化しようと企み、業績主義・数値化・単純化もその特徴的な表れとしてみることができる。公的権力による非人間化・奴隷化に抵抗するためには目に見える反対運動よりも、匿名の個々人による不服従の積み重ねが効果をもつ。このような場合、雇われではなく収入よりも自己の存在を優先するようなプチ・ブルジョアジーが隠れた影響力を発揮する。 何より、決して英雄的ではない不服従の表明の積み重ねこそが、社会を住みやすく変えていくという教えが心強く、深く共感できるものだった。平たくいえば「イヤなことは拒否する」ことの積み重ねが、結果的に社会に資することにもなると言える。ならびに、最近興味をもって何冊か読んだアナキズム関連の著書のなかでは実践的でもあり、求めていたところの一部を得られた感がある。

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2021/10/17

「世界に抗う土着の秩序の作り方」という訳書のサブタイトルが良い。市井の人たちがどうやってお上の管理と支配をすり抜けたり回避したりしてきたか、フラットで穏やかな目線で記述されている。

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2018/10/07

いわゆる無政府主義者としてのアナキストではないけれど、アナキストのメガネを通して世を見ることをその実践として綴った六章。 リヴァイアサンからは逃げられない。飼い慣らすことが課題である。 社会主義なき自由は特権と不正義であり、自由なき社会主義は奴隷制と残忍さである、という言葉を引...

いわゆる無政府主義者としてのアナキストではないけれど、アナキストのメガネを通して世を見ることをその実践として綴った六章。 リヴァイアサンからは逃げられない。飼い慣らすことが課題である。 社会主義なき自由は特権と不正義であり、自由なき社会主義は奴隷制と残忍さである、という言葉を引用しつつ、人のありうる姿を考える。

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2018/01/13

ネオリベラリズム全盛の今日、今更革命的前衛に率いられたプロレタリアートの役割に期待するわけにもかず、かといって穏健な市民運動もパワー不足、とすれば残るはアナキズムか・・・ そのせいか、最近アナキズムの立場からの新刊も増えているようです。効率性を優先させることで人間が疎外されていく...

ネオリベラリズム全盛の今日、今更革命的前衛に率いられたプロレタリアートの役割に期待するわけにもかず、かといって穏健な市民運動もパワー不足、とすれば残るはアナキズムか・・・ そのせいか、最近アナキズムの立場からの新刊も増えているようです。効率性を優先させることで人間が疎外されていくなか、失われていく土着的なものの役割に改めて注目する必要があるのでしょうか。 工場や学校だけではなく、介護施設すら権力装置として機能していること、論文の引用数などで科学業績を量的に評価しようとする試みへの反論、歴史的な評価の多くが偶発性を無視していることなど、興味深く読ませていただきました。 まだ読んでいないけど是非読んでみたい「ゾミア」の著者の作品です。

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