池澤夏樹、文学全集を編む の商品レビュー
(2024/04/30 3h) たくさんのひとが関わったとてつもない情熱が、ドキュメンタリー仕立てで一冊に詰まっている。 こうしてひとつの作品の成り立ちを見られるのは嬉しい。わくわくした。 惜しむらくは、本全集の刊行をリアルタイムで見守るという楽しみを逃したこと。
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※このレビューにはネタバレを含みます
全集に収められているカフカ『失踪者』について木下古栗が書いた「迸る書記」のみ読了。 カフカは『失踪者』について、「ディケンズの模倣」と日記に記している。『失踪者』や『審判』、『城』といった作品は、主人公が新しい出会いや環境に放り込まれ、慣れかけたところで、また別の出会い、別の環境に放り込まれ、安定を得ることはない。しかし、『失踪者』はほかの二作と違って妙な明るさがあり、その背後に空虚感が潜んでいる。カフカが指摘するディケンズの「感情の溢れでる手法の背後にひそむ感情のなさ」と共通している。 池澤夏樹は世界文学、日本文学の全集をそれぞれ三十冊編集しているが、世界文学は主に戦後の二十世紀から選ばれているのが目を引く。 日本文学では、古典作品は現在活躍している小説家に現代語訳を依頼しているのもポイント。
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2022.6.19市立図書館 ざっと読み。池澤さんへのインタビューや編集者との対談など。斎藤美奈子の文学全集刊行史がおもしろかった。河出書房が昔からいかに文学全集大好きな出版社だったかよくわかった。日本文学全集は興味のあるのは借りて読み、とくに大事なもの(「日本語のために」など)...
2022.6.19市立図書館 ざっと読み。池澤さんへのインタビューや編集者との対談など。斎藤美奈子の文学全集刊行史がおもしろかった。河出書房が昔からいかに文学全集大好きな出版社だったかよくわかった。日本文学全集は興味のあるのは借りて読み、とくに大事なもの(「日本語のために」など)は手元においている一方で、世界文学全集の方はまったく手を出していないが、これから少しずつ読んでいけるといいなと思う。
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セレクティブ・コレクティブ 世界・文学全集→世界文学・全集 P.64木下古栗 P.142 中村佑介
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急病で倒れ、入院した中で、一本のロープにしがみつくように読んだ一冊。最高に面白かった。大学で『世界文学への招待』という講義を取ったのだが、その授業で紹介された多くの書籍が、池澤夏樹さん個人編集の文学全集に収録されていた事から、気になっていて読んでみた。ブクログを使いはじめてすぐ、...
急病で倒れ、入院した中で、一本のロープにしがみつくように読んだ一冊。最高に面白かった。大学で『世界文学への招待』という講義を取ったのだが、その授業で紹介された多くの書籍が、池澤夏樹さん個人編集の文学全集に収録されていた事から、気になっていて読んでみた。ブクログを使いはじめてすぐ、この文学全集とのタイアップをブクログで行っておられたことは覚えている。その時は、知らない本が多いなあ…面白いのかな…?と、そのぐらいの印象だった。 講義を受けて、それからこの本を読むと、まあエキサイティングなこと。世界文学全集。世界って、どこを指すんだろう?西洋と日本だけではないはずで…。いや、私が無知だったのがいかんのだけれど…。そう。読んでいないもの。知らされていない物語世界。そこに映されたいろんな人生…。私達が無意識に、こんなところに文学があるのだろうか、と誤謬を持っていたところに、なんて豊かな作品があることか。 無論、旧来からの文学全集のラインナップも、今一度読み直していいと思う。本当にちゃんと読んだ、って言えるかって…退屈がって斜めで読んだものもきっとあるから。それは古書店でだってネットでだって買えるし、図書館でだって読める。いずれにしろ、自分にとってヴィヴィッドなものを読むって、大事だしめっちゃ楽しいよ!ということが、生き生きと語られ、読み終わったら全集を一冊づつ、美味しい果物の端をかじるように、読み始めたくなる。そんな本だった。 日本文学編の方も同様に。あー!ジェットコースターに乗ってるように、夢中で読めそうだ、これ!と、直感した。どうせまだ絶対安静と言われているのだ。元気でなければ本も読めない。病臥中でも読書できるのは、まだ少し良い時だと、思い知ったので…。ふふふ。読んでやるもんね。 まだ私は何も知らないんじゃないか、今まで何を読んできたんだろ、って思うと、これまでの人生巻き直したくもなるけれど…。知らないことがまだまだあって、死ぬまでのあと何年かで、本をお供に世界をどれだけ逍遥できるか。それに人生賭けてみたって、悪くはないのだもの。 池澤さん個人編集の世界/日本文学全集に、ちょっとでも興味をもってらっしゃる方。読もうか迷ってるお作が収録されているけど…という方、本書も是非ご一読をお勧めする。滅法面白い読書人の冒険が、あなたを迎えてくれるから。予備知識?いっそないほうが面白いかもしれない。では、お互いよい旅を。
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「池澤夏樹、文学全集を編む」 http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309026084/ … 読んだ、おもしろかった!ボリュームあるけど読み出したら瞬速。時代錯誤なはずの文学全集の刊行決定までの葛藤とか翻訳者選定の経緯とかデザインとか、舞台裏のエ...
「池澤夏樹、文学全集を編む」 http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309026084/ … 読んだ、おもしろかった!ボリュームあるけど読み出したら瞬速。時代錯誤なはずの文学全集の刊行決定までの葛藤とか翻訳者選定の経緯とかデザインとか、舞台裏のエピソード盛り沢山。声がかからなかった人たちから嫉妬された話が好きだ(つづく 世界の独断定義。あと河出の文学全集出版の歴史が超おもしろい。さすが斎藤美奈子。うちにも文学全集は複数あって子供の頃読んだけど、この池澤夏樹選の全集はセトリだけで読みたいと思うラインナップだった。1冊目がケルアックで始まる文学全集なんてこれまでにあったか?(いや無い。反語)(おわり
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創作・翻訳にならぶ編集という仕事。 -------- 池澤夏樹が日本文学全集を編む、と知ったときには、小躍り、は多分しなかったと思うが、けっこう浮かれた。世界文学全集のときはそうでもなかったのだが。 ところがこれは僕の早合点だったらしい。というのも、本書によれば、世界文学全集は...
創作・翻訳にならぶ編集という仕事。 -------- 池澤夏樹が日本文学全集を編む、と知ったときには、小躍り、は多分しなかったと思うが、けっこう浮かれた。世界文学全集のときはそうでもなかったのだが。 ところがこれは僕の早合点だったらしい。というのも、本書によれば、世界文学全集は、日本語に翻訳された世界の文学が、日本の文学に組み込まれたものだし、日本は世界の一部分であるという点で、日本文学全集は世界文学全集のひとつである、と。 「世界」のときに小躍りしなかったのは、自分の置かれている状況もあるだろう。「日本」がはじまったときは本が沢山読める状況だったが、諸々の事情で今はなかなか厳しくて、いま発表されてもスルーしそうだから。 けれど、池澤の言葉に励まされる。 足元を見て、天空を見て、はるか遠い水平線を見て考える。文学はその素材である。 嗚呼、僕はその素材を近頃身近に置けていない。まあ文学は逃げないのだが。 同じく池澤の言葉で、われわれ(ここでいうのは日本人、ということ)は哲学よりも科学よりも神学よりも、文学に長けた民であった、とある(そうかな。日本では哲学も科学も神学も文学も、八百万の知恵、になっちゃってたんじゃないかな、なんていう風にも思うけど)。 その長けた文学を、もう一回僕らの時代に訳し、編み直すという仕事を綴った本だ。 今年はたくさん本を読むぞー! と決意するのにはいいスタートかな、と思った。
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