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私たちの星で の商品レビュー

4.6

19件のお客様レビュー

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2022/09/05

とっつきにくい宗教と思い、「スルー」して過ごしてきたイスラム教という存在が、梨木さんの紡ぐ美しくサラサラと流れる詩のような文章と、カリーマさんのダイナミックな体験談と、その中で揺れる微妙な心に動きが見え隠れする文章に、引き込まれて何度も何度も読みました。 何度でも読みたい作品です...

とっつきにくい宗教と思い、「スルー」して過ごしてきたイスラム教という存在が、梨木さんの紡ぐ美しくサラサラと流れる詩のような文章と、カリーマさんのダイナミックな体験談と、その中で揺れる微妙な心に動きが見え隠れする文章に、引き込まれて何度も何度も読みました。 何度でも読みたい作品です。

Posted byブクログ

2021/07/31

寛大さ、フェアネス、否定から先へと到達する知性を、お2人の往復書簡を覗かせてもらったような本だった。安っぽい「多様性」が多用されるいま、この本に出会って読むことができてありがたく感じた。あとがきにもあるように、まるで生きているような、瑞々しい往復書簡だった。

Posted byブクログ

2020/09/06

梨木香歩さんと、諸岡カリーマ・エルサムニーさんの往復書簡。数々の人気小説を柔らかいタッチで書き続けてきた梨木香歩さんは、実はエッセイもなかなかイケる人。「春になったら苺を摘みに」のエッセイのころからわかるように、異文化や宗教への感度の高い方です。一方カリーマさんは、半分アラブ人で...

梨木香歩さんと、諸岡カリーマ・エルサムニーさんの往復書簡。数々の人気小説を柔らかいタッチで書き続けてきた梨木香歩さんは、実はエッセイもなかなかイケる人。「春になったら苺を摘みに」のエッセイのころからわかるように、異文化や宗教への感度の高い方です。一方カリーマさんは、半分アラブ人でエジプト育ちのムスリムの女性。翻訳家としてや、大学での教鞭、テレビのアラビア語講座等で活躍してる、非常に稀有なバックグラウンドをもち、豊かな感性と知性を持ち合わせている方。この二人がイスラームやナショナリズムや異文化共存について、率直で優しくて深い対話を重ねます。なんという贅沢。 ー 何か道があるはずだと思うのです。自分自身が侵食されず、歪んだナショナリズムにも陥らない「世界への向き合い方」のようなものが、私たちの日常レベルで。(梨木香歩)ー カリーマさんの文章は知性に溢れ何度も読み返したくなります。梨木香歩さんの文章は、声に出して読みたくなるリズムとタッチで、実際はじめの章は音読してしまいました。 時は2016年。アラブの春やらISやらテロやら国会議事堂前デモなど、思いかえすと世界も日本も不穏な空気がただよい、そこここに噴出する妙なナショナリズムに世間が戸惑っていた時期でした。四年後の今や、誰も予想だにしなかった感染症で各国混乱、もはや、やや偏りのあるナショナリズムは規定路線のよう。ムスリムやハラルや彼らの礼拝習慣については、当時よりも世間の知識は高まったように思うけども、果たして世界は平和的共存に歩みを進められているのか。

Posted byブクログ

2019/11/08
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

カリーマさんって、「テレビでアラビア語」の人だ!と思いつつ、時事的でセンシティブな話が続くのかと身構えて読んだら、意外とそこまでじゃないというか、感応するところの多いもっと深い所の話だった。もちろん単純に肯定できないと思うところもあるけれども…。異文化の摩擦の生まれる時、共感の水脈はどこにあるのか。文化の発露としての、個人。信仰。 二人の丁寧なやり取り、往復書簡という形だからこその、相手の言葉一つ一つから滴り落ちるニュアンスや背景、思考も掬い取るように書かれる手紙の美しくやさしいこと。 「絶えざる関心の鍬を持って、深い共感の水脈を目指したい」という気持ちがお互いに慎重に、言葉を尽くしてやり取りしつつ物事の深みへ潜っていく姿勢にみなぎっている。 「信仰」のくだりには打ちのめされてしまった。 「神と、自分しかいないと措定された場……人間が自らの切実な必要のためにたどり着く場所」 「信仰が『人と世界の対峙を司る自我の領域と重なった』とき――それは本来の信仰と違うものに変容し、その途端、スイッチが入ったように何かが(意地、かしら?)加速するのでしょう」 私は、どちらも身に覚えがあって読んでいて頭がぐらぐらするようだった。棚から出してはまた上げて、としていたことをずばりと切り落とされた気持ち。 今は確かに、群れに帰属するというのがあいまいで、異文化の波に揺さぶられている。本来自分の内側の信仰と同じ領域に属するものが、望まない形でむき出しにならざるを得ないことがあるのかも。それで、こういうことになるのかしら。梨木さんとカリーマさんのように、少しづつ歩み寄って、ゆっくりと打ち明けあえば、こんなに楽しく、心震えることもないのに、難しいものですね。

Posted byブクログ

2018/07/01
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

往復書簡というのははまれるかどうかがなかなか難しいのだけれど、これは当たり。読みやすかった。深かったし、確かな感じがした。

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2018/06/03

梨木さん、悪い意味でリベラルだったんだ。彼女の小説もエッセイも大好きだけど、これはちょっとダメだった。文学としてのすごみはあるのに、文学者としてのすごみが感じられない。政争ではなく、政治と権力をもっと深くえぐって欲しい。 師岡カリーマ・エルサムニーさんは、初めて。梨木さんにおも...

梨木さん、悪い意味でリベラルだったんだ。彼女の小説もエッセイも大好きだけど、これはちょっとダメだった。文学としてのすごみはあるのに、文学者としてのすごみが感じられない。政争ではなく、政治と権力をもっと深くえぐって欲しい。 師岡カリーマ・エルサムニーさんは、初めて。梨木さんにおもねるところはあったが、事柄におもねりがなかったこと、自己を冷静に捉えていることに好感を持った。こういう生き方もあるのだと思った。

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2018/05/05

私は、というか大部分の日本人はおそらく、政治や宗教の話題をはっきりと語るのを苦手としていて、そこには、あまり理解していない恥ずかしさのようなものもある。それでも梨木香歩さんのエッセイを読むのは好きで、それは彼女の言葉が未知の世界に人間性や日常性を与えて、読んだ私も半歩くらいは歩み...

私は、というか大部分の日本人はおそらく、政治や宗教の話題をはっきりと語るのを苦手としていて、そこには、あまり理解していない恥ずかしさのようなものもある。それでも梨木香歩さんのエッセイを読むのは好きで、それは彼女の言葉が未知の世界に人間性や日常性を与えて、読んだ私も半歩くらいは歩みだした気にさせてくれるからかもしれない。まるでパッチワークのように多様性に富んだ、美しい私たちの星。その星を愛する2人の女性の美しい言葉。読んでいる数日間、本当に気分が晴れていて、そういう本があることに感謝したくなった。

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2018/03/08

石牟礼道子さんを 想い起してしまった 人も 海も 山も 自然も それはそれとして すんなり受け止めて 自分も自然の一部分に 過ぎない だからこそ 唯一無二の存在として 人も我も 大事にされなければならない 人種だとか 民族だとか 宗教だとか 国だとか そんなものを 遥かに超える...

石牟礼道子さんを 想い起してしまった 人も 海も 山も 自然も それはそれとして すんなり受け止めて 自分も自然の一部分に 過ぎない だからこそ 唯一無二の存在として 人も我も 大事にされなければならない 人種だとか 民族だとか 宗教だとか 国だとか そんなものを 遥かに超える ものが確かに在る 梨木香歩さん 師岡カリーマ・エルサムニーさん のお二人の間の やり取りであるからこそ 自ずと 滲み出てくるもの なのでしょう 梨木香歩さんの「あとがき」の中の一節で ー(心を震わせるような出来事があった時) あのひとがなんというか聞きたい、 と思える大切な友人が増えることは、 なんとひとを豊かな思いにすることだろう。 と綴っておられることに心震えました。 追記 〽あたまを雲の 上に出し  四方の山を 見守りて  かみなりさまは 下で鳴る  富士は 日本晴れの山 上でも下でもない 右でも左でもない 一人の個人として 立っておられる 梨木香歩さんの替え歌には まったく そのとおーり

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2018/03/03

イスラム教、キリスト教、仏教… 西欧人、東洋人、アフリカ人… 人類は地球が丸いということを、紀元前から知っていた。 それなのに、人類は分化を続け、互いを排他するようになっていった。 文明の発達により、今、急速に地球は小さくなりつつある。 文明が縮めた距離に比べ、人間同士の...

イスラム教、キリスト教、仏教… 西欧人、東洋人、アフリカ人… 人類は地球が丸いということを、紀元前から知っていた。 それなのに、人類は分化を続け、互いを排他するようになっていった。 文明の発達により、今、急速に地球は小さくなりつつある。 文明が縮めた距離に比べ、人間同士の見えざる距離は、そう簡単に縮まらない。 実は1対1の対話では、その距離が一気になくなる。 ということは、人間同士の距離とは、人間の集団と集団の距離なのか。 人類同士が排他し合う世の中を、終わりにできるような希望を感じる二人の書簡のやり取りでした。 また二人の美しい日本語も、必見です。

Posted byブクログ

2018/02/13

富士の山のうたの歌詞についての記述は 共感した。 富士山は別に他の山を 見下ろしてるわけではないだろう、と。 このあたりの表現に敏感なのが、 現代なんだなーと思う。

Posted byブクログ