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100分de名著 全体主義の起原 ハンナ・アーレント(2017年9月) の商品レビュー

4.5

20件のお客様レビュー

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2024/01/13

あまり100分de名著は読まないのだけど、友だちに貸してもらってアーレントの予習復習。 仲正氏のお話は要点が凝縮されていて理解しやすく、アーレントが訴えかけていることが伝わってきてすごくよかった。とりわけアイヒマンの所。 アーレントに挑戦する人は一読の価値あり。

Posted byブクログ

2022/07/05
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 2016年の米国大統領選でトランプが勝利、2020年の大統領選でバイデンに敗北したものの、米国のポピュリズムへの傾斜に拍車をかけたのは間違いない。ヨーロッパの民主主義の国々でもポリュリズムへの傾斜を認める。  2022年2月24日にロシアはウクライナへの特別軍事作戦(軍事侵攻)を開始し、ロシアの威信を取り戻そうと必死だ。それに対し、NATO(北大西洋条約機構)をはじめ西側諸国は団結して経済制裁をかける。しかし、各国の経済状況や地政学上の位置などによる不揃いな面は否めない。一方、中国は、21世紀後半を見据え覇権への歩みを進めている。  今後、中国の台頭により、西側諸国で経済などの不安定さから国民の不安がますます増大することにより、いつか来た道、そう全体主義へのスイッチを国民が入れてしまうかもしれない。そんな不安を持ち本著を読んでみた。  原典をじっくり読んでみたい。

Posted byブクログ

2021/02/26

5歳の娘に「妹のおもちゃ取り上げて遊ぶのは、バイキンマンと同じ」「次々におもちゃを買って捨てる人は、ヒーリングッとプリキュアの敵」と伝えてきたその言葉が、ブーメラン返しに自分に刺さる本。 ホロコーストも優生思想も、普通の人が自分を普通と決め込んで、口を拭うことから始まっている。『...

5歳の娘に「妹のおもちゃ取り上げて遊ぶのは、バイキンマンと同じ」「次々におもちゃを買って捨てる人は、ヒーリングッとプリキュアの敵」と伝えてきたその言葉が、ブーメラン返しに自分に刺さる本。 ホロコーストも優生思想も、普通の人が自分を普通と決め込んで、口を拭うことから始まっている。『すばらしい新世界』(オルダス・ハクスリー)や『命の選別』を読んだ後では、それのことが一入、身に染みた。 ーー人が他人を心置きなく糾弾できるのは、自分は「善」であり、彼は「悪」だという二項対立の構図がはっきりしている場合に限られます。(p.98) 小さな子どもの中にも、凡庸な悪の芽はある。 それを糾弾する私の中にも。 政治家の愚行や富豪たちの不道徳を弾劾する言説の中にも。 鬼退治に熱狂するムーブメントの中にも。 不安に耐えろ。 わかりやすさを求めるな。 「安住できる世界観」を疑え。 宙ぶらりんの自分を受け入れろ。 「複数性に耐える」ことを通して考え続けろ。 相対的に悪から自由になるために。

Posted byブクログ

2021/01/11

ナチスのユダヤ人虐殺の経緯が非常に良く分かった。 アメリカの大統領選を見ていると、いまだに陰謀論が横行しているのは何なのだろうか。このままでは、かつてと同じようなことになりかねない。それだけは避けたいものだ。 要約 アーレンとの指摘したかったこと。 ヒトラーやアイヒマンの個々...

ナチスのユダヤ人虐殺の経緯が非常に良く分かった。 アメリカの大統領選を見ていると、いまだに陰謀論が横行しているのは何なのだろうか。このままでは、かつてと同じようなことになりかねない。それだけは避けたいものだ。 要約 アーレンとの指摘したかったこと。 ヒトラーやアイヒマンの個々の人物の特殊性でなく、社会の中で拠り所を失った大衆のメンタリティ。 「安住できる世界観」を求め吸い寄せられていく。 1章 19世紀に反ユダヤ主義→全体主義へ ユダヤ人 イエスを十字架にかけた罪深き人々 金貸し キリスト教で禁止 国民国家 nation state nation 生まれを同じくする文化的アイデンティティを持っている 同一性 state 統治のための機構 ナポレオン戦争により国民意識が芽生える 国民の居住地域と統治機構としての国家の境界線が一致しない ユダヤ人は国民国家が形成される中で内なる異分子となった ドレフュス事件 パナマ運河疑獄 シオンの賢者たちの議定書 2章 19世紀後半 資本主義の発達→帝国主義 人種思想と民族的ナショナリズム 国民国家を解体へと向かわせ、全体主義に継承 国民国家は制服を行った場合、異質な住民を同化し同意を強制→反発 闇の奥 少年キム ジャングルブック アラビアのロレンス 民族的ナショナリズム 民族はルーツや歴史性を強調する概念 解釈次第で拡大 「血」を正当化する概念として持ち込む ドイツ 一次大戦での敗北 戦勝国である資本主義の国が自分たちを圧迫 資本提供はユダヤ人 ユダヤ人を焦点にして、ドイツ人をまとめる 人権を実質的に保障しているのは国家 無国籍者が顕在化する中で法による支配の限界が見えた 3章 大衆 何が自分にとっての利益か分からない→全体主義 資本主義経済の発展により階級からの解放→大衆のアトム化 安直な安心材料や分かりやすいイデオロギー ナチズム ボルシェヴィズム 反ユダヤ主義 世界征服陰謀説 ドイツ、オースリア 憲法起草者はユダヤ系 ユダヤ系への反発 組織の二重構造化 そもそもユダヤ人などいなかった世界 4章 アドルフ・アイヒマン ナチス親衛隊の中佐 アルゼンチンに逃亡 エルサレムで裁判 上司の命令だけでなく、法にもしたがった 法を守るということは単に法に従うという事ではなく、自分自身が法の立法者のように行動する 法=ヒトラーの意志

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2020/07/19
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

不安な人々が入り込めるユートピア・ファンタジー。それは、宗教であり、ナチスであり、コンサルティングなのであろう。 「分かりやすさ」を求めず、思考を鋭くし、複雑な現実を複雑なまま捉える。 そのために、勉強が必要だなと。 勉強することで、複雑な事柄も、なんとか整理をできるようになるから。 ------------------- [原理] 〇全体主義の起源  not ヒトラーやアイヒマンといった人物たちの特殊性  but 社会の中で拠り所を失った「大衆」のメンタリティ。  現実世界の不安に耐えられなくなった大衆が「安住できる世界観」を求め、吸い寄せられていく、その過程。 〇自分たちは悪くない、というのが人間の心理。自分たちの共同体は本来うまくいっているはずだが、異物を抱えているせいで問題が発生しているのだ-と考えたい。 〇帝国主義=帝国の基盤:”国民国家” → 衰退 → 危機意識 → 全体主義 〇全般的崩壊のカオスの状態にあっては、こうした虚構の世界への逃避こそが、とにかく最低限の自尊と人間としての尊厳を保証してくれるように思える。 〇一貫性を備えた嘘の世界-この嘘の世界は現実そのものよりも、人間的心情の要求にはるかに適っている。 〇文字通りトータル(全体的)な「空想世界」に逃げ込む。それは、自分たちが見たいように現実を見させてくれる、ある種のユートピア 〇ユートピア:現実を(かなり歪曲した形で)加工したものが基盤となっている 〇ヒエラルキー:秘密結社における奥義通暁の程度によるヒエラルキー 〇人間は「何が真実なのか分からない、自分だけが真実を知らされていない状態」は落ち着かない。 〇ナチス:統治の安定化ではなく、不安定な状態のまま、組織の求心力を維持し高める by 何重にも組織を作って忠誠心を競わせた 〇全体主義は、単に妄信的な人の集まりではなく、実は「自分は分かっている」と思い込んでいる人の集まり。 〇政治において服従と支持は同じ。 ----- [TO BE] アイヒマンにならないためにー 〇分かりやすい説明や、唯一無二の正解を求めるのではなく、一人ひとりが試行錯誤を続けること。 〇人間とは、知的訓練を通じて教養を獲得し、一個の人格として自立し理性的に思考することができる存在の子と。 〇人間は、自分とは異なる考え方や意見を持つ他社との関係の中で、はじめて人間らしさや複眼的な視座を保つことができる。 〇複数性に耐える=ものごとを他者の視点で見る [NOT TO BE] 〇インターネット上に様々な意見や主張が飛び交っているように見えるが、実際には自分と同じような意見・自分が安心できる意見ばかりを取り出し「やはり」「みんな」そう考えているのだ、と安心する。 〇「分かりやすさ」に慣れてしまうと、思考が鈍化し、複雑な現実を複雑なまま捉えることができなくなる。

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2019/02/05

アーレントの著作を読むのはちょっとついていけない自分には、とてもわかりやすくこの三部にわたる大著を解説してくれた。「複数性」に耐え、「分かりやすさ」の罠にはまってはいけない。(P.109)本当にこれ。

Posted byブクログ

2018/11/10

NHK 100分de名著をたまたまテレビで見た時にこの本の内容を取り上げていて、慌てて録画するぐらい、すごい内容だと感心した。本も買って読み直しました。 全体主義の怖いところは、政治には無関心で深く考えることをしない人たち(大衆)が、情勢が不安になった時に、安直な判断で、全く正...

NHK 100分de名著をたまたまテレビで見た時にこの本の内容を取り上げていて、慌てて録画するぐらい、すごい内容だと感心した。本も買って読み直しました。 全体主義の怖いところは、政治には無関心で深く考えることをしない人たち(大衆)が、情勢が不安になった時に、安直な判断で、全く正しくない方向に突き進んでしまうところ。その最たる例が、ドイツナチスのユダヤ人大量虐殺。 一人一人が正しいことを理解して、不安な時も冷静になり、他人の意見に流されないように!!自分の意見をしっかり持とう。考えを止めるな!!複数性に耐えろ!!客観的に物事を見るということ。 悪の凡庸さ。組織の中で自分の役割をこなすことが正しいことではない。自分の役割が組織の中でどのように役立つかを考えること、役立った結果、組織はどうなるのかを考えることが大事!!考えることが何より大事!! 絶対悪を設けている時、複数性は破壊され、人間から考える営みを奪う。気をつけろ!!

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2018/05/20

オリジナルはハードルが高そうなので準備のための一冊。 それにしてもNHKテキストってすごいよなぁ。この内容で524円。どういう仕組みなのか不思議。原稿料はテレビへの出演料でまかなわれているのかな。 「全体主義の起源」「エルサレムのアイヒマン」この2作の理解を助けてくれる一冊といえ...

オリジナルはハードルが高そうなので準備のための一冊。 それにしてもNHKテキストってすごいよなぁ。この内容で524円。どういう仕組みなのか不思議。原稿料はテレビへの出演料でまかなわれているのかな。 「全体主義の起源」「エルサレムのアイヒマン」この2作の理解を助けてくれる一冊といえるだろう。社会のなかで拠り所を失った大衆のメンタリティーの流れこそが全体主義の起源なんだとするアーレントの主張には恥じ入るばかりだ。

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2018/01/28

もっともらしく、受け入れやすい「悪」についてのストーリーを設定して、いつの間にか、人びとから考える力を奪い去ってしまう全体主義。 対抗する鍵は、「複数性に耐える」こと、すなわち、物事を他者の視点で見ることだという。 自分の頭で考えることの大切さを再認識させてくれた。

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2020/03/04

ハンナ・アーレントの主著『全体主義の起源』(全三巻)と『イェルサレムのアイヒマン』についてNHK『100分de名著」シリーズで紹介された内容の書籍化。トランプ大統領の誕生で、アメリカでも時を超えてベストセラーになっているという。手っ取り早く理解したかったので購入。 20世紀の前...

ハンナ・アーレントの主著『全体主義の起源』(全三巻)と『イェルサレムのアイヒマン』についてNHK『100分de名著」シリーズで紹介された内容の書籍化。トランプ大統領の誕生で、アメリカでも時を超えてベストセラーになっているという。手っ取り早く理解したかったので購入。 20世紀の前半を暗いものにした全体主義について歴史的に考察したのが『全体主義の起源』である。なぜあのようなことが起こりえたのかを理解することは現在においても重要な課題でもあるといえる。全体主義に関して階級に属さない「大衆」の発生が大きな影響を与えたとしている。反ユダヤ主義は、敵を必要としていた国民国家において、「大衆」に提示された「世界観」だったのである。ナチスは国家政党というよりも「運動」であった。その状況に関しては現時点でも同じことが言えるのだ。 アイヒマン裁判を傍聴してまとめた『イェルサレムのアイヒマン』は、絶滅収容所におけるユダヤ人協力者の存在を隠さなかったり、アイヒマン自身を極悪非道な人間と描かなかったことにより、ユダヤ人社会含めて批判を受けたという。冷静になると、アイヒマンが凡庸であったことの方が空恐ろしい。 「アーレントのメッセージは、いかなる状況においても「複数性」に耐え、「分かりやすさ」の罠にはまってはならない ー ということであり、私たちにできるのは、この「分かりにくい」メッセージを反芻しつづけることだと思います」 「分かりやすさ」というものに対しては警戒を続けなければならない。ネットとモバイルが隅々に広まった現在においてはさらに重たいメッセージなのかもしれない。

Posted byブクログ