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100分de名著 全体主義の起原 ハンナ・アーレント(2017年9月) の商品レビュー

4.5

20件のお客様レビュー

  1. 5つ

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  2. 4つ

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2017/11/19

「誰しもアイヒマンになり得る」 なかなか衝撃的でした 当時の環境でこのように思いついて且つそれを実際に言及したハンナ・アーレントの客観性と視野の広さに感銘を受けました 近年世界でポピュリズムやナショナリズムが跋扈し始めている中,彼女が言っていた言葉の重みを思い知らされます 単純明...

「誰しもアイヒマンになり得る」 なかなか衝撃的でした 当時の環境でこのように思いついて且つそれを実際に言及したハンナ・アーレントの客観性と視野の広さに感銘を受けました 近年世界でポピュリズムやナショナリズムが跋扈し始めている中,彼女が言っていた言葉の重みを思い知らされます 単純明快な答えを求めず,「複数性」に耐えられる人にならなければ「悪」に拍車がかかる危機感を今後持ちます

Posted byブクログ

2017/11/12
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ナチスの全体主義がなぜ起こったのか。全体主義とは何なのか。ユダヤ人虐殺に至った経緯と、なぜそのような「悪」が起こってしまったのか、アイヒマンを通して考察している。 印象に残ったとこと現状を箇条書き。 文化的アイデンティティをベースとする「国民」という概念は島国である日本は理解しやすい。一方国境と異なる広義の「民族」という概念は日本に当てはまるか?在日の排斥などは当てはまるか? 全体主義は単なる政党ではなく「運動」である。政治に対して全く無関心、無責任だった人たちが危機感の中で急に政治に過大な期待を寄せるようになると強力な単純な力に容易く傾く。 誰でもアイヒマンになりうる ⇒そうならないためには、「複数性に耐える」ことが必要。つまり、物事を他社の視点で見るということ。 複数性が全体主義の急所である。複数性が担保されている状況では全体主義はうまく機能しない。 悪というのは善の対極というより、哲学的に思考することをやめた人が陥るもの。哲学的に思考するとは、そもそも人間とは何なのか、何のために生きているのか。 複数の視点がないと自分では考えているつもりでも数学の問題を解くように処理しているに過ぎない。

Posted byブクログ

2017/11/01

ユダヤ人の学者アンナハーレントの思想を解説。 なぜ全体主義がうまれナチスによる迫害がとまらなかったのか?について向き合った生涯。 まず彼女は全体主義の起源を以下のように定義する。 ヨーロッパにおける大衆の誕生は19世紀の末くらいから。そこで強調されたのは市民との違いであった。...

ユダヤ人の学者アンナハーレントの思想を解説。 なぜ全体主義がうまれナチスによる迫害がとまらなかったのか?について向き合った生涯。 まず彼女は全体主義の起源を以下のように定義する。 ヨーロッパにおける大衆の誕生は19世紀の末くらいから。そこで強調されたのは市民との違いであった。 市民とは大衆社会以前の概念。自分たちの利益やそれを守るにはどうすればいいかがクリアだった。 理由は階級社会。 労働者は労働者階級、貴族は貴族階級、資本家は資本家階級でわかりやすかった。 しかし選挙権が普通選挙に拡張されることによって、階級意識が希薄化していき階級ではなく大衆が誕生。 大衆は自分の利益がなになのか?を明確に意識することもすくないしわからない。 階級社会の時代は同じ階級に属するだれかが自分の利害をさししめしてくれる。階級に束縛されるわずらわしさはある一方でシンプル。これがなくなることで、束縛から自由になる一方で選ぶべき道を示してくれる人も利害を共有できる仲間もいなくなりすべてを自分できめなければいけない状況に放り出される。 そうした状況の中で全体主義政党が、「排外的な政策をかかげて世界観を提示」。ナチスとロシアが成功した。 現在でも大衆がとびつくのは完全に武装蜂起とか核武装とか完璧に規制緩和といったわかりやすい政策。しかし世界はそれほど単純ではない。ちょっと待てよと現状認識を俯瞰することが大事。わかりやすい説明や唯一無二の正解を求めるのではなく、試行錯誤をつづけることが全体主義を避ける重要な姿勢だと示唆。 上記は「全体主義の起源」の主張。 そのあとで彼女はナチスのホロコーストを指導したアイヒマン裁判についてかいていく。 なぜアイヒマンか? 彼はわたしは法に忠実にしたがったからだ、だから正義はわれにありと主張。とくにカントにしたがって生きたと強弁。 カントはむしろ人は法にしたがうだけでなく法の背後の精神と同一化しなければならないと主張しているのだがそこが欠落し、法律=ヒトラー、法を遵守してなにがわるいのかと。 アイヒマン裁判のあとにアメリカでミルグラムの実験がおこなわれた。 学生が先生役と生徒役にわかれる。で、生徒が間違えると電気ショックをあたえる。 でふつうだとそんなひどいことはしないはずだが先生役の学生のそばに権威者を置いて命令をさせると、6割の先生役の学生が躊躇なく電気ショックをあたえるようになり、生徒がもだえくるしんでいても続けていく。 これはアイヒマンと同じ状況だ。つまり人はだれもがアイヒマン的な部分をもってるという実験。 つまり権威者の命令に服従し、善悪の自己判断を超越して残酷なことをしうるということをしめした実験になる。これを克服するには、考えることを放棄しないにつきるがこれが難しい。全体主義は常に絶対的な悪を設定し考えることを放棄させていく。 だれにがアイヒマンになる恐ろしさを秘めている。そうならないための処方箋は、「自分とは異なる意見」をきく耳を自分のなかにもちつづけることだと彼女は語る。 人は自分を支持してくれる意見をききたがる。しかしそれではダメだ。自分が理解しにくい意見をちゃんときき深く考えること。これがアイヒマン化しないポイントだと。 マネジメントでいくと、アイヒマンはもっとも忠実な部下とも言える。 こういう部下をたくさんもってると統率のとれたマネジメントをしてるといわれるだろう。 しかしそれは善なのか?というとそうではない。

Posted byブクログ

2017/10/24

テレビを見て、仲正先生の解説に興味を持った。解説本読んでみてハンナ・アーレントにさらに興味を持ったので『全体主義の起原』『エルサレムのアイヒマン』はちょっとずつでも読んでいけたらいいと思う。ここに書かれている『複数性』についてワタシは考えていきたい。これからも。

Posted byブクログ

2017/10/12

「ハンナ・アーレント『全体主義の起原』」仲正昌樹著、NHK出版、2017.09.01 109p ¥566 C9498 (2017.10.09読了)(2017.08.28購入) Eテレの放送テキストです。 ハンナ・アーレントについては全く知りませんでした。アメリカにトランプ政権が誕...

「ハンナ・アーレント『全体主義の起原』」仲正昌樹著、NHK出版、2017.09.01 109p ¥566 C9498 (2017.10.09読了)(2017.08.28購入) Eテレの放送テキストです。 ハンナ・アーレントについては全く知りませんでした。アメリカにトランプ政権が誕生したことによって、その著作である『全体主義の起原』が読み直されている、ということのようです。日本語版も、新訳が出版されています。全三巻で各巻5千円前後なのでちょっと手が出せないですね。さらに『エルサレムのアイヒマン』も紹介されていますので、四冊そろえれば、二万円ほどになります。近くの図書館にはアーレントに関する本は一切ありません。 ボリューム的にも、簡単には読めませんけど。 テキストの内容の話に入れば、読んでも心に引っかからずにスーッと流れてしまいます。戻って読み直すと少し引っかかって来ますけど。ちょっと不調ですかね。 本のテーマは、以下の通りです。 全体主義は、いかにして起こり、なぜ誰も止められなかったのか。(6頁) ハンナ・アーレント 略歴 1906年10月14日、ドイツで生まれる 1924年、マールブルク大学入学、ハイデガーに学ぶ 1925年、フライブルク大学でフッサールに学ぶ 1926年、ハイデルブルク大学でヤスパースに学ぶ 1929年、ギュンター・シュテルンと結婚 1933年ころ、ナチス政権下で、逮捕され釈放後フランスへ亡命 1937年、ギュンター・シュテルンと離婚 1940年、ハインリッヒ・ブリュッヒャーと結婚 1941年、アメリカへ亡命 1951年、『全体主義の起原』刊行 1958年、『人間の条件』刊行 1963年、『エルサレムのアイヒマン』刊行 1975年12月4日、心臓発作のため死去(69歳) 【目次】 【はじめに】今なぜアーレントを読むか 第1回 異分子排除のメカニズム 第2回 帝国主義が生んだ「人種思想」 第3回 「世界観」が大衆を動員する 第4回 悪は「陳腐」である ●第一巻「反ユダヤ主義」(15頁) 近代的な国民国家の誕生によって「反ユダヤ主義」が次第に深刻化・先鋭化し、全体主義の母体となっていく過程を考察しています。 ●「人種」(38頁) 国民国家が展開した海外帝国主義―なかでもアフリカにおける植民地争奪戦は、ヨーロッパの人々に「人種」というものを強く意識させる契機となりました。 ●「人権」(56頁) フランス革命以降、ヨーロッパの知識人や民主主義者は、誰でも人間であれば、そのこと自体が人権の源泉になると信じてきました。 しかし、戦争や革命は、人間でありながら「人権」を持たない人々を大量に生み出しました。 人権を実質的に保障しているのは国家であり、その国家が「国民」という枠で規定されている以上、どうしても対象外となる人が出てしまいます。 ●第三巻「全体主義」(62頁) 何百万人もの人間を計画的かつ組織的に虐殺し続けることが可能だったのはいったいなぜなのか、また、なぜナチスにはそこまでする必要があったのかという問題を提起しています。 ●ドイツの世界支配(70頁) 陰のユダヤ人ネットワークが世界を支配しているのだとしたら、その仕組みを乗っ取れば自分たちが世界の支配者になれる―。 ●法に従う(90頁) 人殺しが「罰」せられるのは、それが「法」に反する行為だからです。しかしアイヒマンは、自分は法による統制を尊重し、法を守る市民の義務を果たしたと主張しました。 ☆関連図書(既読) 「アドルフ・ヒトラー」ルイス・スナイダー著・永井淳訳、角川文庫、1970.06.30 「わが闘争(上)」ヒトラー著・平野一郎訳、角川文庫、1973.10.20 「わが闘争(下)」ヒトラー著・平野一郎訳、角川文庫、1973.10.20 「ナチス追及」望田幸男著、講談社現代新書、1990.08.20 「声の狩人」開高健著、同時代ライブラリー、1991.01.14 「ヒトラーの抬頭」山口定著、朝日文庫、1991.07.01 「ナチス裁判」野村二郎著、講談社現代新書、1993.01.20 「ヒトラーとユダヤ人」大澤武男著、講談社現代新書、1996.05.20 (2017年10月11日・記) 内容紹介(amazon) 悪は凡庸さのなかにある ナチス・ドイツによるユダヤ人問題の「最終解決」。それはある時期のある地域に特有の問題だったのか? それとも──。ナチスの迫害を逃れた一人のユダヤ系ドイツ人の著書を通して、排外主義的な思潮や強権的な政治手法が再び現れつつある今、「人間にとって悪とは何か」「悪を避けるために私たちはどうすべきか」を考える。

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2017/10/06

ナチスドイツや全体主義については、「20世紀の遺物だろう」と勝手に過去のものにしてしまっていたが、『全体主義の起原』で描かれている内容に、予想以上に現代社会とのオーバーラップを感じ、驚いた。   更に、第4回の『エルサレムのアイヒマン』においては、命令と法を遵守する平凡な人間が、...

ナチスドイツや全体主義については、「20世紀の遺物だろう」と勝手に過去のものにしてしまっていたが、『全体主義の起原』で描かれている内容に、予想以上に現代社会とのオーバーラップを感じ、驚いた。   更に、第4回の『エルサレムのアイヒマン』においては、命令と法を遵守する平凡な人間が、その「無思想性」故に大量虐殺者になってしまった経緯を考えるにつけ、法に則って仕事をしている自分も、いつかアイヒマン側に脱落してしまうのかもしれないという軽い恐怖さえ覚える。   それを防ぐにはどうしたらいいのか。   ・「複数性(多様性)」に耐えること。 ・「分かりやすさ」の罠にはまらないこと。   まずは、番組とテキストで提示されたこの2点について、丁寧に向き合っていくことが必要なのだろうと思わされる。

Posted byブクログ

2017/10/04

テレビでは十分に解説されていなかったところを補っているだけでなく、さらに詳しい解説が施されていて、アーレントの思想の一端を窺い知ることができる。

Posted byブクログ

2017/10/01

アーレントを100分にまとめると「こうなるのか」といった内容。100分にまとめるというよりも「テレビでやるとなるとこうなるのか」という方が近い気もする。 テキストの方は放送よりも良いので、放送は再度見たいとは思わないけど、テキストはそつなくまとめられていてよいです。

Posted byブクログ

2021/01/15

烏兎の庭 第五部 書評 9.28.17 http://www5e.biglobe.ne.jp/~utouto//uto05/bunsho/kigen.html

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2017/09/07

うわ、これはわかりやすい。こんなにわかりやすくていいのか? 今、「全体主義の起源」をまさに苦労しながら読んでいるところで、これはちょっと犯罪的にわかりやすい。 すでに読んだところも、これで確認すると、ぼんやりとわかったつもりのところが、しっかりと構造化される感じ。 とは言っ...

うわ、これはわかりやすい。こんなにわかりやすくていいのか? 今、「全体主義の起源」をまさに苦労しながら読んでいるところで、これはちょっと犯罪的にわかりやすい。 すでに読んだところも、これで確認すると、ぼんやりとわかったつもりのところが、しっかりと構造化される感じ。 とは言っても、アーレントは、本をわざとわかりにくく書いている節もある。 つまり、「唯一の答えはない。全ては、多数性から始まる。それこそが全体主義を避ける」という思想。 ということを踏まえつつも、これで全体を見晴らしてから、原著に進むというのは、お勧めできる。

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