ゲームの王国(上) の商品レビュー
【遊べや遊べ、世に遊べ】ポル・ポト率いるクメール・ルージュがカンボジアに革命の嵐を巻き起こそうとする時代。寒村のロベーブレソンに生まれた神童のムイタックは、同じように類稀なる才能を持つ少女・ソリヤと出会う。2人は忘れがたい思い出を胸に混沌という名のゲームの只中に身を置くことになる...
【遊べや遊べ、世に遊べ】ポル・ポト率いるクメール・ルージュがカンボジアに革命の嵐を巻き起こそうとする時代。寒村のロベーブレソンに生まれた神童のムイタックは、同じように類稀なる才能を持つ少女・ソリヤと出会う。2人は忘れがたい思い出を胸に混沌という名のゲームの只中に身を置くことになるのだが......。歴史小説でもありSF小説でもあるという一風変わった装いを見せる作品です。その著者は、『ユートロニカのこちら側』でハヤカワSFコンテストの大賞を受賞している小川哲。 ゲームというキーワードを軸に縦横無尽かつ緻密に展開される人生航路の物語に惹きこまれました。下巻に入っていきなりとんでもない転調がなされるのですが、その転調に乗れるか否かで本作の評価もガラッと変わってくると思います。 〜このゲームが人生に似ているという点です。真理を手にするためには、敗北を受け入れないといけません〜 久しぶりのSFものでした☆5つ ※本レビューは上下巻を通してのものです。
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すごい緊迫感。登場人物が沢山出てくるが、ポンポン退場していく。終盤でようやく主人公が絞れてくるかんじ。 あと、泥のくだり以外はSF成分少なめ。後編で増すのか?
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カンボジア×SF、掛け合わせて面白くなるか、と疑問視しながら読んだが、大傑作でした。印象的なシーンがいくつもあり、折を見て何度も振り返り、遠いの国の、昔あったかもしれない光景を想像したくなる、名作です。
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38:す、すごいぞこれ……。主に歴史をなぞってるのに、時々とんでもない描写がさらっと挟まって……なにこれ……すごい……。
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読み終わった後、心がボーッとするような、ずっしりとした感覚を味わいました。 日本とは異なる国の過去の物語でありながら、描かれる場面、状況、登場人物の思考、セリフが切実に胸に突き刺さってきて、夢中で読み進めました。 物語の大筋は現実に即した流れですが、例えば「綱引き」や「土を食...
読み終わった後、心がボーッとするような、ずっしりとした感覚を味わいました。 日本とは異なる国の過去の物語でありながら、描かれる場面、状況、登場人物の思考、セリフが切実に胸に突き刺さってきて、夢中で読み進めました。 物語の大筋は現実に即した流れですが、例えば「綱引き」や「土を食べる」くだりなど、フィクショナルな展開も随所にちりばめられており、そのバランスが絶妙で、引き込まれました。 まるで翻訳本を読んでいるような感覚になるのですが、油断したところで日本語らしい表現が出てきたりもして、不思議な読書体験でした。 どのようにしてこの本が書かれたのか、知りたくなりました。 物語の構造として、さまざまな視点から出来事が描かれることで、それぞれの人物の考え方や立場を理解することができるように描かれています。簡単に言うと、ソリヤの思考も、ムイタックの思考も、どちらにも共感ができる。 そのような状態に読者を置いて、下巻で何が語られるのか、とても楽しみです。
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SFというよりノンフィクションものっぽい。特に上巻はポルポト政権成立までとその後を描く歴史小説という感じ。実際の歴史を下敷きにした小説として興味深く面白かった。 ただポル・ポト政権下の描写は結構きつく、登場キャラクターに感情移入すると、それらのキャラクターが理不尽に殺される場面が...
SFというよりノンフィクションものっぽい。特に上巻はポルポト政権成立までとその後を描く歴史小説という感じ。実際の歴史を下敷きにした小説として興味深く面白かった。 ただポル・ポト政権下の描写は結構きつく、登場キャラクターに感情移入すると、それらのキャラクターが理不尽に殺される場面がつらい。 また、呪術などの描写は科学的思考、合理的思考の妨げの背景を描くという点で理解できるが、泥を食べて土地の性質を知るのみならず、土の声を聴き、遂には土に命令をすることができたり、輪ゴムが未来を予知したり、性的衝動が不正の対象を位置までも正確に示したりという部分は、ちょっとついて行けなかった。これは何かのメタファー?何を表しているのだろう?SFなのだから超能力なのか?でも、リアルな歴史を描いている部分と合わない。超能力がある世界なら、圧制にも虐殺にも超能力が有効だよね?。
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1950年代、カンボジアでは圧政が強いられていました。人々は政府から理不尽な仕打ちを受けたり、秘密警察によって不当に逮捕されたりしていました。 その後、ポル・ポト(サロト・サル)率いるクメール・ルージュが革命を起こし、政権を手に入れます。カンボジアは優れた国家になると人々は思っ...
1950年代、カンボジアでは圧政が強いられていました。人々は政府から理不尽な仕打ちを受けたり、秘密警察によって不当に逮捕されたりしていました。 その後、ポル・ポト(サロト・サル)率いるクメール・ルージュが革命を起こし、政権を手に入れます。カンボジアは優れた国家になると人々は思っていましたが、現実は、より圧政が強いられ、“人々は飢え死に、殺され、国土は荒廃し、生活の水準は限界まで下がった(p273)”のでした。 そんな状況のなかで、物語は、ロベーブレソンで生まれた、天賦の智性を持つ少年ムイタックと、ポル・ポトの隠し子とされ、真実を見抜くことができる少女ソリヤを中心として進んでいきます。革命直前に二人が出会い、トランプゲーム、チャンドゥクをする場面が印象的です。 “権力を握った者がすべてのルールを決める(p13)”世界。どうしようもなくて、救いようがなくて、苦しくなる、けれど知っておくべき物語でした。 また、そんな惨状でもずっと暗い物語というわけでもなく、おもしろいところもありました。ロベーブレソンの人々は、輪ゴムと会話できるクワン、土と会話できる泥、その兄で十三年間喋っていない鉄板などみんな個性的で、好きでした。脱糞ナンとクワンが口論になり、「糞問答」と例えたところも笑ってしまいました。
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あの時代のあの国の猥雑さがプンプン匂ってくる。この後、どんな展開を見せるのか、フィクションとノンフィクションがどう絡むのか…。何より「SF」としてどう展開していくのか…。
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現代カンボジアを舞台としたSF小説? 上巻は歴史的事実を背景に、架空の人物たちが受ける弾圧を中心に描かれており、SF小説というより歴史小説と思わせられます。 1970年代のカンボジアについてはリアルタイムのニュースでしか記憶がないのですが、この後に国連が乗り出すことになったと思...
現代カンボジアを舞台としたSF小説? 上巻は歴史的事実を背景に、架空の人物たちが受ける弾圧を中心に描かれており、SF小説というより歴史小説と思わせられます。 1970年代のカンボジアについてはリアルタイムのニュースでしか記憶がないのですが、この後に国連が乗り出すことになったと思います。 この弾圧の緊迫感はものすごく、当時のカンボジアで生きる恐怖を圧倒的なリアリティで感じさせられる、素晴らしい作品と思いました。 それにしても、登場人物たちが死にまくって、最後に残っているのは主人公二人と特殊能力を持った者たちだけではないでしょうか。 ということで、下巻はどのようなSF展開になるのか期待します。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
ポル・ポト時代のカンボジアの話と、カンボジアの近未来の物語。 皆上巻の方が面白いというレビューをよく見るが、SF小説という観点からすれば下巻もかなり面白かったと思う。 上巻は架空の登場人物と実在の歴史上の人物を絡め、当時カンボジアがどんな国であったかをわかりやすく考えさせられる描かれ方で誰しも面白いと感じる構成だろう。 下巻は上巻の登場人物たちが大人になってからを描く近未来の設定で、ポル・ポト政権を批判していた人物が未来で政権を取ろうと動き、ポル・ポト政権と自分がやろうとする政治とのジレンマの物語と、それを批判する人たちがゲームにより世界を変えられるかを提言する物語とが絡み合う話でこれがとても面白い。 テーマとしては本当に面白く、今ではゲームが人の生活に密接に繋がっているので、これが政治を含め世界全体が変わって行く可能性もあるのでは、と思わせられる内容ではないかと思う。 また登場人物たちに特殊能力を持った人たちが多々出てきて、これが全くかっこ良くなくてある意味親近感も湧いて面白かった。
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