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エルサレムのアイヒマン 新版 の商品レビュー

4.4

18件のお客様レビュー

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2021/05/08

quote: まったく思考していないこと、それが彼があの時代の最大の犯罪者の一人になる素因だったのだ。

Posted byブクログ

2021/02/27

思ったのは、それが官僚的組織の宿痾であれば、なにをどうすれば正しいことが行われるようになるんだろうということ。

Posted byブクログ

2021/01/18

カタチ的には一周したが、まだ読めていない。 読んでよかったし、今読んでよかった(若いころだとたぶん、ほとんど、今よりもずっと、この本の意義がわからなかったと思う。いまは、意義があることだけは、すごくわかる) ヒトラー率いるドイツ帝国の、ユダヤ人問題の〈最終的解決=絶滅〉において...

カタチ的には一周したが、まだ読めていない。 読んでよかったし、今読んでよかった(若いころだとたぶん、ほとんど、今よりもずっと、この本の意義がわからなかったと思う。いまは、意義があることだけは、すごくわかる) ヒトラー率いるドイツ帝国の、ユダヤ人問題の〈最終的解決=絶滅〉において、ユダヤ人を殺戮収容所に輸送する任務に着いていた、アドルフ・アイヒマンについて書かれているこの本は、ずっと思っていたように、舌鋒鋭く「陳腐な悪」を断罪するものではなかった。これは裁判記録ーーしかも、不親切なほど注釈が少ないーーである。 「ザ・ニューヨーカー」で連載されたこの報告(レポート)は、エルサレム裁判の法廷のようすからはじまり、主に、裁判で(または裁判の前に)明らかになっている「ユダヤ人の輸送」について、順を追って述べている。 正直なところ、歴史や地理、人名がほとんど分からないので、「本書の大部分には、ユダヤ人の輸送が、各国や地域の状況に応じて進められてきたことが書かれている」ことしか読み取れていないが、これらの部分の、アイヒマンのどちらかといえばつまらない人物像と、「その裁判の場がどのような意味を帯びていたのか」「裁判でなにが裁かれているのか」を語るとき、筆者の思いが強くなっている、気がした。 また、ドイツ帝国のユダヤ人絶滅にかかわる要求に対して、各国が軒並み肯首するなかで、政治的理由からデンマークが、人間的?文化的状況からイタリアが、簡単にユダヤ人の迫害に協力しなかったこと、また、逆に、ルーマニアはドイツより早く、むごい形でユダヤ人を虐殺し、引き際もドイツより早かった、という部分が印象的だった。 たぶん、この本の宣伝文句に取られている、読みどころでもある部分は、「エピローグ」と「追記」だろう。「エピローグ」でアーレントは、けっきょくアイヒマンが何によって裁かれるべきだったのか、その唯一の理由を、判事による仮定の呼びかけの形で語る。また、「追記」では、この本が巻き起こした論争を整理したうえで、この本が扱っている問題について、改めて述べている。 彼女によると、アイヒマンは、かつて例のない、そして、人類の未来に再び起こりうる、起こった時点の法では裁き得ない罪、すなわち「人類に対する罪」によって裁かれるべきである。たとえば、国家の政策としてある民族を追い出すとか、利害関係のある国の人間を大量に殺すとかではなく、その必要がないのに、無意味に、ある民族を地球から殲滅する計画に服従(服従とは支持である)した、というのが、彼の罪であるという。 また、後者について、アーレントは「どの程度までエルサレムの法廷が正義の要求を満たすのに成功したかということ以外には何も語っていない」という。すごく俗っぽく大雑把に、言葉ではなくこの部分から受けた印象を述べるならば、「あることを一般化しすぎたり矮小化しすぎたりするのではなく、ひとつの、この事象のなかに、人間が正義や法を考えるための『なにか』がある」という感覚とか、「それが何なのかという考えを拙速に導こうとしたり、本に書かれていることの一部を取り出して賞賛とか批判とかを加えたりするのではなく、ただ、きちんと事実関係と関連する文脈を追って、ひとのことばやアリモノの思考に頼らず、自分で意味づけすべきだ」という信念とかを、このあたりは述べている気がする。 いずれにせよ、まごうことなき名著だし、この本が世界にある意味とか、人が思考し語り残すことの意味みたいなことをきちんと思ったはじめての本かもしれない。 

Posted byブクログ

2020/02/22

誰もがアイヒマン状態になるのか?自分の出世を考え、自分はユダヤ人の専門家であることを誇りに思っていた。どこで間違った道に進んでいたのか? 単なる歯車ではなかったとアーレントは言う。上からの命令を無視してまでして実行する。 そして結果として六百万を越えるユダヤ人の死者が出る。色...

誰もがアイヒマン状態になるのか?自分の出世を考え、自分はユダヤ人の専門家であることを誇りに思っていた。どこで間違った道に進んでいたのか? 単なる歯車ではなかったとアーレントは言う。上からの命令を無視してまでして実行する。 そして結果として六百万を越えるユダヤ人の死者が出る。色んな国からユダヤ人を鉄道に乗せ移送する、ただこれだけのことをして直接には手を下していない。 また、ユダヤ人の国民国家イスラエルでの裁判でもあった。アイヒマンが生贄となってユダヤ人が連帯感を持ったようにも思える。 本書の大半は報告書になっていて事実関係の羅列になっている。そして、あまり面白くない。最後のエピローグと追記で、考察を行っている。ここがなければ、評価はもっと下がっていただろう。

Posted byブクログ

2020/01/27

ナチスの大量虐殺がどのように生まれたのか、その主犯格の裁判の様子を本にしたもの。 悪の陳腐さの副題通り、ハイヒマンはただヒトラー、ナチスに認めて貰いたかっただけ。 入党の理由として、就職難でたまたま入っただけ。 それが、虐殺の理由。途中から人を殺す感覚が麻痺して来た。 自分で考...

ナチスの大量虐殺がどのように生まれたのか、その主犯格の裁判の様子を本にしたもの。 悪の陳腐さの副題通り、ハイヒマンはただヒトラー、ナチスに認めて貰いたかっただけ。 入党の理由として、就職難でたまたま入っただけ。 それが、虐殺の理由。途中から人を殺す感覚が麻痺して来た。 自分で考えなくなることがいかに危ないか、また人は認められたいという理由でも人を簡単に殺せる。 人の本質的な一面を捉えた本。

Posted byブクログ

2019/11/28

アルゼンチンから拉致したアイヒマンをエルサレムで法廷に引きずり出した、その裁判の話。前代未聞の犯罪と、一方で国際法を無視してのこの裁判という、法哲学的にも深い本。 ヒトラー暗殺計画に携わった人たちは道徳的な問題についてではなく、無謀な戦争でドイツを敗北させてしまうことからヒトラー...

アルゼンチンから拉致したアイヒマンをエルサレムで法廷に引きずり出した、その裁判の話。前代未聞の犯罪と、一方で国際法を無視してのこの裁判という、法哲学的にも深い本。 ヒトラー暗殺計画に携わった人たちは道徳的な問題についてではなく、無謀な戦争でドイツを敗北させてしまうことからヒトラー暗殺を企だてた。アイヒマンもユダヤ人を殺害することそのものには良心の呵責を感じなくなっていて、それは他の多くのドイツ人もそうだったという指摘。ナチに属さない政府高官もヴァンゼー会議で全く反対しなかったことや、ユダヤ人自身が絶滅に協力していたこと。デンマークやイタリア、ブルガリアの抵抗や、反対に過剰に協力したルーマニアやスロヴァキアなど国ごとの違い。そういった話もこの本を読むまで知らなかった。

Posted byブクログ

2018/11/25

ちょうどこの本を読み終わった日の朝刊にポーランドで、ナチスによるユダヤ人のホロコーストに「ポーランド人が加担した」などと記載すること禁ずる(罰則付き)法案が可決されたという報道が。 アーレントが読んだらどう思うだろうか?

Posted byブクログ

2017/12/17

ナチス親衛隊の中佐として、アウシュビッツを始めとする各収容所へのユダヤ人移送責任者として、ホロコーストの最高責任者とされたアドルフ・アイヒマンは、1961年に潜伏先にアルゼンチンでイスラエルの秘密部隊モサドにより捕らえられ、イスラエルでの裁判の結果死刑となる。 「ドイツ万歳。ア...

ナチス親衛隊の中佐として、アウシュビッツを始めとする各収容所へのユダヤ人移送責任者として、ホロコーストの最高責任者とされたアドルフ・アイヒマンは、1961年に潜伏先にアルゼンチンでイスラエルの秘密部隊モサドにより捕らえられ、イスラエルでの裁判の結果死刑となる。 「ドイツ万歳。アルゼンチン万歳。オーストリア万歳。この3つの国は私が最も親しく結びついていた国々です。これからも忘れることはありません。妻、家族、そして友人たちに挨拶を送ります。私は戦争と軍旗の掟に従わなくてはならなかった。覚悟はできています。」と語って絞首台に向かったアイヒマンとこの裁判について、20世紀を代表する政治思想家であるハンナ・アレントがニューヨーカー誌への連載という形でまとめた記録集が本書である。 本書の歴史的な意義は2つある。それは、ホロコーストという人類の歴史における最大の”悪”が、実はアドルフ・アイヒマンという極めて陳腐な人間によってもたらされたという点を明らかにした点である。イスラエルによる裁判で語られたアイヒマンの供述からは、彼が自らの昇進のことしか考えられない(しかし、だからといって社会を欺いたり、巨悪を働くようなずる賢さもない)小役人であるという姿が浮かび上がってくる。 もう一つは、1点目に関連して、いかにナチスという組織が官僚的なメカニズムで組成されており、システマティックにホロコーストがなされたか、ということを示した点である。本書の中でアイヒマンが語ったホロコーストの実態とは、 ・欧州各地で収容所に送られるべきユダヤ人は誰で人数はどの程度か? ・割り当てる収容所をどこにするか? ・収容所へ移送する鉄道のラインとスケジュールは? ・収容所での虐殺の計画と空きキャパシティから、いつ新たなユダヤ人を送り込むべきか? といった極めてオペレーショナルな問題への諸対応であった。さしずめ国際物流を営むオペレーターのような形で、アイヒマンは淡々とそうした問題を片付けていく。そこには自らが悪をなしているという実感はなく、単に官僚制的なシステムが人を動かしているようにも見える。 概念としては理解していた上記のようなポイントが、本書を読むことにより、リアルなものとして伝わってきて、様々なことを考えさせられるProvokingな一冊。

Posted byブクログ