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ヨーロッパの昔話 の商品レビュー

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2024/06/30

 個々の昔話をあつめて紹介する本ではなく、昔話(民話)というものを形式的(著者の語では「様式」)な面から体系的に論じた研究書。多分に抽象的な議論が多く、内容を咀嚼するのだけでも大変骨がおれるが、昔話を読んでいてふと疑問に思ったことなどが、学術的な裏づけをもって解説されているので、...

 個々の昔話をあつめて紹介する本ではなく、昔話(民話)というものを形式的(著者の語では「様式」)な面から体系的に論じた研究書。多分に抽象的な議論が多く、内容を咀嚼するのだけでも大変骨がおれるが、昔話を読んでいてふと疑問に思ったことなどが、学術的な裏づけをもって解説されているので、うなずいてしまうことも多い。体をぶった切られてもくっつけたら元に戻るとか、ちょっと笑ってしまった。  昔話の人物は、伝説とは異なり、個性や内面的深みをもたず、図形的で平面的。また時間の次元をもたないため、成長や老いが描かれない。それに対し、伝説では内面が語られるし、年もとる。抽象度が高い議論が多いが、こうした伝説や聖人伝と比較を行っているところなどは、大変興味深く読めた。  それなりに面白いとは思うけれど、基本的に民話研究者向けで、あまり一般的な本ではない。おそらく訳者の小澤俊夫さん(ちなみに小澤征爾の兄上)の本を読んだほうが理解が早いような気がする。昔読んだような記憶があるが、プロップも再読してみようかな。この著者の「様式」分析は、プロップ流の構造(形態)分析ともまた違うんだよね。ややこしい。

Posted byブクログ