家族のあしあと の商品レビュー
椎名誠が幼少期の思い出を綴った私小説。 岳物語を井上靖氏の「夏草冬濤」になぞらえると、「しろばんば」に該当するような作品。 ふーんとは思えど、別段何があるわけでは無い。 氏と同時期に、氏と同じ千葉県に育った方なら感慨を持って読めそうではあります。
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シーナ隊長が子ども時代を振り返ったもの。幕張に引っ越したあとのことが中心で、「つぐも叔父」など、これまでの著作でなじみのある人たちも登場する。生まれてから数年すごした世田谷時代のことは、記憶をたどったり、身内の方に尋ねてもあまりよくわからなかったようだ。それでも、隊長が自分の父の...
シーナ隊長が子ども時代を振り返ったもの。幕張に引っ越したあとのことが中心で、「つぐも叔父」など、これまでの著作でなじみのある人たちも登場する。生まれてから数年すごした世田谷時代のことは、記憶をたどったり、身内の方に尋ねてもあまりよくわからなかったようだ。それでも、隊長が自分の父のことをまとめて書いているのは初めて読んだ(私の読んだ限り、ではあるけれど。隊長は著作が多いので自信はない)。 父にまつわるエピソードもそうなのだが、どの思い出話にも、喪失感というか無常感というか、失われて帰ってこないものを思う気配が色濃く漂っている。いつもの遊び場であった幕張の海に悪ガキ仲間と出かけていったところ、すでに埋め立てが始まっている様子を目にするところなどに、そのことが顕著に表れている。 海上に組まれた土砂を流すためのパイプの上にまたがり、マコト少年たちはどんどん沖へと向かっていく。今ならそういう所に子どもが近づけることなどあり得ないだろう。お尻に感じる振動に土砂の勢いを思い、さすがの悪ガキたちもちょっと怖そうだ。自分たちが馴染んできたものが、これから大きく変わろうとしている、そしてそれについて自分たちは無力だ。そう言葉にされるわけではないが、そのモヤモヤした気持ちが伝わってくるように思った。 椎名さんは私より十五ほど年上で、とても同世代とは言えない。それでも、子どもの頃の田舎での暮らしぶりを読んでいると、ああ、やっぱり自分は「こっちの側」だなあと思う。いろんなことがきれいでも便利でもなかった時代が、自分の根っこに今もあるという気がする。
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椎名誠氏の私小説というか、子供のころの話。 椎名氏の小説や本ってあまり読んだことがなかった のですが、読みやすく面白い文体でした。 それも含めて岳物語の一連を読んでみたいと 思いました。
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