「西洋」の終わり の商品レビュー
本書はイギリスのビジネス誌「エコノミスト」で長年働き日本支局長も務めたことがある国際的なジャーナリスト、ビル・エモット氏による最新作です。エモット氏の本は過去何冊か拝読しましたが、過去の本と同じく全編通じて読みやすくできています。日本語の題名は「西洋」の終わり、現題は“The F...
本書はイギリスのビジネス誌「エコノミスト」で長年働き日本支局長も務めたことがある国際的なジャーナリスト、ビル・エモット氏による最新作です。エモット氏の本は過去何冊か拝読しましたが、過去の本と同じく全編通じて読みやすくできています。日本語の題名は「西洋」の終わり、現題は“The Fate of the West”(西洋の運命)ということで、第一印象は運命論者的、不可避的な西洋の没落を悲観的に書いた本かと思わせますが、そうではありません。むしろ逆で、不可避な運命というものはない、それを決めるのは人間、特に西側諸国(日本を含む)といわれている国の人々であって、西洋を没落させるかどうかはそれらの内部の人達の行動にかかっている、という趣旨です。 エコノミスト誌で働いていただけあって、全編通じて「開放性」「(機会の)平等」を高らかに信奉している旨が随所に出てきます。また西洋が今後どこに進んでいくかは我々内部の人間の行動いかんである、という点においては最近読んだロバート・ライシュ氏の論調(「最後の資本主義」)とも似通っている気がしました。全体的に興味深く拝読しましたが、1つだけケチをつけるとしたら、エモット氏の本は表面的な記述が多い印象がぬぐえないことです。端的に言えばこの本はエコノミスト誌の記事のロングバージョンという印象で、所詮は記事のレベルであること、そのため深い洞察や分析には基づいていない、という印象をうけました(※実際は違うのかもしれませんがあくまで個人的な印象です)。本書の全編を通じて世界各所で過去に起こったこと、起こっていることの事実羅列が多く、それへの対処方法は「開放性」「平等」だと結論づけられてしまうと、「ああエコノミスト誌の延長だね」という感じになってしまいます。その意味では、「この本は深い」「目を開かされた」といった印象はなく、星4つとさせてもらいました。
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7章 日本という謎 読。 日本の課題は硬直。 今後どう生きるか、世界はどこに向かい、日本はどこに向かうのか。見極める力が欲しい。
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「イギリス」(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国としてのイギリス)の現在位置確認のため再読。ケン·ローチのアンチ·サッチャリズムの精神に照らし合わせながら。
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THE FATE OF THE WEST https://www.nikkeibook.com/item-detail/35737
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いわゆる西洋的価値観の危機が迫っており、トランプの出現でますます危うい状況が強まっている。 現状の分析は非常に的確であり、この本の出版以降の状況もかなり正確に見通している。 惜しむらくは、もう少し西洋的価値観を維持していくための処方箋を具体的に示して欲しかった。
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書名から想像される「文明史的な観点からの西洋の没落」への兆候から未来予測するという本ではない。むしろ現在の国際社会の情勢を詳細に説明しているといってよい。米国のナショナリズムからトランプ政権の誕生などポピュリストの台頭、英国のEU離脱決定、欧州各都市でのテロの発生、ロシヤのウクラ...
書名から想像される「文明史的な観点からの西洋の没落」への兆候から未来予測するという本ではない。むしろ現在の国際社会の情勢を詳細に説明しているといってよい。米国のナショナリズムからトランプ政権の誕生などポピュリストの台頭、英国のEU離脱決定、欧州各都市でのテロの発生、ロシヤのウクライナ・ジョージア介入と孤立化、中国の経済台頭と海洋進出、日本の安倍政権のアベノミクスの期待外れ、世界各国での貧富格差の拡大などを詳細に解き明かす。欧米だけでは解き明かせなくなった社会を説明する一方で、それからの解決策は私の眼には迫力不足だと映った。オバマ前大統領の応援演説が印象に残る。「民主主義は機能している。 しかし、選挙の年だけではなく、その間の月日にもそうであってほしいと、私たちは願っている。」
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「開放性」と「平等」が西洋的理念の核となっている。「平等」で本当に大事なのは、基本的な公民権であり、政治的発言権である。 我々の理念を脅かす敵は、私たちの社会や政治体制内の利益団体の圧力である。
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少々堅い本なので、読むのに骨が折れるが、日本を含む西洋的価値観(自由、平等、民主主義など)の普遍性・重要性を意識しつつ現在の世界情勢を読み解くという点で、面白さもあるし、同時に、我々がいかにあるべきかという視座も提供してくれる。「エコノミスト」誌の元編集長という肩書きが役に立つも...
少々堅い本なので、読むのに骨が折れるが、日本を含む西洋的価値観(自由、平等、民主主義など)の普遍性・重要性を意識しつつ現在の世界情勢を読み解くという点で、面白さもあるし、同時に、我々がいかにあるべきかという視座も提供してくれる。「エコノミスト」誌の元編集長という肩書きが役に立つものかどうかは分からないが、一人の賢人の分析として、また、日本についての記載についても説得力がある。一読で終わりというのではなく、あまり時間を措かずに再読して、様々な分析や提言を再度吟味してみたい。
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