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精霊たちの家(下) の商品レビュー

4.7

11件のお客様レビュー

  1. 5つ

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  2. 4つ

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2024/05/26
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

めちゃめちゃ面白かった……上巻から面白かったのだけど、下巻に入ったら怒涛で全然読むのを止められず、あっという間に読み終わってしまいました。。。。。。。ロスっているので、ペドロ・テルセーロのモデルになったといわれるビクトル・ハラのドキュメンタリーをNetflixで見ようと思います。 この物語の魅力はなんといってもやはり女性たちで、時には自分と重ねながら(?)、時には彼女たちの勇気や行動、それから感情に思いを馳せながら読んでいた。 最後の数章は本当にハラハラしっぱなしだったのだけれど、最後の一文を読んだ時に本当に様々な思いが去来して、涙が出るのを止められなかった。読みだしたのは昨日なのに、彼女たちと一緒に何世代も過ごしていたような気がしていたので、万感の思いが訪れたのだと思う。著者のイサベル・アジェンデが書きだした背景を思うと、この本の中ではペドロ・テルセーロは亡命できているし、アルバも最後は前を向いているのが悲しいけれど彼女の本に込めた希望や前を向いて生きて行こうとするその強さに心を打たれる。 「時々、これはもうすでに経験したことで、これと同じ言葉を書きつけたことがあると感じることがある。けれども、自分はじつは自分ではなく、いつの日か私の役に立つだろうというのでノートに日々の記録をつけてくれたもうひとりの女性なのだということはよくわかっている。人間の記憶というのははかないもので、人生は短く、なにもかもがあっという間に過ぎ去ってしまう。だから私たちは、さまざまな事件を結びつけている関係を読み取ることができず、行為の結果を推し測ることもできないのだ。現在、過去、未来といった時間の虚構を信じているが、この世界においてあらゆる時代の精霊の姿を見ることのできたモラ三姉妹が言っていたように、あらゆることが同時に起こることもありうるのだ、と私は書きつけたし、祖母も同じことを書きつけている…」 この物語自体が著者の、それから弾圧された全ての人々の希望に繋がったのだろうし、これからも希望の灯として光り続けるのだと思う。 彼女たちの名前が、クラーラ(明るい)、ブランカ(白い)、アルバ(夜明け)、そして外国語の同義語の名前を付けられる数多の女の子たちが生きて、生命を紡いでいく限り。

Posted byブクログ

2023/11/16

加速する愛の物語。 ハイメがアマンダを抱きしめて眠るところが好き。みんながアルバを猫可愛がりするところも。じつを言うと僕は宝石泥棒なんだ。 何が幸福かは他者には決められないから、自分で見つけた幸福をそれぞれ大切に守っていく。家族はそれを他人の価値観で判断しないで見守って欲しい。...

加速する愛の物語。 ハイメがアマンダを抱きしめて眠るところが好き。みんながアルバを猫可愛がりするところも。じつを言うと僕は宝石泥棒なんだ。 何が幸福かは他者には決められないから、自分で見つけた幸福をそれぞれ大切に守っていく。家族はそれを他人の価値観で判断しないで見守って欲しい。 家族って難しいよ、って配信のコメントでさらっと流れてきてどきっとしたのもここ最近。 出典がわからなくなっていたけれど、ずっと忘れなかった引用を見つけました。148ページ。 彼女は、この世界を涙の谷と考えてはいなかった。むしろ逆に、神様が冗談半分でお創りになったものだと考えていたので、それを生真面目に受けとるのはばかげたことだとみなしていた。 恐怖政治のくだりが嫌すぎて震えながら読む。ここいらない、、、けどここがないと話が成立しない。姉の死体が解剖されるのを見てクラーラは9年間誰とも口を聞かなかった、があらすじなので騙された。 政治や残虐な話があるなら読まなかったのに。 でも騙されて読んでよかった。 祖国が突然めちゃくちゃになったときの反応がとても独創的。執筆時点で軍事独裁政権が終わっていないというのもすごい。それでもここを描きたかったのはジャーナリストとして避けられなかったからなのかな。と解説を読んで考える。 突然なにが起こるかわからないからあんまり世間に無関心じゃいけない。 クラーラは超能力者だし、不思議な世界が見えるけれど困っている人のために祈ったりしない。フェルラが祈っている横で人を助けるために物理的に助けられるように動き回る。 モラ三姉妹は運命の三女神。人の運命の糸をつむぎ、測り、切る。最後末っ子が現れたのは糸を切る、を司るから。 好きなキャラクターはローサ、クラーラ、ハイメ、アルバ。 上巻でエステーバンドに嫌悪感を抱く表現にも意味があり、最後長生きすることで変化していく人間のしなやかさを見せてくれる。 上巻の出来事には全て意味があり、下巻で回収される。トゥルエバ家のエステーバンに指を切られたガルシア家の子孫がトゥルエバ家の子孫の指を切り、教会の説教で地獄の描写を聞かされた人たちの子孫は現実で地獄を再現する。死体の代わりに詰められた砂は、武器の代わりに詰められた石になる。 細部にこだわり、同じモチーフを繰り返し、国語で習うような文学的価値が高いのは私の読む作家では舞城王太郎とこの人くらい。 でもイサベルが言いたいのは、文学的すごさを見せつけたいんじゃなく、この世は文学のように全てのことに意味があり回収されていく、恨みや憎しみを繰り返すけれど、それに振り回されるのではなく、それを知った上で自分の頭で考えましょう。 それが本当の自由だし、なまじ力で物事を解決できる男の人には難しいけれど、彼らは振り回されていることにすら気付かず、半ば眠ったように一生を終えるのだ、女性のもつ魔術的力と柔軟さをもってすればできるんじゃない?ってことだと思いました。 いやむしろ男とか女とか関係なく、祖国で苦しんでいる人、平和だと思って生活している人たちみんなに、苦しいだろうけれど憎しみの連鎖を断ち切る方法を考えましょう。そもそも植民地支配の名残のある南米の抱える矛盾、憎しみの記憶にあなたならどうやって折り合いをつける?という問いかけなのかもしれない。 と言う意味では途中で挫折した百年の孤独よりこちらのほうがずっと好き。始めから夢中で読めたし。クラーラが生きてた時が1番よかった。 そして解説でもどこでもガルシア•マルケスと比較してるけど、どちらかというとパウロ•コエーリョとかピエール•マッコルランを彷彿とさせられました。

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2022/10/23
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

作者は明確にしていないが、おそらくチリの軍事政治下で行われた身の毛もよだつ出来事に対して、これも南米の歴史風土の中の一つですよ、と悟ったような書き方に、この国に生きる人々の、運命を受け入れているある種の強さや儚さを感じた。

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2021/07/21

最後の20ページで評価がガラリと変わった物語。 読了後は昔中学校で習った魯迅の故郷に近い感覚。 ピノチェト独裁政権時のチリの混乱ぶりが窺える。合法的な手段で政権を握った共産主義勢力の増長を防ごうと国軍が軍事クーデターを起こし、そのまま軍が独裁者となってしまう……という、全然フィク...

最後の20ページで評価がガラリと変わった物語。 読了後は昔中学校で習った魯迅の故郷に近い感覚。 ピノチェト独裁政権時のチリの混乱ぶりが窺える。合法的な手段で政権を握った共産主義勢力の増長を防ごうと国軍が軍事クーデターを起こし、そのまま軍が独裁者となってしまう……という、全然フィクションと感じないような話。本作は精霊とか超能力とか予知とかオカルト的なものが度々登場するが、前述した絶望的な歴史を中和する作用があるようにおもえる。この小説はノンフィクションというジャンルではないが、このようなオカルト的なものが登場することによってかえって、描かれてある地主と農民の関係であったり、歴史であったりがノンフィクションのように思えて仕方がない。 上下合わせて約800ページと長く、序盤中盤は正直言ってグダグダな話の進み方で中々ページを進めることができないでいたが、終盤(特に選挙が始まったあたり)から夢中になって読んでしまった。この本は全人類に勧めたい。

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2020/12/12

現実が幻想的に見えたり、現実そのものに見えたりして語られる一族の物語。そう考えるなら百年の孤独に似ている。 幻覚を見て、精神を病む傾向のある一族の出である妻は、娘から見ると聖霊と語り合い未来を見通す母でもある。現実と向き合う力が薄いからこそ恐怖もなく、また偏見にもとらわれない母は...

現実が幻想的に見えたり、現実そのものに見えたりして語られる一族の物語。そう考えるなら百年の孤独に似ている。 幻覚を見て、精神を病む傾向のある一族の出である妻は、娘から見ると聖霊と語り合い未来を見通す母でもある。現実と向き合う力が薄いからこそ恐怖もなく、また偏見にもとらわれない母は、独特な魅力を持って家族や社会の中に存在する。 心を病むということが、どんなことなのか、悪いことばかりではない事が感じられる。とはいえ、母には苦しみも多くあり、思う通りに生きているわけでもない。 旧来の差別的な考えに満ちた父が財産を築くが、社会の変化、母の死とともに一族は力を失い、屋敷は荒れ果てていく。南米の上流階級の話だけれど、家族が直面する愛情、苦悩、失望や失敗の数々は普遍的な物語になっている。

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2017/11/09

大雑把に把握すると、女性三代記にして男性一代記(夫として父として祖父として)。 女性はみな個性的。 彼女らの性格は生まれつきのものに加え、育った時代の雰囲気の現れにもなっている。 グラデーションとしては、牧歌的→政治的。夢→悪夢。 三代の女性に対して背骨としてエステーバンがいるが...

大雑把に把握すると、女性三代記にして男性一代記(夫として父として祖父として)。 女性はみな個性的。 彼女らの性格は生まれつきのものに加え、育った時代の雰囲気の現れにもなっている。 グラデーションとしては、牧歌的→政治的。夢→悪夢。 三代の女性に対して背骨としてエステーバンがいるが、彼は夫として父として祖父として活躍呻吟する。 もう少し詳しく把握すると、 1-4章  ……マジカルで牧歌的な生活。クラーラとエステーバンの世代。 5-10章  ……身分違いの恋愛と社会主義。ブランカ、ペドロ・テルセーロ、ハイメとニコラスの双子、アマンダの時代。 11ー14章・エピローグ  ……リアリスティックに展開する軍事クーデターと独裁。政治的惨劇。アルバ、ミゲルの時代。エステーバンは老いる。 場所としては、 首都。お屋敷町にある「角の邸宅(おやしき)」。 南部ラス・トレス・マリーアスの農場。 を行き来する。 時代としては、 資本主義→数年間、社会主義の大統領(ただし共産主義的独裁ではない)→軍部の独裁(独裁は一時のことだろうと資本家ははじめは楽観) wikipedieによれば、 「チリ・クーデター(スペイン語: Golpe de Estado Chileno)とは、1973年9月11日に、チリの首都サンティアゴ・デ・チレで発生したクーデターのこと。世界で初めて自由選挙によって合法的に選出された社会主義政権を、チリ軍が武力で覆した事件として有名である。」→ピノチェト独裁政権。 連想できるのは、「百年の孤独」「嵐が丘」「赤朽葉家の伝説」。 エステーバンには「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」のダニエル・デイ・ルイスをイメージしたりした。 一冊で三色。大満足。

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2017/10/01

ガルシア=マルケスの「百年の孤独」との類似性を指摘する声が多いというが,それは間違いだと思う.確かに南米を舞台にして三世代におよぶ大河小説で,エキセントリックな登場人物達に加えて精霊が出てくると聞けば,そのような連想があっても不思議ではないが,この本はチリのピノチェトのクーデター...

ガルシア=マルケスの「百年の孤独」との類似性を指摘する声が多いというが,それは間違いだと思う.確かに南米を舞台にして三世代におよぶ大河小説で,エキセントリックな登場人物達に加えて精霊が出てくると聞けば,そのような連想があっても不思議ではないが,この本はチリのピノチェトのクーデターによって死んだアジェンデ大統領の親族であるイザベル=アジェンデが,恐らく自らの体験に,肉付けして書き上げた悲劇であり,また現実である.少なくともジャングルのような息苦しさは感じない(これはもちろん舞台がジャングルではない,という単純な違いではない).前半のフワフワしたような捕らえどころのない奇譚の連なりは実は単なる前振りで,すべて最後の惨事に向かって疾走してゆく.「百年の孤独」とは全く違ったベクトルで傑作である.

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2017/08/25

精霊の時代から暴力の時代まで、百年を記したラテンアメリカの女性三代記。 アジェンデはこれをどのような気持ちで書いたのだろう。 幼少時代の懐古、祖国への郷愁、 圧制への抵抗、復讐心の解放? それら様々な感情・出来事が、登場人物たちに注がれ、 繋ぎ、交差し、引き継がれ、編まれてい...

精霊の時代から暴力の時代まで、百年を記したラテンアメリカの女性三代記。 アジェンデはこれをどのような気持ちで書いたのだろう。 幼少時代の懐古、祖国への郷愁、 圧制への抵抗、復讐心の解放? それら様々な感情・出来事が、登場人物たちに注がれ、 繋ぎ、交差し、引き継がれ、編まれていく因果の織物。 物語の力にただただ圧倒される。

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2017/07/25

ちょっとね、受け止め切れないくらい、どっしりと重い。 歴史は、代から代、口から口へと伝わるごとに重量が増していくね。 特にこの(下)に入ると、濃くてつらくて濃くて。途中で、泣きながら「ミゲル!」と叫んでしまいそうに。 「精霊たちの家」は、マルケスの「百年の孤独」と比べられた...

ちょっとね、受け止め切れないくらい、どっしりと重い。 歴史は、代から代、口から口へと伝わるごとに重量が増していくね。 特にこの(下)に入ると、濃くてつらくて濃くて。途中で、泣きながら「ミゲル!」と叫んでしまいそうに。 「精霊たちの家」は、マルケスの「百年の孤独」と比べられたり模倣と言われたりするようだけれど、「百年の孤独」とはまた違う感触で、もっと生々しいと思う。。。

Posted byブクログ

2017/07/24

上下巻纏めて。 南米文学独特のスケールと想像力に圧倒される。三代に渡る物語をじっくり読むのは楽しかった。 帯にも巻末の解説にも『百年の孤独』が挙げられており、確かに共通点があるのだが、私としてはこちらの方が好みだった。

Posted byブクログ