アルカイダから古文書を守った図書館員 の商品レビュー
マリの都市トンブクトゥを中心に、イスラム過激派と世界の闘争を描いた作品である。図書館員ハイダラの半生を描きながらテロの悲惨さ、残忍さを伝える構成になっている。本書の一部ではイスラム教の「俗っぽさ」を垣間見ることができる。具体的には、「夫が自らの陰茎を強くして性交を楽しみたければ、...
マリの都市トンブクトゥを中心に、イスラム過激派と世界の闘争を描いた作品である。図書館員ハイダラの半生を描きながらテロの悲惨さ、残忍さを伝える構成になっている。本書の一部ではイスラム教の「俗っぽさ」を垣間見ることができる。具体的には、「夫が自らの陰茎を強くして性交を楽しみたければ、次のコーランの一説を誦すること。(以下略 ; P34)」と、厳格なイメージがあったイスラム教の書物にそんな下品な記載があるなんてと驚いた。この事実を知ることができたのもひとえにハイダラが古文書を守ってくれたおかげであろう。
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前半の古文書を収集するパートがおもしろかった。 中盤は原理主義がどのように台頭していったかをかなり詳しく記載。彼らの残虐性に慄いた。 人間の生来持っているだろうこの性質を制御するために知性が必要と感じた。(「蝿の王」を読んだばかりでして。)考えることをやめたら、簡単にそちら側に落...
前半の古文書を収集するパートがおもしろかった。 中盤は原理主義がどのように台頭していったかをかなり詳しく記載。彼らの残虐性に慄いた。 人間の生来持っているだろうこの性質を制御するために知性が必要と感じた。(「蝿の王」を読んだばかりでして。)考えることをやめたら、簡単にそちら側に落ちる。 ヨーロッパの写本は何度か見たことがあるが、アフリカの古文書も見てみたい。レプリカでもいいので。 いろんな地域の本の歴史を知りたくなった。
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マリ・トンブクトゥの古文書収集の歴史と、2012-13年ころのテロリストによるトンブクトゥ占拠の話。北アフリカでこんなテロ状態があったのか。フランス軍の介入で占拠自体は解除されたが未だ危険度は高いらしい。 砂漠のフェスティバル(音楽フェス)興味ある。
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イスラムの歴史の深い多様な文化に思いを馳せ、美しい装飾が施された古文書の数々を想像し、イスラム過激派の非道な行いに怒りそして恐怖し、危機が迫る古文書の脱出作戦の行方に手に汗握り、市民たちの勇気に感じ入る。一文で説明するとそんな一冊かなあ。 古文書の美しさや、内容の深遠さにこの話...
イスラムの歴史の深い多様な文化に思いを馳せ、美しい装飾が施された古文書の数々を想像し、イスラム過激派の非道な行いに怒りそして恐怖し、危機が迫る古文書の脱出作戦の行方に手に汗握り、市民たちの勇気に感じ入る。一文で説明するとそんな一冊かなあ。 古文書の美しさや、内容の深遠さにこの話の中心人物となるハイダラが魅了されて、長く危険な旅も厭わなくなっていく様子が読んでいて面白い。なんと言っても、古文書の描写が美しいのです。それを読んでいると、当初は自身の仕事を渋っていたハイダラが、一種の鬼コレクターのようになっていくのもなんとなく分かるような気がします。そして様々な土地をめぐり、時に困難な交渉も乗り越えて、古文書を集めていく様子も読み応えがあります。 そうして集められた古文書は、世界的にも価値が認められ、欧米からの援助もあり貴重な古文書を集めた図書館が、マリ共和国のトンブクトゥという街に作られていきます。しかし一方でイスラム過激派の影が徐々に迫ってきていて…… タイトルや本の内容紹介を見た感じでは、このハイダラの活躍が中心なのかと思っていたのですが、イスラム過激派の勃興や、それに対するマリ共和国などの軍の動きなんかもしっかりと書かれています。読んでいてキツかったのは、この過激派が街を占領し市民たちを支配下に置くところ。 イスラム国が全盛期を迎えたころ、様々な報道で彼らの残虐さは目にしましたが、この本を読むと改めてそれが事実だということが感じられます。というより、イスラム国前から、そんなことが普通に行われていた、ということ。そしてそれを知らなかったことに、気づかされました。それにしてもどんなふうに宗教を曲解したらそうなるのか、本当に理解出来ない…… そして、イスラム教の教えに反するとして、市民たちの生活、さらには文化にもアルカイダは魔手を伸ばします。それは古文書も例外とは言えず…… 結局のところこの話は何だったのか、と聞かれたら自分は「人々の勇気と文化や伝統への誇りの話」と答えます。鞭打ちだけでなく、残酷な処刑をもって支配を強める過激派集団に対し、抵抗する市民たち。そして、古文書を守るため危険を顧みず、古文書の脱出作戦を遂行したハイダラをはじめとした人々。 彼らの姿は真の勇気とは、守り誇るべきものとは何なのか。理不尽な暴力に対しても負けない人々の強さ、そして守るべき文化と伝統の存在を、確かに証明してくれているように思えるのです。 古文書の多くは難を逃れ、マリ共和国を支配していた過激派はフランス軍の攻撃を受け大幅に弱体化しました。しかし一方で、治安状態はいまだ良くないらしく、外務省が提供している海外安全ホームペーシのマリ共和国の危険レベルは、2020年1月現在、地域によって差はあるもののほとんどがレベル4(待避勧告)となっています。 本の中で、festival in the desertというイベントが紹介されています。マリ共和国で行われていた伝統的な音楽祭なのですが、それもwikipediaを見ていると2013年以降延期され続けているそう。この音楽祭が再び開催され、古文書が元の場所に戻る日は、まだ当分訪れないのかもしれません。 それでも、この本の中で描かれた人々の勇気と文化と伝統の強さはきっと生き続けるのだろうと思います。そしていつか、このイベントも古文書も、元のあるべき姿に戻る日がきっとくることも、この本のおかげで信じられるのです。
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大変に面白かった。西アフリカ・マリのトンプクトゥは太古から続く学術都市で、様々な分野の学術書が各家庭で保存されてきたのだが、アルカイダが都市を制圧し古文書が燃やされ始めてしまう。いつだって独裁を目論む者の敵は知性なのだな。古文書の価値を十二分に理解した人々が、時に命までも危険にさ...
大変に面白かった。西アフリカ・マリのトンプクトゥは太古から続く学術都市で、様々な分野の学術書が各家庭で保存されてきたのだが、アルカイダが都市を制圧し古文書が燃やされ始めてしまう。いつだって独裁を目論む者の敵は知性なのだな。古文書の価値を十二分に理解した人々が、時に命までも危険にさらしながら、先祖から受け継いできた膨大で尊い学問を守り抜く姿に感銘を受ける。 また、テロリストにやられっぱなしではなく、時に強く立ち向かう市井の人たちが素晴らしい。普通の魚屋のおばちゃんが面と向かってアルカイダに反抗したりするのだ。 知識と学問は偉大な財産だ。
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本を命がけで守った人たちの知恵と勇気と熱い魂。 数年前、日本人の犠牲者も出たアルジェリアのテロ事件の経緯も、 この本を読んだらわかりました。
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イスラム教というのは本来、寛容で豊かな文化を生み出す土壌の ある宗教なのだと思っている。しかし、いわゆるイスラム過激派 と呼称される集団には寛容な思想などなく、異なる宗教の文化遺産 や知的財産を目の敵にし、破壊の限りを尽くす。 バーミヤンの仏像は爆破された。バビロンの遺...
イスラム教というのは本来、寛容で豊かな文化を生み出す土壌の ある宗教なのだと思っている。しかし、いわゆるイスラム過激派 と呼称される集団には寛容な思想などなく、異なる宗教の文化遺産 や知的財産を目の敵にし、破壊の限りを尽くす。 バーミヤンの仏像は爆破された。バビロンの遺跡、モスル博物館も モスル大学図書館も被害に遭った。 本書は西アフリカに位置するマリ共和国で、世界遺産都市トンブクトゥ を占拠した「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ」から、代々受け継が れてきた古文書を守った男の話である。 マリと言えばその昔のマリ帝国の頃。マンサ・ムーサ王が巡礼の際に 金の延べ棒を配りまくって、一時、金相場が暴落した話が好き。さす が史上最高のお金持ちである。 知的遺産を、文化を守ろうとするのに地域も宗教も関係ないんだよな。 特に古文書なんて、焚書にされてしまったら同じものを入手できる 可能性は非常に少ないのだもの。 古文書をいかに守るかの過程にもハラハラしたが、マリがいかにして 「古の学術都市」になったか、各家庭や部族が隠し、保存し続けて来た 古文書を研究の為にどのように集約したかも興味深いし、イスラム過激 派の容赦ない残忍さも克明に描かれている。 残念ながら守り切れなかった古文書もある。イスラム過激派はトンブク トゥから撤退するのに際し、最後っ屁のように約4000冊の古文書を灰 にしている。 それでも37万冊以上の古文書は避難大作戦の途中で損傷や紛失すること もなく、アルカイダの魔の手から逃れた。 そこには古文書に魅せられたひとりの人間の必死の思いがあったし、 それに応えて資金提供をした各国の財団の協力もあった。 尚、このマリの古文書の修復には日本の紙が使用されているそうだ。 遠い、遠い西アフリカと日本にこんな縁があるなんて知らなかった。 貴重な図書を焚書にするばかりか、聖廟やモスクまで破壊するイスラム 過激派には本当に腹が立つわ。寛容であってこそ、イスラムじゃないの かしらね。
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※このレビューにはネタバレを含みます
主人公のアブデル・カデル・ハイダラはマリ共和国・トンブクトゥの名家の出身。そして、ハイダラの一族は二ジュール川中流に定住する多数派民族の一つ、ソンガイ族の出である。皆がばらばらに守って来た古文書を集め、世界中の国際機関に働きかけて援助を引き出し、図書館や研究所を設立。 ヒュームもヘーゲルもカントも文化的不毛の地とみなしたアフリカに眠る、美しくも貴重な古文書。そしてその後もテロリストの脅威に曝され続ける土地で、その運動は広がる。しかし、彼らの願い➖イスラム教が平和で寛容な宗教であることを世に示したい➖はいよいよ困難の度合いを増しつつある。 AQIMのマリ北部支配に旧宗主国フランスが軍事介入するくだりで、イギリス他の国々の「対アメリカ」配慮みたいなのがあまりないのが印象的。とは言え、現地では、「ミッテランのルワンダ介入」や「サルコジのリビア介入」がチラつくのか、意外に歓迎されないのも国際情勢が一筋縄ではいかない所。
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マリのトンブクトゥ周辺で保存されていた、アフリカの古文書の物語です。 アフリカに文化は存在しないと西欧には判断されていましたが、古には大学や図書館がありました。 宗教と科学が相互に作用し、文化的な栄光の時代がありました。 しかし、西欧の支配により停滞を余儀なくされます。 時代が進...
マリのトンブクトゥ周辺で保存されていた、アフリカの古文書の物語です。 アフリカに文化は存在しないと西欧には判断されていましたが、古には大学や図書館がありました。 宗教と科学が相互に作用し、文化的な栄光の時代がありました。 しかし、西欧の支配により停滞を余儀なくされます。 時代が進み、イスラム過激派が支配者となることで、状況は更に悪化することになりました。 図書館員の活動というよりは、イスラム過激派による文化破壊についての詳細が大半を占めている印象を受けました。 マリの全体的な波乱に焦点が当てられ、一部の例として図書館が含まれています。
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