アルカイダから古文書を守った図書館員 の商品レビュー
本書のタイトルから想像したのは、アラブのどこかの地域に残された古文書を、アルカイダの目を盗んでどこかへ出国させるか、隠し通した勇敢な図書館員。 当然、内容は冒険もののテイストが香るノンフィクションというもの。 たしかに、内容のなかの一部は想像の通りだった。 しかし、それは本書の...
本書のタイトルから想像したのは、アラブのどこかの地域に残された古文書を、アルカイダの目を盗んでどこかへ出国させるか、隠し通した勇敢な図書館員。 当然、内容は冒険もののテイストが香るノンフィクションというもの。 たしかに、内容のなかの一部は想像の通りだった。 しかし、それは本書の内容の一部であり、すべてではなかった。 そもそも舞台となったのは、お馴染みのペルシャ帝国等ではなくアフリカの「マリ」 アフリカは未開の地で、アメリカに奴隷として黒人が送り出された非文明国.....なんかではなかった。 勇敢な図書館員が守ったのは、アメリカが独立するよりずっと以前から、大学都市として繁栄してきたトンブクトゥに秘蔵されてきた、太古からの英知の記録。 それは、そもそもきれいな「図書館」に収蔵されいた文書ではなく、部族、あるいか家族の中で秘匿されてきた遺産。 本書は、そんなアフリカの古文書の歴史から保存状態。そしてこの図書館員がどうやってその古文書とかかわるようになり、また、図書館資料として整理し人類の遺産として形にしていったかというところに丹念にページを割いている。 さらに、やっと資料として整いつつあるときに、アルカイダが恐怖を伴ってトンブクトゥに君臨するようになる。 人類の遺産を偶像崇拝や退廃、異端の象徴として破壊し、燃やし尽くしてしまう極端なイスラム原理主義的テロリストたち。 かれらから、人類の遺産を守るために、立ち向かった多くの人々、そして、その戦いに資金を援助した多くの国や財団たち。 それら、すべてを描きながらも、本書のタイトルを冒険活劇のように魅せる編集者。さすがです。 本一冊丸ごと、勉強にもなるし、それなりの緊迫感も味わえる。 久しぶりに面白いノンフィクション作品を読みました。
Posted by
まず,アフリカのマリ共和國のトンプクトゥの歴史を知ってそのすばらしさに驚く.またその辺りにはたくさんの書物が残されていて白蟻や湿気などのため,失われようとしていた.その本達を守って後世に伝えることに一生を捧げた人達がいる.命をかけての本の運搬,イスラム原理主義者達や政府軍との駆け...
まず,アフリカのマリ共和國のトンプクトゥの歴史を知ってそのすばらしさに驚く.またその辺りにはたくさんの書物が残されていて白蟻や湿気などのため,失われようとしていた.その本達を守って後世に伝えることに一生を捧げた人達がいる.命をかけての本の運搬,イスラム原理主義者達や政府軍との駆け引き,手に汗握りました.また,テロリスト達による戦闘やしだいに彼らに感化されていく人々、その仕組みも.とてもわかりやすく説明されていて興味深かったです.
Posted by
彼の地で古文書を守るための大作戦が展開していた頃、日本は東日本大震災発生前後の時期に当たる。 おそらく震災発生前はそれなりに、彼の地の不安定さなどの報道もあったはず。だが、震災後は、自国のことで精一杯で報道があったとしても、かき消されるような表現だったのではなかろうか。 これが良...
彼の地で古文書を守るための大作戦が展開していた頃、日本は東日本大震災発生前後の時期に当たる。 おそらく震災発生前はそれなりに、彼の地の不安定さなどの報道もあったはず。だが、震災後は、自国のことで精一杯で報道があったとしても、かき消されるような表現だったのではなかろうか。 これが良しにつけ悪しきにつけ日本が島国所以のことと思われる。 歴史遺産の発掘整備から避難まで、その背景にある文化と歴史と世界をも巻き込んでいる過激派の動きまで、丁寧にわかりやすくまとめられている。
Posted by
- 1
- 2