セレンゲティ・ルール の商品レビュー
「生物多様性」がわからない。どの本も「生物多様性は善である」が前提で話が始まる。なぜ「生物多様性が善なのか」を知りたいのに。そのためぼくは外来魚が殺される理由がわからない。パンダは保護されるのに、絶滅に瀕しているみのむしが無視されるのはなぜだろう。ゴキブリを殺すなという主張を聞い...
「生物多様性」がわからない。どの本も「生物多様性は善である」が前提で話が始まる。なぜ「生物多様性が善なのか」を知りたいのに。そのためぼくは外来魚が殺される理由がわからない。パンダは保護されるのに、絶滅に瀕しているみのむしが無視されるのはなぜだろう。ゴキブリを殺すなという主張を聞いたことがない。 読みはじめてすぐに、あ、これはアタリかも、と思った。話はいったんセレンゲティから離れて、生物学、医学の分野に。生命にとってバランスと調整の機能がいかに大切かを解く。癌も調整の病だという。わかりやすく、読みやすい。翻訳書にありがちなもったいぶったところも、回りくどいところもない。説得力は半端ない。 で、満を持して、自然界でもバランスと調整が大事、という議論が展開される。それがセレンゲティルール。生態系のバランスが崩れたことで起きるトラブルもいくつか紹介される。が、ここには飛躍があると思う。生命体のバランスと、自然界のバランスはイコールではない。生命体はバランスを崩すと死んでしまう。死んでしまう=NGに決まっているが、自然界にとってのNGとは何なのだろう? ブラックバスが増えて、在来魚が減るのはNG? それは単にブラックバスの側に立つか、在来魚の味方をするかの違いでは? オランウータンの立場からすれば、人間はもう少し減らしたほうがいいのでは? だとしたら人間の駆除は良いことなのか? イエローストーンでは一度絶滅したオオカミを再導入したそうだ。その結果は本書に紹介されているが、家畜を襲うからと駆除されたオオカミが戻ってくることでデメリットだって当然あったはずだ。そこが簡単にスルーされているのがどうもモヤモヤする。 で、結局モヤモヤが完全に晴れることはないのだった。
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読了。サバンナにおける食物連鎖から細胞の中のアミノ酸まで、自然界は抑制の抑制による調整で成り立っているという話。といっても難しい話ではなく、主に調査や実験のエピソードで構成されており、興味深く読んでるうちにスッと読み終わってしまった。二十世紀初頭の歴史的なエピソードから始まるが、...
読了。サバンナにおける食物連鎖から細胞の中のアミノ酸まで、自然界は抑制の抑制による調整で成り立っているという話。といっても難しい話ではなく、主に調査や実験のエピソードで構成されており、興味深く読んでるうちにスッと読み終わってしまった。二十世紀初頭の歴史的なエピソードから始まるが、最後は十数年前に始まって現在も継続中のプロジェクトまで扱っており、リアルタイムで起きていることだということに感銘を受けた。あと、装丁が全然凝ってなくて力が入ってないのがよかった。
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生命、生態系の調節機構に関して、読みやすく解説している。 サバンナにおける動物個体数の増減がいかに調節されているのか、このことを、生命現象における酵素の調節と照合し、展開していく論が興味深い。 全体に、難解な記述は無く、平易な表現が多い。図表、写真の挿入も豊富で、あっという間...
生命、生態系の調節機構に関して、読みやすく解説している。 サバンナにおける動物個体数の増減がいかに調節されているのか、このことを、生命現象における酵素の調節と照合し、展開していく論が興味深い。 全体に、難解な記述は無く、平易な表現が多い。図表、写真の挿入も豊富で、あっという間に読み進んでしまった。 展開も妙である。生理学者の従軍記録に始まり、国立公園における生態系の回復過程につなげていく、道筋に魅了された。 何かの新聞の書評で見つけ、すぐに書店で求めた。読めて良かったと心から言える良著である。
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生物学者ショーン・B.キャロル氏の著書。自然界の個体調節機能が、生物の体の中でも起こっているというお話し。 自然界では食物連鎖の頂点に立つ捕食者が、生態系全体の個体数を調整しているらしい。ある科学者が岩場からヒトデを取り除くという大胆な実験を行ったところ、ヒトデが餌にしていた貝...
生物学者ショーン・B.キャロル氏の著書。自然界の個体調節機能が、生物の体の中でも起こっているというお話し。 自然界では食物連鎖の頂点に立つ捕食者が、生態系全体の個体数を調整しているらしい。ある科学者が岩場からヒトデを取り除くという大胆な実験を行ったところ、ヒトデが餌にしていた貝が大繁殖し、周辺の海藻をすべて食い荒らしてしまったそうだ。ちなみにこのエピソードは『捕食者なき世界』でも紹介されている。 実は非常に似たような調整機能が人間の体内でも行われており、血糖値や血圧のバランスを上手に保っていたのだ。このメカニズムの解明に尽力した人々のおかげで、今では病気となる因子に直接働きかける治療が可能となり、人間は自然の調節機能から逃れる唯一の「完全な生物」となりつつある。 しかしこの調整機能を克服した結果、ここ数百年間で人口は爆発的に増えてしまった。もし今のペースで増え続けるならば、きっと地球は海藻を食い尽くされた岩場のような世界となってしまう事だろう。 人類はその知恵をフルに活用して、大規模な伝染病を絶滅したり野生動物を守ってきた訳だが、人口爆発というパンデミックをセルフコントロールできるのだろうか。今晩のディナーにしか関心がない、タイタニック号の乗客のようにならないためにも、もっと自分たちの針路に注意を払うべきなのかもしれない、自然が大胆な調節を行う前に。
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体内のホルモンやpHといったミクロの調節、そして、生態系における各種生物種の生息数といったマクロの調節。これらが幾つかの似たようなルールに基づいているという内容。これを示すために、生物学と生態学の様々なエピソードが盛り込まれていて、それぞれが中々に面白い。
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[関連リンク] 分子から生態系にまで作用する普遍的なルール『セレンゲティ・ルール――生命はいかに調節されるか』 - 基本読書: http://huyukiitoichi.hatenadiary.jp/entry/2017/07/10/080000
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