セレンゲティ・ルール の商品レビュー
「生物の数はどのようにして調節されているのか?」 この問いに対して、著者がセレンゲティ国立公園での観察を通して得た生態系の調節のルール、セレンゲティ・ルールについて解説されている。 体内の分子レベルの調節と同じように、生態系も調節されているというものだ。 生物は食物が増えれば増...
「生物の数はどのようにして調節されているのか?」 この問いに対して、著者がセレンゲティ国立公園での観察を通して得た生態系の調節のルール、セレンゲティ・ルールについて解説されている。 体内の分子レベルの調節と同じように、生態系も調節されているというものだ。 生物は食物が増えれば増加し、減れば減少する。 また、捕食者が多いと食べられる側の生物は減少し、捕食者がいなくなれば増加する。 そういう食物連鎖の中では、敵の敵は味方で、天敵の天敵がいることで、自身が恩恵を受けていたりする。反対に、例えば、殺虫剤が稲を食べる虫の天敵となるクモなど殺してしまうことで、殺虫剤の使用の結果として、稲が大きな被害を受けることもある。 順調に増えていても、群れの中の個体数が増え、密度が高くなると増加が緩やかになる生物もいる。 生態系のルールが破られると大きな被害がでるが、そういった生態系のルールを知ることが、生態系を癒すことにつながると筆者は訴える。 ところで、本書の内容と直接関係があるわけでもないが、日本の出生率の低さは、密度が増えると増加が緩やかになるという、当たり前の生態系のルールに則った出来事なのではないかと思った。 日本の人口密度は世界的にも高い。
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分子や細胞の数を調整するルールがあるように、一定の区域で生息可能な動植物の種類や個体数を調整するルールが存在する=セレンゲティルール。セレンゲティ国立公園の観察から。 生命とは食物である。=食物連鎖からくる定理。 大きな魚>小さな魚>水生の昆虫>植物や泥。 大きな鳥は小さな穀粒を食べることができない。 一つの丘に二頭のトラは共存できない。 共通の資源を求めて競い合う生物種がいて、他の過剰な生物種を調節する。 動物の身体サイズによって、小型の動物は捕食者によって、大型の動物は食物供給によって、調節を受ける。 食べられずに多く食べる方法=移動すること。水牛6万頭に対して、ヌー100万頭。ヌーは、定住する群れと移動する群れがいる。定住する群れは87%が補食で死ぬ。移動する群れは25%が補食で死ぬ。 ライオンやハイエナは、子供を育てるため広範囲を移動できない。 移動性のヌー、シマウマ、トムソンガゼルは、異動によって優位性がある。 移動は、個体数を優位に保つ。 地球の生産能力の150%を人間は消費している。 捕食者が草食動物の数を調整する。補色の対象になる動物もならない動物にも影響を与える。 キーストーンの動物が存在する。食物連鎖の地位ではなく影響力が大きい。増えても減っても他の種に影響を及ぼす。 共通の資源を求める生物種が存在し、片方の増減はもう一方の増減に影響を及ぼす。 身体サイズは、調整の様態に影響を及ぼす。獲物を捕らえる能力で上限が、自己のニーズを満たせるか、で下限が決まる。 密度依存要因によって個体数が調整される。 移動は捕食される確率が低くなる。ライオンやハイエナは縄張りから離れられないから。移動は個体数を増加させる。 正の調節=捕食者によって制限される 負の調節=捕食者の競合で捕食者の数が制限される 二重否定論理=種の増減は、捕食関係がない種にも影響する フィードバック調節=密度依存によって個体数が制限される。
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読み進めるのに時間が掛かった本。 しかし、難しい話が書かれている訳ではない。どちらかと言えば、とても興味深く、ある種楽しく、文化系でも読める理科系の本。 それが為に凡庸な自分の脳味噌が、スパークする箇所が随所にあった。 著者は進化生物学という分野の専門家であり、本のタイトルは野生の王国であるアフリカの保護地区の名前。自ずと動物の話かと思いきや、医学の分野から始まり、薬学、生物学へと変遷。生態系の破壊から再生までの実例を教えてくれる。 そこに串刺しされる様に紹介されるのが「二重否定」。最も「閃いた」言葉である。一見、二者間に正(あるいは負)の相関関係があるようだが、そこには抑制(あるいは増進)させる三者・四者がいるというもの。「風が吹けば桶屋が儲かる」の理屈に近い話。 この本がそうであるように、分野が違っても働いている仕組み、法則は同じであると思え、社会科学(科学とは言えないと思っているが)分野でも、この理屈は当てはまるのではないかと、一度、自分でこの「二重否定」を取り込んで、世の中の動きを考えて見たい。細切れになった読書時間を費やす度に考えた。
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二重否定という論理が、細胞レベルから生態系レベルまで、生物が係るあらゆる階層で調節機能を果たしているということが、具体的な事象をもとに分かりやすく書かれていて、とても面白かった。 生態系は危機に瀕しているものの、関係者が団結し、個人個人が自分にできることを実践すれば危機から抜け...
二重否定という論理が、細胞レベルから生態系レベルまで、生物が係るあらゆる階層で調節機能を果たしているということが、具体的な事象をもとに分かりやすく書かれていて、とても面白かった。 生態系は危機に瀕しているものの、関係者が団結し、個人個人が自分にできることを実践すれば危機から抜け出せるということが、天然痘撲滅を引き合いに出して語られていて、生態系への責任を痛感するとともに、希望も感じられた。
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純粋に生物学として分かりやすい解説。生態系に目に見える影響を与えるのは、必ずしもトップに君臨する生物ではなく、多くの場合、中間層である場合が多いと。ただ、この現象を社会科学系に応用するとか、そういう話は一切ない。誤解なきよう。
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理解の追いつかないところもあるが,わかりやすくいろいろな例を出し図解説明もあって,危機感も持ちながらもとても楽しく読めた.自然の中にあるルールの解明がたとえばがん細胞の撲滅にもつながるかもしれない.とても興味深い.そして最後に挙げられていた教訓のなかの「楽観的であれ」になるほどと...
理解の追いつかないところもあるが,わかりやすくいろいろな例を出し図解説明もあって,危機感も持ちながらもとても楽しく読めた.自然の中にあるルールの解明がたとえばがん細胞の撲滅にもつながるかもしれない.とても興味深い.そして最後に挙げられていた教訓のなかの「楽観的であれ」になるほどと感じた.
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生体内から動物の生態系まで、二重否定のメカニズムで絶妙に制御されていることが示されている。 食物連鎖による生態系のバランス維持が、つい最近まで認められていなかったというのは驚きである。 ただ、守るべき自然とされるものがいつの時点の状態のものなのか、何を基準に可否を判断するのか、そ...
生体内から動物の生態系まで、二重否定のメカニズムで絶妙に制御されていることが示されている。 食物連鎖による生態系のバランス維持が、つい最近まで認められていなかったというのは驚きである。 ただ、守るべき自然とされるものがいつの時点の状態のものなのか、何を基準に可否を判断するのか、その問題には触れられていないのが残念。
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遺伝子の調節メカニズムの1つである抑制の抑制という二重否定論理が生態系にも当てはまるという点は大変興味深かった。またこれに基づき生態系の回復に適用された事例にもとても関心した。
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セレンゲティ ルールとはタンザニアのセレンゲティ国立公園から撮ったものであるが、一定の範囲内に生息する生物の数を調節するルールのことである。 ここでは分子レベルから話を始めており、直接増やす要因、抑制する要因、抑制する要因を抑制する要因の三つでコントロールするとしている。食物連鎖...
セレンゲティ ルールとはタンザニアのセレンゲティ国立公園から撮ったものであるが、一定の範囲内に生息する生物の数を調節するルールのことである。 ここでは分子レベルから話を始めており、直接増やす要因、抑制する要因、抑制する要因を抑制する要因の三つでコントロールするとしている。食物連鎖も同様の考えではあるが、より要因を広範囲に求めている。アフリカの草食獣の頭数であれば、餌となる草木の量と捕食者である肉食獣の頭数が直接の要因であるが、肉食獣の頭数を変化させる要因例えば人間による駆除、疾病あるいは同様なところに住み食料を競争する種(あるいは同じ種でも狭いところに多くはまかないきれない)の頭数も大きく関わってくる。そのような条件を改善させると急速に頭数を戻すことができるが、その広範囲な因果関係を見極めるのは、粘り強い観察が必要。
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タイトル買いしたものの、内容的にはイマイチ。 調節をキーワードに、人体と自然界が共通のルールで出来ているとの説明を試みたものか。 普通に考えれば直接つながりにくい要素を、調節というキーワードだけでつなげて自然を説明するのは、かなり無理がある。 ただし、人体と自然界の調節に関するエ...
タイトル買いしたものの、内容的にはイマイチ。 調節をキーワードに、人体と自然界が共通のルールで出来ているとの説明を試みたものか。 普通に考えれば直接つながりにくい要素を、調節というキーワードだけでつなげて自然を説明するのは、かなり無理がある。 ただし、人体と自然界の調節に関するエピソードやデータの一つ一つは興味深く読めた。それぞれに関する入門書、エピソード本としての価値はある。
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