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ハイファに戻って/太陽の男たち の商品レビュー

4.6

23件のお客様レビュー

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2024/06/06

絶対に読んで!

パレスチナなんて、なんか全然ピンと来なかった自分が、こんな気持ちになるなんて。パレスチナのことがわかったなんて、とてもいえないけれど、何かを感じてしまった。この本、一読お勧め・・・じゃなく、絶対に読むべきです。そして、何かを感じてみて下さい。

ノリ猫

2024/07/27

パレスチナに生まれ、難民となった作者が解放運動に携わりながら書いた物語。住んでいた家からユダヤ人により追い出された人々が、どのような感情を抱いたのか・・・子どもはどう育つのか・・・元の家に帰ろうとしたとき何が起こったか・・・。安易な想像を許さない現実が、物語の中にある。 表題2作...

パレスチナに生まれ、難民となった作者が解放運動に携わりながら書いた物語。住んでいた家からユダヤ人により追い出された人々が、どのような感情を抱いたのか・・・子どもはどう育つのか・・・元の家に帰ろうとしたとき何が起こったか・・・。安易な想像を許さない現実が、物語の中にある。 表題2作が中編で、他5作の短編。密入国して新天地へ踏み出そうとするも、悲惨な結末となる『太陽の男たち』に描かれる葛藤は苦しくて哀しい。 「そんなにここの生活が気に入っているんですか。十年経ってもあんたは乞食のような生活をしているというのに――なにもせずただ手を拱いていてその子にどの面あわせようというんです・・・」 と言われる中年のアブー・カイス。 「これまで一度も信じたことのない神よ。今度だけここに姿を現していただけぬものでしょうか。今度だけ。」 と考えたその数刻後に、「みんな神様に呪われっちまえ」と独白するアブ=ル=ハイズラーン。死者のポケットから金を抜き出した彼の叫びが、頭の中で長く尾を引く。 ハイファの土地を追われ、乳飲み子を置き去りにしたパレスチナ人夫婦が、20年後に戻ってみると子どもはユダヤ人の家庭に育てられていた・・・血縁や祖国の強さ、尊さはどれほどのものなのか、と考えさせられる『ハイファに戻って』。 真実のパレスチナを探し求めること――「それは想い出の埃の下に埋まったものを捜すことにすぎない。――祖国とは過去のみだとみなした時、私達は過ちを犯したのだ」 「ドウフ(ユダヤ人に育てられイスラエル軍に入った息子)はわれわれの内なる恥辱だ。しかしハーリド(パレスチナのために武器を取ろうとする息子)はまだわれわれに残されている誇りなのだ」 この夫婦の決断は諦めと嘆きの元になされ、それはきっと祖国のためにという大義の陰に無数にあるのではないだろうか。

Posted byブクログ

2024/06/28

中短篇集。読書中、何度も苦しくて取り落としてしまい、中断していたのをようやっと読み終えた。 この本に描かれているのは、端的でそっけない「事実」から苦しみを伴う「真実」を選り出し、読者のこころに「起こっている「ほんとうのこと」」をひらき示すための物語だと思う。 私たちには「事実」、...

中短篇集。読書中、何度も苦しくて取り落としてしまい、中断していたのをようやっと読み終えた。 この本に描かれているのは、端的でそっけない「事実」から苦しみを伴う「真実」を選り出し、読者のこころに「起こっている「ほんとうのこと」」をひらき示すための物語だと思う。 私たちには「事実」、パレスチナ(ほか、列強に痛めつけられた人びとの身の上)では「現実」として(おそらくさらに悪化して)何通りも起きているだろうこれらの「物語」を読み、『ガザに地下鉄が走る日(岡真理)』のことばを思い出して、私たちが恵まれた立場にあり、ひいては暴力に加担しうることを思い起こしている。スタバやマックなどには当分行かないし、hp商品も買わない。だがほかに何ができるだろうか。加害者から敷衍した利益を享受し続ける限り、わたしたちも加害者なのだ。

Posted byブクログ

2024/06/25

内容は重たいけども読みやすかったパレスチナの話。どの話も最後の数行が印象的。 あとがきにも書いてあったけど、情報や知識としてではなく、小説として読む方がやっぱり社会の中にいる「人間」の感情が伝わってくるから、心に響くものがあるんだな。 読み終わって感じたのは無力感。それでも世界の...

内容は重たいけども読みやすかったパレスチナの話。どの話も最後の数行が印象的。 あとがきにも書いてあったけど、情報や知識としてではなく、小説として読む方がやっぱり社会の中にいる「人間」の感情が伝わってくるから、心に響くものがあるんだな。 読み終わって感じたのは無力感。それでも世界の現状に思いを馳せることは無意味なことではないと思う。

Posted byブクログ

2024/03/16

パレスチナのことを知りたいと思って読んだ。 小説であるのに、現実との繋がりの距離が近くて……いや、そうだと思ったから読み始めたのだけれど……。 改めて、人間同士のことでなぜこのようなことが起きてしまうのだろうと……解説文のパレスチナ人男性の言葉も訴えかけてきて、Noと言わなければ...

パレスチナのことを知りたいと思って読んだ。 小説であるのに、現実との繋がりの距離が近くて……いや、そうだと思ったから読み始めたのだけれど……。 改めて、人間同士のことでなぜこのようなことが起きてしまうのだろうと……解説文のパレスチナ人男性の言葉も訴えかけてきて、Noと言わなければと思った。

Posted byブクログ

2024/02/16

とてつもない傑作。 どの作品からも、パレスチナの置かれている状況が感じられる。 それはそこで暮らす人々や土地、逃げた人にもパレスチナという国家の有り様というか、状況というかを彷彿させる何かがあった。 ●太陽の男たち イラクからクウェートへの密入国をはかろうとするパレスチナ人3人...

とてつもない傑作。 どの作品からも、パレスチナの置かれている状況が感じられる。 それはそこで暮らす人々や土地、逃げた人にもパレスチナという国家の有り様というか、状況というかを彷彿させる何かがあった。 ●太陽の男たち イラクからクウェートへの密入国をはかろうとするパレスチナ人3人、密入国を手助けする仲介業者に大金を積み、灼熱の砂漠で給水車のタンクに身を潜ませて国境を渡ろうとする。 収録されている物語のなかで一番、技巧が凝らされている。突然の視点の移動は映画的な編集を思い起こさせた。 逃げ場のないタンクの中で、自由を得るために叫ぶこともしないパレスチナ人の状況はいろいろ考えてしまう。 ●悲しいオレンジの実る土地 恐らくナクバという災厄の被害にあったパレスチナ人一家のお話。 それまでの美しく幸せな日常が突如壊され、人々の精神も次第に破壊されていく。 美しいオレンジの実が腐っていくさまに、もう美しいパレスチナの土地が奪われ、それまでそこで暮らしていた人々の生活は戻ってこないさまを彷彿とさせる。 ●路傍の菓子パン 道端で働く靴磨きの少年と難民キャンプで教師をしている先生のお話。 小さい子供が嘘をつかざるを得ない、一家を支えなければならないというパレスチナの境遇に打ちのめされる。 最後の少年の言葉は、我々の欺瞞性や心の内をを見透かすかのようでもある。 ●盗まれたシャツ 難民キャンプで妻と息子と共に暮らしている男。仕事はなく、配給も遅れて、ひもじい思いから難民キャンプの倉庫に盗みに入ろうと考える。だが、その配給を横流ししている奴がいて……。 これもとてもキツい。支援とは名ばかりで、弱者を食い物にする人間への怒りが現れている。 ●彼岸へ 要職に就いている男と、尋問中に飛び降りた若い男との対話 要職に就いている男はイスラエルであり、飛び降りた男はパレスチナを象徴している。 若い男の語りには怒りが込められており、イスラエルの偽善的態度と噓が語られていく。 最後に、若者は「それじゃあ、どうする?」の「それじゃあ」という未来を考えることが我々には与えられてないと語る。 余りにも重い言葉だ。 ●戦闘の時 10歳のぼくとオサームの2人の少年が、家族のために青物市場に食料を手に入れに行く。 その帰り道、ぼくは警官の足元に落ちていた5リラを手に入れるために警官を襲撃して、金を手に入れる。だが、その5リラを巡って家族間で争うことになる、という話。 とにかく食べるため、生き続けるために常に戦闘状態に置かれているような状況を考えてしまう。 この話は可笑しいところもあって、ラストの解釈次第では若者2人のある意味の友情も感じた。 そこで暮らす人々の力強さを感じる一篇。 ●ハイファに戻って パレスチナ北部のハイファという美しい海が見える土地、そこで暮らしていたサイードとソフィアの夫婦と、産まれたばかりの息子ハルドゥン。 1948年のナクバでハイファは攻撃され、サイードとソフィアは命からがらハイファから逃げ出す。しかし、その際にハルドゥンは自宅から連れ出すことが出来なかった。 それから20年の時が経つ。夫婦は20年ぶりにハイファに戻ることになるが、そこにはポーランドから逃げてきたユダヤ人老女ミリアムが暮らしていた。そしてハルドゥンは生きており、ミリアムに育てられいたのだが……。 これもひじょうに苦しい。胸が締め付けられるような物語だった。 サイードとソフィア夫妻も、ミリアムも共に住んでいた土地を追われた者同士である。だが、現在の境遇は全然違う。その状況の皮肉さ、非情さに苦しくなる。 ”祖国というのはね、このようなすべてのことが起こってはいけないところなのだ” 祖国とは何なのだろうか? 今、イスラエルが行っていることでパレスチナ人の土地を全て奪って、それは祖国と言えるのだろうか? そんなことを考えてしまう。

Posted byブクログ

2024/02/10

『翻訳文学試食会』(ポッドキャスト番組)の#22で紹介されていた本書。15年以上前の大学生の頃、そういえば隣の学科の友人が読んでいた記憶が呼び覚まされた。 ”太陽の子”は、物語のはじめから悲劇的な結末の香りがプンプンする感じだったが、まさかあそこまで悲惨に終わるとは思わなかった...

『翻訳文学試食会』(ポッドキャスト番組)の#22で紹介されていた本書。15年以上前の大学生の頃、そういえば隣の学科の友人が読んでいた記憶が呼び覚まされた。 ”太陽の子”は、物語のはじめから悲劇的な結末の香りがプンプンする感じだったが、まさかあそこまで悲惨に終わるとは思わなかった。 ”ハイファに戻って”は、ナクバという歴史的事実と、それでも生きなければならないパレスチナ人夫婦のフィクション(でもきっと本当にあったのだろう)が織り交ざった、胸が締め付けれられながらも読み進めたい物語。緊張すると多弁になる夫と、静かになる妻、どちらも理解できる反応である。

Posted byブクログ

2023/12/27

たしかに「小説」を読みたくなる。 パレスチナ問題は約30年前にもかなり日本でも翻訳されたものが出たり、パソコンが普及して随分情報が個人で取れた時代だったからかと思うが、今は誰でも、フェイクには気をつけなければならないが、戦争ですら現状を手元ですら見られるようになった。(ウクライナ...

たしかに「小説」を読みたくなる。 パレスチナ問題は約30年前にもかなり日本でも翻訳されたものが出たり、パソコンが普及して随分情報が個人で取れた時代だったからかと思うが、今は誰でも、フェイクには気をつけなければならないが、戦争ですら現状を手元ですら見られるようになった。(ウクライナロシアに関しては日本だけが全く反対の報道をされていることは海外のいろんな人の情報をとればわかる) 明らかに世界同時多発で起こっていること、LGBTの強行な流れなど。ダボス会議などいろいろ見れば、あるところに行き着く。しかし戦争の被害者はいつも民間人だ。 停戦を止めるものが悪であると確信している。 ジュネもそうだが、やはり文学が好きな人間からすれば小説家の力量を見たいと思う。 自然と行き着く一冊だった。 単行本版解説に「一人の無名のパレスチナ人」の言葉は、この長い酷いジェノサイドの歴史を、短くしかし的確に表現していると思う。 尊い命がこれ以上無くなることのないよう願うばかりです。

Posted byブクログ

2023/12/13

いつもの書店で注文したところ重版待ちだったが、間もなく手にすることができた。 <…彼はかつて(そしてその気持ちが今でも続いているのだが)特別の親愛感を抱いた自分の所有物を見ることができた。それは何か漠然としてはいるが、神聖な自分の所有物であるとずっと考えて来たものだった。その気...

いつもの書店で注文したところ重版待ちだったが、間もなく手にすることができた。 <…彼はかつて(そしてその気持ちが今でも続いているのだが)特別の親愛感を抱いた自分の所有物を見ることができた。それは何か漠然としてはいるが、神聖な自分の所有物であるとずっと考えて来たものだった。その気持ちは誰にも説明できず、誰にも触れられず、誰にも理解できない種類のものだった。>「ハイファに戻って」p216 イスラエル建国の際に武力で故郷を追われた主人公が20年ぶりにかつて住んだ家を訪ねた(そこにはナチスの迫害を受けポーランドから移り住んだユダヤ人女性が住んでいた)時、心に湧き上がった感慨。 パレスチナで起きたこと、起こっていることが、一人ひとりの人間にとってどのような経験だったのか。報道からだけでは容易に伝わって来ない、そうした内側からの手触り、質感を感じることのできる小説集だと思った。 (それは何というか、日々の戦闘の報道に触れ心を痛めながらどこか偽善的にも感じられて容易にはそのことを表明したり話題にできない、足元の日常ともつながる何かのような気もする。) 状況は今、さらに過酷さを増しているだろう。そうした中、主人公が語る抵抗の論理は今なお色褪せない、とも思った。 <…その人間が誰であろうと人間の犯し得る罪の中で最も大きな罪は、たとえ瞬時といえども、他人の弱さや過ちが彼等の犠牲によって自分の存在の権利を構成し、自分の間違いと自分の罪とを正当化すると考えることなのです。>p257

Posted byブクログ

2023/12/04

『ガザに地下鉄が走る日』を読んでいたこともあって、とてもすんなり移入できた。 特に『彼岸へ』と『ハイファに戻って』が刺さった。 世界に向けての慟哭。無き者とされ続けている人々の叫び。ノンフィクションやルポルタージュだけでは伝えにくいものを文学は伝えてくれる。

Posted byブクログ