遠くの街に 犬の吠える の商品レビュー
もしかしたら好きかもしれない。 うっすら分かっていたけど、そうではないかもと必死に押し留めてたのが一気に溢れ出てくるような。 最初は、美味しい本を探していた時に出会った。優しくて、疲れた時にもゆっくりじんわり包んでくれるようなぬくぬくとした作品だなぁと思った。 その時ぼんやり好き...
もしかしたら好きかもしれない。 うっすら分かっていたけど、そうではないかもと必死に押し留めてたのが一気に溢れ出てくるような。 最初は、美味しい本を探していた時に出会った。優しくて、疲れた時にもゆっくりじんわり包んでくれるようなぬくぬくとした作品だなぁと思った。 その時ぼんやり好きかもなぁとは思ってた。 この本はその時の本とは全く角度が違うのに、本当に突き刺さった。 どストライク。 言葉が好きな人、音を大切にしている人に是非触れてほしい。舟を編むが好きな人も歳の差が好きな人も、氷菓みたいな日常ミステリーが好きな人も、いやとにかく傷ついて癒されること間違いない本。 出会えてよかったです。
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過去の声を採取したい冴島くん、 それにつられる吉田くん、 共通項の茜さん、 代筆屋の夏子さん、 バッテン語を集めている白井先生。 遠吠えを、誰かの叫びを、同調して(チューニングして)じっと聞き入る。 聞こえていないんじゃない、聞こうとすれば届く。 時空をこえた声、手紙。 天狗の詫び状、告白。 温もりを感じる丁寧な手紙を読んだような、 人の感情に触れられる物語。
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渡せなかった手紙。 開封できない手紙。 一瞬で届けられるメールやLINEと違って、届くまでに時間のかかるアナログな手紙は趣がある。 「手紙というのは、これすべて声です。しかもそこには電話と違って時間のずれがある。長い距離、長い時間を経て封を切る手紙もあるでしょう」 差出人が亡くなった後に届いた手紙。 夏子はどうしても開封する気持ちになれない。 それは大切な人からの最後の手紙だったから。 羊羮好きの不器用な"天狗"からの"詫び状"にきゅんきゅんした。 大学時代の成績は首位、出版社に入社して希望通り辞典編集部に配属された"言葉のプロ"であるはずなのに、好きな女性に対する想いを表す"言葉"だけは見つけることができないなんて、ニヤケてしまう。 最後にこんな素敵な"恋文"をもらって、急に女っぽく変身した夏子はとても可愛い。 恋って素敵…でも最後のバッテンに込めた言葉にならない想いを考えると、やっぱり切ない。 本筋とは別に。 「ひと昔前ーいや、もっと前になるのかな、ぼくがこうして録音を始めたころは、まだよかったんです。もちろんすでに情報は大量に行き交っていましたが、いまほどではありませんでした。もっと空気が澄んでいたんです。余計なものに惑わされることなく自分が見つけたいものに意識を集めることが出来ました。しかし、いまはもうー」 知りたい情報が直ぐに集められて便利なのは良いことだけれど、情報が溢れすぎて何を信じればよいのか分からないの、今の世の中。 膨大なノイズに悩まされて大事な何かを見失ってしまいそうだ。 澄みきった空気が恋しい。
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導入文、写真、本編となっている構成が面白い。 ちょっと特殊な冴島君と吉田さんのささやかで透明な冒険、たまに茜さんも合流し遠回りしたり、言葉の巧みさに感嘆したりだと思って読んでいたら、最終章であまりの切なさと密やかさに泣きそうになりました。
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「音で小説を書いてみませんか」という辣腕編集者の茜さんの言葉をきっかけに、自分の書いた物語を録音することになった私は録音技師の冴島君と出会う。 やがて。恩師の死をきっかけに、彼も茜さんも、茜さんの友人の夏子さんも、みな恩師の弟子だと分かり……。 これは恋愛小説です。私はそう思い...
「音で小説を書いてみませんか」という辣腕編集者の茜さんの言葉をきっかけに、自分の書いた物語を録音することになった私は録音技師の冴島君と出会う。 やがて。恩師の死をきっかけに、彼も茜さんも、茜さんの友人の夏子さんも、みな恩師の弟子だと分かり……。 これは恋愛小説です。私はそう思いました。 遠吠えの主を探してみたり、天狗の話になってみたり、いったいぜんたいどこに向かっているのだろう?と思ってしまうのは、吉田さんの作品ではいつものことで、答えの出ないことも多いのですが、今回は最後の最後でキュンと来てしまいました。 せつなくて、でも優しくて。そして。いつも通り、ちょっぴり不思議で。 静かに穏やかに流れる時間を感じられる一冊でした。
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懐かしく、 穏やかな気持ちに させてもらえました 不思議な人たちだけれど どこにでもいるような 不思議なところなのに どこにでもあるような 気持ちを 手洗いで丁寧に洗って 日陰で ゆっくり乾かして もとのふわふわになったような そんな気分に させてもらえました
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写真といい、言葉の選び方といい・・・吉田さんってそういえばこういう書き方をする方だった、と思い出した。 特別ななにかが心に残るわけではなく、全体の雰囲気が残る感じというか。 冴島くんのCDを、私も聴いてみたい。
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登場人物がそれぞれに吉田先生の描く空気感をまとっている。それは私の波長と合うのかひとりひとりが元からの知り合いのような気さえする。 亡くなった先生も、水色の目の彼も茜さんも夏子さんも、もちろん語り手の「僕」も。 新しいけど馴染み深い小説でした。
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吉田さんの作り出す世界、好きだなぁ。表紙の雲の写真もイメージに合ってる。曇り空だけど、暗いのではなくて、ふわふわした雲に優しく包まれているような。辞書に載せられなかった言葉だけを集めたバッテン語辞典。ビルの屋上にいる代筆屋。遠吠えを集める男。音の狭間に紛れ込む過去の音。
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