鎮憎師 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
何となく、読んでいる途中で、『セリヌンティウスの舟』を思い出した。ある絆で結ばれた、男女グループ。やがて誰かが、不慮の死を遂げ…。疑心暗鬼に陥った面々が、堂々巡りの議論を繰り広げる。設定上の共通点は多い。 かつて、同じ大学のテニスサークルに属していた面々。学生当時、ある悲劇に見舞われた彼らが、メンバーだった2人の結婚式に集まっていた。二次会に行くと、そこには予想外のゲストが。そして、新たな悲劇の幕が開く。 ありがちな設定だが、警察もメンバーも、早々に内部犯と断定している。互いに探りあったり、鎌をかけたり、疑心暗鬼に陥る彼らに、謎の男が介入してくる。彼こそ、「鎮憎師」。憎しみの連鎖を断ち、事件をうまく終わらせるという。 犠牲者が出ている事件を、うまく終わらせるとは、どういうことか? しかも、プロの弁護士からの紹介である。何だか騙されている気分で、とりあえず読み進むのだが、急にそういう事情が明かされ、どうやって収拾するんだと思ってしまった。 昨今、こういうテーマは注目を浴びているし、取り入れるのが悪いとは言わないが、軽々しくネタにしすぎという感は拭えない。少なくとも、日本社会での理解はまだまだ進んでいないし、堂々としている人ばかりではないだけに。 これ、「鎮憎師」はいい仕事をしたということになるのだろうか…。危ない橋を渡ったと言わざるを得まい。うーん、一つ間違えば、新たな悲劇を生んでいた気がしてならない。今後、一切ぶり返さないと言い切れるか? 苦言ばかりで申し訳ないが、この面々、少しは「彼女」の親御さんの気持ちになってみろと言いたい。自分が同じ立場でも、追い返すと思う。とはいえ、『セリヌンティウスの舟』よりは納得性はあるし、近作の中では堪能できた。石持浅海らしさが全編に発揮された作品であるのは、間違いない。
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シリーズではないが、限られた登場人物の中に犯人がいて、その犯人に推理のみで迫っていくのは、「碓氷優佳」シリーズに近く、この作品のタイトルにもある「鎮憎師」は話を聞くだけで、やはり推理をする安楽椅子ものの「座間味くん」シリーズを思わせ、それを合体させた感じが、どうにも否めない。 大...
シリーズではないが、限られた登場人物の中に犯人がいて、その犯人に推理のみで迫っていくのは、「碓氷優佳」シリーズに近く、この作品のタイトルにもある「鎮憎師」は話を聞くだけで、やはり推理をする安楽椅子ものの「座間味くん」シリーズを思わせ、それを合体させた感じが、どうにも否めない。 大学のサークルで仲が良かった真穂たち6人は、サークル仲間に結婚式の2次会のために、1年ぶりに顔を合わせていた。そんな2次会には、彼女たちが封印したかった過去の事件の被害者・夏蓮が事件以来3年ぶりに姿を現し、かつての仲間たちは動揺を隠しつつ、久しぶりの再会を喜んだのもつかの間、その日の夜、夏蓮は渋谷の町中で絞殺死体で見つかる… 3年ぶりに再会した彼女を殺したのは、誰なのか? 最後まで、それだけをテーマに描かれる。これはこの作家さんの特徴でもあるんだけど、ずっと同じところを巡っている感じは、ちょっと飽きてしまう…
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憎しみを鎮める人、「鎮憎師」。とうとう事件を解決するだけでは飽きたらず、その先に潜む復讐の連鎖にまでメスを入れ始めましたよ、石持さんは。序章で、如何ともし難い現実を見せつけてからの、本筋の見事な締めは素晴らしい。
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奇想の作家の新たな挑戦。本格ミステリーの可能性を拓く傑作誕生! 赤垣真穂は友人の結婚式の二次会に招かれた。その翌日、出席者の一人が死体で発見される。これは学生時代の“事件"の復讐なのか!? 真穂は叔父から鎮憎師なる人物を紹介される。「事件を上手に終わらせる方法を考えて...
奇想の作家の新たな挑戦。本格ミステリーの可能性を拓く傑作誕生! 赤垣真穂は友人の結婚式の二次会に招かれた。その翌日、出席者の一人が死体で発見される。これは学生時代の“事件"の復讐なのか!? 真穂は叔父から鎮憎師なる人物を紹介される。「事件を上手に終わらせる方法を考えてくれる人」だというのだが……。
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