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学校へ行けなかった私が「あの花」「ここさけ」を書くまで の商品レビュー

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31件のお客様レビュー

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2023/12/04

著者がアニメや実写映画の脚本家とは知らずにこの本を手に取った。 中身の想像できるわかりやすいタイトルが面白い。 「あの花」も「ここさけ」もいまだに何のことだかわからないけど、たぶん若い人には支持されている作家さんなんだろう。 その著者がかつて不登校だった? そんな興味から読ん...

著者がアニメや実写映画の脚本家とは知らずにこの本を手に取った。 中身の想像できるわかりやすいタイトルが面白い。 「あの花」も「ここさけ」もいまだに何のことだかわからないけど、たぶん若い人には支持されている作家さんなんだろう。 その著者がかつて不登校だった? そんな興味から読んでみた。 著者は小学校から高校まで筋金入りの不登校。 シングルマザーに育てられた一人っ子で、そのマザーはなかなかの人。 高校では著者の才能を見抜いていた先生がいて、何とか卒業し、 その後家を出て専門学校に入ったあたりから変わり始める。 物語にも出てくるが、著者がシナリオを書くトレーニングで自伝を書いていたからなんだろうか、躓きの多い私生活が嫌味なくグイグイ読ませる文章であっという間に読めた。 面白かった。 随所にでてくる「おじいちゃん」系の人が重要な脇役になっている。 不登校だった人はもとよりそうでなかった人も読んで面白いと思う本。

Posted byブクログ

2023/10/28
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

過去と向き合い、乗り越えてゆくこと 2011年のこと、アニメ『花咲くいろは』第一話の冒頭シーン、ヒロインの緒花と母親との会話を聞いて、驚いたことがあります。 > 緒花「ママ、私、ママの子じゃないの。ママの親友が病弱なジャズシンガーで、港にやって来た米兵さんとの間で産んだ子なの」 > 母「あー、あたし女友達いないしー。それに子供から告白する台詞じゃないわねえ、それ」 > 緒花「残念」  これ、ものすごく計算された会話なんですよ。たったこれだけのやり取りで、 ・緒花が現実から抜け出すことを夢見ている少女であること。 ・母親がダメ人間であること。 ・緒花はそんな母親を嫌ってはいるけど憎んではないこと(憎んでたらそもそもこんな会話はしない)。  などを、番組開始から40秒で、視聴者に分からせてしまうんです。これには恐れ入りました。普通、こういう設定って、ついつい「説明台詞」で語らせたくなるものなんですが。  このシーンの脚本を書いたのが岡田麿里さんです。  それまでも『とらドラ!』とか『シムーン』とかは観てたんですが、「岡田麿里って上手い脚本書くんだなあ」と明確に意識したのはこの一瞬でした。その後も『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(通称『あの花』)や『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』などを観ていて、「あっ、ここ上手い」と感心することがしばしばありました。  これは天性の才能なのか、それとも誰か名のある脚本家に師事して学んだのだろうか……と、ずっと考えていたんですが、先日、その岡田麿里さんの自伝が発売されました。タイトルは『学校へ行けなかった私が「あの花」「ここさけ」を書くまで』。  そう、岡田さんはひきこもりだったんです。  ひきこもりの人の多くは、家から出られなくなった直接のきっかけがよく分からないそうです。この本でもそうで、いろんな小さな理由が積み重なって、岡田さんは学校に行かなくなった。明確な理由がないために、それを取り除けば魔法のように治るということもありえない。  知らない人からは「さぼっている」「ずる休みしている」としか見えない。でも、本人にとってはすごく苦しいことなんです。タイトルにあるように、学校に「行かなかった」じゃなく「行けなかった」んです。  その体験は、『あの花』の主人公、ひきこもりの高校生・仁太に投影されています。仁太の描写の多くは、実体験に基づくものだったんだそうです。  そんな岡田さんが、どうにか高校を卒業して、故郷を離れて東京で一人暮らしをはじめ、下積みの地道な仕事を重ねて、アニメのシナリオライターになってゆく。ついには『あの花』のような話題作を手がけるまでになる。その紆余曲折が描かれています。  サクセス・ストーリーではあるんですが、決して楽天的ではありません。読んでいると、彼女がどんな努力を重ねてきたかがよく分かる反面、努力をやめたらまたすぐにひきこもりに転落しそうな危うさが感じられ、息苦しいんです。  後半は、『あの花』の裏話。自分の故郷である埼玉県秩父市をモデルに、自分の体験をヒントにしたひきこもりのキャラクターを主人公にしても、岡田さんはなかなか過去に向き合うことができません。本当は別の町にしたかったけど、ロケハンに来たスタッフが秩父市を気に入ってしまい、現実の秩父市を再現したリアルな背景で描かれるようになります。それどころか実家までも作中で登場することになってしまう。アニメが放映されると、舞台になった場所を訪れるファン(いわゆる「聖地巡礼」)も増える。  故郷から、過去から逃げ出して東京に来たというのに、その過去が追いかけてくる。岡田さんは否応なしに過去に向き合い、自分の過去に決着をつけることになっていきます。このへんがもう、息苦しいんですけど感動します。 『あの花』が好きだった人なら、読んで絶対に損はないです。僕は読んでいる間、エンディングテーマ「secret base 〜君がくれたもの〜」が頭の中で流れていました。

Posted byブクログ

2023/09/18
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

薄々気付いてはいたが、私は本のジャンルとしての「自伝」がものすごく好きなのだと思う。 奈倉有里『夕暮れに夜明けの歌を』がとんでもなく面白かったのは、勿論内容の素晴らしさもあれど、そもそも自伝一般に私がめちゃくちゃ弱いためもあっただろう。 ふだんは基本的に小説しか読まず、自伝やエッセイといったノンフィクション系はなんとなく避けてきた(フィクションこそ至高、という若気の至りで)のだけれど、そろそろちゃんと自分の好みに向き合ったほうがいいかもしれない。考えてみれば、自分について考えるのが何より大好きで、自分語りが大好きで、他人の自分語りを聞くのも大好きな自分が、自伝を嫌いなわけがない。 『アリスとテレスのまぼろし工場』を観てマリー熱が高まったので、積んでいた自伝を手に取った。軽い気持ちで読み始めたのにめちゃくちゃ面白くて、何度も爆笑したり号泣したりしてしまった。人は子供時代の家庭環境に左右されるんだな、とつくづく思う。お祖父ちゃんと恩師下谷先生の章が特に印象深い。自分の文章に向けられた「批評」の意義について。 『DTエイトロン』から始まるアミノテツローさんとの関係も全く知らなかった。『おとぎストーリー 天使のしっぽ』(2001)も。 自分は秩父に行ったことないのに、母親に「マリーのアニメ観て下さいよ」と言った『あの花』オタクのエピソードが出来過ぎていて勝手に自己投影して感動してしまった。『花いろ』の松前皐月への母の反応も、『ここさけ』の成瀬母の台詞をきっかけにした岡田親子のやりとりも、最高ですね。これを読んで、岡田麿里作品の男性キャラの造形はまた色々と考えてみたいと思った。

Posted byブクログ

2023/05/14

「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」や「心が叫びたがってるんだ」といった、心に問題を抱えた主人公を描いたアニメの原作、脚本を書いたことで有名になった岡田麿里さんの自伝。個人的には彼女は、上記2作品のように少年少女達が葛藤したり、それを克服していくというような話をつくるのが...

「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」や「心が叫びたがってるんだ」といった、心に問題を抱えた主人公を描いたアニメの原作、脚本を書いたことで有名になった岡田麿里さんの自伝。個人的には彼女は、上記2作品のように少年少女達が葛藤したり、それを克服していくというような話をつくるのが特にうまい印象。 正直にいって本全体が彼女の負の感情満載のこの本を読み続けることが辛かったが、それでもこの本から得られたことは、不出来であってもなにかを最後までやりきること。 > シナリオライターとしてずるずる歳を重ねた今、仕事で出会った若い子に「脚本家になりたいんです」と相談されることがある。ならシナリオを描いてきてと言うと、そこでぴったりと連絡が途絶える。彼らの姿は、当時の同級生達の姿に重なる。その気持ちはすごくよくわかる。彼らは、やる気がないわけではない。今まで自分の中で溜めに溜めていた「自分がいつか世に出すはずの何か」のイメージはどんどん膨れあがって「まだそのにはないが、とても素晴らしいもの」になってしまっている。それを実際にシナリオとして書いてみると、ふわっと描いていたイメージには遥かに追いつかない。自分はこんなはずじゃない、これで自分を判断されたくないという恐怖。 > 結局のところ、チャンスを掴むことができるのは、物事をカタチにした人だけなのだ。本全体を通して負の感情を垂れ流し続けている著者自身でさえ、その時の感情を文字に起こしていた。 自分の中に溜め込んでいるだけでは、誰かに評価される機会など一生来ないのだから。

Posted byブクログ

2021/11/26
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

「あの花」「ここさけ」「凪あす」「さよ朝」。 私の好きなアニメの数々を生み出したマリーの自伝。 すごい人生でびっくりしたのと、ああ、この経験や性格から「あの花」「ここさけ」ができたんだなと納得した。 ただ、これでなんであんなに女の心情描写がうまいんだって疑問には逆に思ったけれども。 とても興味深くおもしろかった。 特にシナリオライターとして歩みだしてからが。 これからのご活躍にも期待。

Posted byブクログ

2021/10/17

とらドラの頃から岡田麿里さんの心をえぐる脚本に魅入られてました。 自分は不登校にはならなかったけど、世間に馴染めない自分と葛藤には共感しかなかったです。 でも麿里さんはとても強くて、1人で教習所に行くし、東京に行くし、シナリオも書けてとても強い人だと思いました。 彼女の自伝を読ん...

とらドラの頃から岡田麿里さんの心をえぐる脚本に魅入られてました。 自分は不登校にはならなかったけど、世間に馴染めない自分と葛藤には共感しかなかったです。 でも麿里さんはとても強くて、1人で教習所に行くし、東京に行くし、シナリオも書けてとても強い人だと思いました。 彼女の自伝を読んだことで、またさらに彼女の書く物語に深みがました気がします。 余談ですが、岡田麿里さんで検索したらとてもお綺麗な方の写真がでてきて、上京してすんなり彼氏ができたことに納得してしまいました。

Posted byブクログ

2021/10/10

アニメ「あの花の名前を僕たちはまだ知らない」の原作者の人のエッセイ。自身の不登校の経験や心情を切々と語っている本。

Posted byブクログ

2021/08/12

娘が借りてきた本。 「あの花」も「ここさけ」も知らないんやけど、娘が「面白かった」というので読んだ。 イッキ読み。したけど、エッセイやし、途中でちょいちょい休憩は挟みつつ読んだ。 ほんで、読みながら、著者はわりと同年代なんかもな~、と、思った。 くだんの通り作品は知らないけ...

娘が借りてきた本。 「あの花」も「ここさけ」も知らないんやけど、娘が「面白かった」というので読んだ。 イッキ読み。したけど、エッセイやし、途中でちょいちょい休憩は挟みつつ読んだ。 ほんで、読みながら、著者はわりと同年代なんかもな~、と、思った。 くだんの通り作品は知らないけれど、今時の若者向けの作品なので、てっきりもっと若い方が書かれているのかと思ってたのよ。 むしろ同年代で、今の若い人にささるような、今の時代にささるような作品が作れるなんてすごいな…、と、思ってたら、 同い年か…!(しかも学年でいえばひとつ下) そこで慌てて(?)巻末を見たら、著者プロフィールにちゃんと記載されてたね。同い年やったわ。 だから何と言われればアレやけど、著者が綴る10代ほど、わたしは尖ったそれを歩んでない。 もっとのほほんと、いうたら、かなり「勝ち組」と、いうか、「生きやすい」と、いうか、「優等生」な学生生活を送ってたわ。 勝ち組っていうのは、性格とか能力とかではなく、「当時の学校という制度に帳尻を合わせられた子供」というだけで、能力でもなんでもない。 ほんで、その結果がコレなわけよ…。笑 正直いうと、もうこういう話は自分よりもわが子に当てはめてしまうけれど、10代に多少生きづらさを感じて、学校のルールにはまれなくても、いいんじゃないの? と、いう気がする。 むしろあのルールこそが、歪んでいるというか、昭和中期の高度成長期から更新されてないんやから、むしろ合わないほうが正常なんじゃなかろうか…。 マイノリティになるというのはしんどいけど、そのぶん「人と違うこと」ができてしまうねんな。 人と違うことをができるのもやっぱりしんどいけど、わが子には、人と違うことをするしんどさよりも、人と違うことをすることによって得られる自分だけのものを大事にしてほしいと教えたいなと思った。 そして著者の御母堂はなかなかエキセントリックなようで、まあ、わたしも大概、わが子からはこのくらいエキセントリックというか、ええ加減な人やなと思われてるんやろうなーとも思った。笑 でも、そこも、一般的な「母親像」を無視して、わたしはわたしの人生を歩むのも、いいのかもしれんとも思えてきた。 少なくとも金銭的、衣食住は最低限(かもしれん)子供たちに苦労はかけていないはずなので(なんでもオッケーではないけども)、それやったら、今までわたしがめざしてきた「いい子供」「いい社会人」「いい妻」「いいお母さん」を、ここにきてドロップアウトしてもいいかなー。だってそれを目指して、これやもん。笑。二度目 子どもたちのいいところをもっとフューチャーして、彼らの強さをバックアップしていきたいなあ。 もしかしたら知識よりもわたしはそれのほうが、今の私はほしいと思っている。

Posted byブクログ

2020/05/03

 自分らしさの自分を追い求めて自分を否定したりダメなところに目がいったりする中でも成長していたのだと思う。登校拒否の日々は消日していたわけではなかったのではないか。その後熱くなれるものを見つけて歩んでいるところは過去があったからだと思うけど、それは今だから言えるのかなぁ。

Posted byブクログ

2020/01/20

 共に秩父を舞台にして大ヒットしたアニメ映画「あの日みた花の名前を僕たちはまだ知らない。」と「心が叫びたがってるんだ。」の脚本家による初の自伝エッセイ。「ひきこもり」という言葉がまだ市民権を得ていない時代。「学校に行かない」という選択が今よりよほど特別視されていたころの話。  ...

 共に秩父を舞台にして大ヒットしたアニメ映画「あの日みた花の名前を僕たちはまだ知らない。」と「心が叫びたがってるんだ。」の脚本家による初の自伝エッセイ。「ひきこもり」という言葉がまだ市民権を得ていない時代。「学校に行かない」という選択が今よりよほど特別視されていたころの話。  「誰に挨拶したらいいかわからない」という「自意識との闘い」、自らの「キャラ設定」に翻弄される思春期のモヤモヤ、そして「緑の檻」に囲まれた田舎町の鬱屈した空気感などは作品そのまま。映画の中の名台詞、名シーンの裏に込められた意味を改めてかみしめる。  閉鎖的な社会で「いじめ」を受け、長く学校に行けなかった著者は、秩父から「外の世界」に出ることによって道が開かれていく。その「生き直し」の過程には、著者を特別扱いせずに作文を評価してくれた担任の先生や、その幸せを願い、温かく見守ってくれた「おじいちゃん」など、多くの「隣人」の存在があった。専門学校に進学後は、シナリオライターになりたいという夢をかなえるため、「登校拒否児は果たして、魅力的なキャラクターとして成立するのだろうか?」と自問しながら、自らの体験をもとに「あの花」と「ここさけ」を書き上げる。  クリスチャン家庭に生まれ育った地方出身者が「マイノリティ」ゆえに抱える葛藤に相通ずる。今日の教会にも、さまざまな「生きづらさ」を抱えた人々が集っている。著者が不登校だった過去をカミングアウトする場面も、クリスチャンであることをカミングアウトする時の葛藤と重なる。  眼前の苦難から抜け出せないと思い込んでいるすべての人にとって、その向こうに広がる「外の世界」の存在は希望になり得る。(松ちゃん)

Posted byブクログ