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現金の呪い の商品レビュー

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9件のお客様レビュー

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2023/04/28

表紙を見て面白そう、というだけで購入しましたが、正直本の意図を読み間違えて購入していました。タイトルが「現金の呪い」ということで、てっきりロゴフ氏が電子通貨、ビットコイン系統の話をするのかと思いましたが(それはそれで非常に興味深いのですが)、そうではなく、副題にもあるように「紙幣...

表紙を見て面白そう、というだけで購入しましたが、正直本の意図を読み間違えて購入していました。タイトルが「現金の呪い」ということで、てっきりロゴフ氏が電子通貨、ビットコイン系統の話をするのかと思いましたが(それはそれで非常に興味深いのですが)、そうではなく、副題にもあるように「紙幣をいつ廃止するか?」がむしろ重要な主題です。高額紙幣の多くがその匿名性をもとに地下経済や犯罪に使われていること、よって高額紙幣をなくすことで、かなりの地下経済、犯罪抑制効果があり、納税額も増えるので、紙幣発行から得られるシニョレッジを補って余るだろうということが書かれています。さらに論を進めて、高額紙幣をなくすことで、中央銀行がマイナス金利を導入しやすくなる利点についても記載されています。つまり高額紙幣がたくさん流通しているのに大きなマイナス金利を導入しようものなら、預金を引き出して高額紙幣で貯蔵するという方法をとられる可能性が高いので、マイナス金利の効果が発揮できなくなるというわけです。ロゴフ氏はマイナス金利が万能だとは言っていませんが、中央銀行ができることを拡大し不況からの脱出を短期間で達成できるだという理由から非常に前向きなトーンで語られています。私は金融は素人なので、彼の意見が正しいかどうかはまったくわかりませんが、世間にはこういう議論があるのか、という意味ではとても勉強になりました。ただ素人にはなかなか難解な本だとは思います。

Posted byブクログ

2023/01/16
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

かなり分厚い本だが、とても興味深いテーマを掘り下げているので、難なく読めた。 収入が全て丸裸のサラリーマンにとっては、レスキャッシュで収税額が増えるのは喜ばしいこと。 地下経済は麻薬を取り扱うギャング、ヤクザだけの話ではなく、、、宗教団体、政治家だって使っていると思われ、、、 賄賂がなくなれば、それに伴って無駄に嵩ましされて消費される土木工事などの支出が減り、財政がスリム化できる。。良いことづくめだ!

Posted byブクログ

2022/01/30

大部の訳本だがまずまず読みやすい。高額紙幣の廃止により地下経済を無くすことをメリットに挙げているが、その地下経済の規模が想像以上になると推計されているのが興味深かった。

Posted byブクログ

2021/03/06

高額紙幣の段階的廃止を主張し、そのメリットについて書かれた本。地下経済の規模推定などは特に興味を惹かれた。

Posted byブクログ

2019/01/08

THE CURSE OF CASH https://www.nikkeibp.co.jp/atclpubmkt/book/17/P55070/

Posted byブクログ

2017/11/21

 ハーバード大教授である筆者が本書で説くのは、高額紙幣の廃止によるレスキャッシュ社会への段階的な移行である。  高額紙幣は、発行量から計算すると流通量は少ない。地下経済で使われていると言う。通常生活では、高額紙幣はなくてもカードなりモバイル決済なり代替手段は今は多くあって困ること...

 ハーバード大教授である筆者が本書で説くのは、高額紙幣の廃止によるレスキャッシュ社会への段階的な移行である。  高額紙幣は、発行量から計算すると流通量は少ない。地下経済で使われていると言う。通常生活では、高額紙幣はなくてもカードなりモバイル決済なり代替手段は今は多くあって困ることはない。また、マイナス金利など金融政策もより有効になる。国外に流通している紙幣が日本円は少ないので、やりやすいだろうと言うのだ。  実務面からはいろいろ反論はあるだろうが、今後の向かう方向として検討すべきことのように思う。実際に中国では現金の代わりにQRコード決済が進んでいるし、そうなっていくのではないだろうか。  本書は400頁の大著で、ていねいに説明がされているが、マクロ経済の初歩知識があるとより理解が深まると思われる。詳しい人に、きちんと議論をしてもらいたいなあ。

Posted byブクログ

2017/09/23

シンガポール駐在時に「1万ドル(≒80万円)札」があると聞いて、地元の店やタクシーでは100ドル札はおろか50ドル札でも嫌がられる場合があるのに、どんな「経済合理性」でそんな高額紙幣が存続してるのだろう?と疑問でした。 この本によれば、日本の通貨流通高の90%が1万円札、アメリカ...

シンガポール駐在時に「1万ドル(≒80万円)札」があると聞いて、地元の店やタクシーでは100ドル札はおろか50ドル札でも嫌がられる場合があるのに、どんな「経済合理性」でそんな高額紙幣が存続してるのだろう?と疑問でした。 この本によれば、日本の通貨流通高の90%が1万円札、アメリカでは80%が100ドル札とのこと。なるほど、これはもう個人や企業の活動じゃなくてアレですねえ、と。 日常の直感と現実のギャップを鑑みるに、マイナス金利の効果を高め、税収を拡大し、且つテロ・贈収賄含む犯罪の防止のために高額紙幣を段階的に廃止して「レスキャッシュ社会を作る」という本書の主張は至極真っ当。 が、さまざまな「合理性」が実現を阻むのでしょうねえ、という気も。日本の政府が1万円札を廃止します、っていう日が来るなんて想像つかない。

Posted byブクログ

2017/07/02

マネーロンダリング対策とマイナス金利政策の有効性を高める観点から、現金の廃止を提言する。 最近の金融政策の論点を理解するうえでも有用な一冊。

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2017/05/06

現金にまつわる貨幣論と金融政策についての意欲的提言がされている本です。 現代先進国における現金の表立った使用率が低く、現金の存在が脱税・犯罪といった地下経済(政府が了知できない範囲の経済)温床となっていることを指摘し、税捕捉や公安の向上のために高額紙幣を撤廃する「レスキャッシュ...

現金にまつわる貨幣論と金融政策についての意欲的提言がされている本です。 現代先進国における現金の表立った使用率が低く、現金の存在が脱税・犯罪といった地下経済(政府が了知できない範囲の経済)温床となっていることを指摘し、税捕捉や公安の向上のために高額紙幣を撤廃する「レスキャッシュ」(現金を完全に無くす「キャッシュレス」ではない)ことを提言した上で、これに向けて低所得者への口座開設・維持費用やデビットカード・スマートフォンなどの決済手段確保費用の補助が必要であるとしています。上記の目的もありますが、主眼はマイナス金利政策の実効性確保にあり、現状で-0.75%位が試みられているマイナス金利も、これ以上下げると預金を高額紙幣で引き出し退蔵することを誘発してしまうため、より低い金利を付けられるようにするためにもレスキャッシュが必要だとし、本の後半の大部分を費やしてマイナス金利を中心としたこれまでの金融政策の内容と課題について整理しています。 マイナス金利については著者も指摘しているように万能薬ではなく、他の金融政策に対して相対的に有望に見えること、万策尽きた現状においてまだ試せていない政策であるため有効性を完全に否定できないことがマイナス金利の一つの特徴となっています。著者のスタンスとしては、レスキャッシュが実現しマイナス金利が加減なく実現できる社会においても、マイナス金利は選べる金融政策の一つであること、多少の痛みは伴ってもマイナス金利によって政策をブーストさせることでデフレを短期間で終了させ、長期的には比較的良い政策判断となると考えられることがあります。(もっとも、あくまでマイナス金利が想定通りに作用すればの話ですし、今は作用しても将来作用しなくなるような金融システムの不全が生じる可能性はあります) 本の冒頭では現金の文化史・経済史が概観されていてこれだけでも面白い内容です。また、金融政策の比較吟味の本としてもよく整理されています(充分平易であるとは言えませんが)。何よりもレスキャッシュの提言自体がこれからの金融社会のビジョンを示しており、ついでに書名から誤解して期待されると考えられる仮想通貨についても一応触れられており(これもかなり簡潔にポイントが付かれています)、綜合的にして今読むべき現代貨幣論と言えます。

Posted byブクログ