日本の近代とは何であったか の商品レビュー
一般的には「遅れた閉鎖的な時代」と片付けられてしまう江戸時代の環境が、実は細かい合議制で成り立っており、そのことが「近代」としての明治時代の成立に大きな意味をもった、というのは面白かった。また、「幕府」的な存在を排除したことが、分立した権利のまとめ役の不在を生み、そのまとめ役とし...
一般的には「遅れた閉鎖的な時代」と片付けられてしまう江戸時代の環境が、実は細かい合議制で成り立っており、そのことが「近代」としての明治時代の成立に大きな意味をもった、というのは面白かった。また、「幕府」的な存在を排除したことが、分立した権利のまとめ役の不在を生み、そのまとめ役として政党内閣が誕生した、という内容も興味深かった。 最初の導入部が非常に難解なのがもったいなくは感じたけれど、論の展開を考えるとやむを得ないように思う。
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読んでいて眠くなるので、寝る前に30分本書を読むと快眠出来た。 途切れ途切れにしか理解は出来なかったけど、近大日本がどのように政党政治を立脚し、どのように資本主義体制を整えて、どんな風に植民地帝国へと進み、どんな風に天皇を位置づけてきたのかを知ることが出来た。 大日本帝国時代の人...
読んでいて眠くなるので、寝る前に30分本書を読むと快眠出来た。 途切れ途切れにしか理解は出来なかったけど、近大日本がどのように政党政治を立脚し、どのように資本主義体制を整えて、どんな風に植民地帝国へと進み、どんな風に天皇を位置づけてきたのかを知ることが出来た。 大日本帝国時代の人はあんな無謀な戦争仕掛けてアホやなあと思ってたけど、当時もやっぱり自分の何倍も賢いインテリ層は存在して、当時なりに色々考えてたんだなあって思った。 議論による統治 バジョット 慣習の支配からの脱却 日本に政党政治が成立した経緯 政党政治の成立 江戸幕府からの受け継ぎ 天皇主権を確立するための権力分立 立憲的独裁に 日本の資本主義導入 大久保利通の殖産興業化 不平等条約改正 対外平和 大久保暗殺 自律的資本主義 松方正義 非外積依存 明治天皇 グラント大統領 条約改正 日清戦争 外積依存 高橋是清 井上準之助 金解禁 国際資本主義 世界恐慌 自律的資本主義 植民地主義 軍人と文官の朝鮮半島統治を巡るせめぎあい 美濃部達吉 植民地の法的位置づけ 憲法講和 異法区域 民族運動 同化政策 拓務省拓殖務省 帝国主義から地域主義へ 戦後もアメリカによる地域主義が続いていた 日本の近代において天皇制おは何であったか ヨーロッパ化という課題 機能主義的思考様式 キリスト教の機能的等価物としての天皇制 グナイストは仏教を 君主観の違い 教育勅語はいかに作られたか 国務大臣の副著が無い 政治上の命令では無い 立憲主義との整合性 神聖にして侵すべからず 天皇側近vs官僚の対立 中村正直vs井上毅 宗教性を入れるべきか 政治要素を入れるべきか
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もう80歳になる歴史学者である著者の総括的な作。政党政治、資本主義、植民地、天皇制、といった「日本の近代化」に伴う重要テーマを様々な史料をひきながら「こってりと」考察している。 教科書を超えた史実の意味合いをとらえるには格好の書。 以下要点。 0)バジョットの前近代の「慣習による支配」から近代の「議論による統治」 1)日本における政党政治の成立 ・幕藩体制下の権力抑制均衡メカニズム:日本は、分権的発想が江戸時代からの相互抑止の仕組みをもとに憲法に埋め込まれていたがゆえに憲法外で統合する作用が働いたというのはとてもおもしろい。体制統合の主体としての藩閥と政党があったとの見方 ・幕末の危機下において権力分立論と議会制論が展開され、「公議」=パブリックオピニオンの考え方が基礎づけられた。明治憲法が想定した権力分立制は、幕府的存在の出現の防止を目的として王政復古の理念に適合。立法と行政の両機能を連結する政党内閣を本来排除する志向 ・政党政治が終わり「立憲的独裁」=議会制からの離脱と否定へ 2)日本における資本主義の形成 ・日本の資本主義は、国家主導自立型資本主義から国際的資本主義を経て排他的資本主義へ ・自立型資本主義・・・大久保の果たした役割の大きさには驚くべき。特に、外債に依存しないという方針を貫き通したことはほめてしかるべきこと ー政府主導の殖産興業 ー国家資本の源泉としての租税制度。地租改正の意義 ー資本主義を担う労働力の育成 ー対外平和の確保 ・松方の超均衡財政の強行と積極的正貨供給政策=大隈の基本政策の転換 ・大久保のもとで育った高橋(過渡期)、大久保の後継としての松方正義 ・国的資本主義のリーダーとしての井上準之助。高橋とは断絶。金解禁は失敗に終わる 3)植民地帝国化 ・踏み出したのは、日清戦争の前後。台湾や澎湖諸島の植民地化。条約改正後の国際的資本主義へと転換した時期 ・欧米諸国と異なる軍事力への依存度の高い「公式帝国」への道を歩む。イギリスとは異なる「帝国」 ー実質的意味の国際メンバーではなかった ー軍事的安全保障関心から発し、国境線の安全確保への関心と不可分 ・山県有朋の「主権線と利益線」・・・利益線の焦点は朝鮮半島。 ・形成過程・・・・帝国主義だけではなく、新しい国際秩序イデオロギーとしての「地域主義」の観点の重要性 ー日露戦争後ー朝鮮と関東州租借地の統治体制の形成 ー大正前半期ー主導権確立をめざす陸軍 ー大正後半期ー朝鮮の三・一独立運動とそれへの対応 ー1930年代ー「帝国主義」に代わる「地域主義」の台頭 ー太平洋戦争後」ー米国の「地域主義構想」とその後 4)天皇制の捉え方 ・日本の近代は歴史的独創ではない ・ヨーロッパというモデルはあった。前例のないヨーロッパ化の実験 ・歴史的実体としてのヨーロッパを導入可能な諸機能の体系(システム」とみなした ・西欧のキリスト教に対比される天皇制(機能的等価物) ・日本における「神」の不在が、天皇の神格化をもたらした ・教育勅語を天皇の政治上の命令と区別し、社会に対する天皇の著作とみなした・・・天皇の政治的意味合いと道徳的リーダーシップ
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タイトル通り、日本の「近代」の意味に関する歴史的論考。天皇制や植民地政策などのデリケートな論題を平易に論じている点が好ましい。
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明治期の日本の発展 国営産業 租税 教育 平和 先進産業技術、資本、労働力、平和 ①官房産業に象徴できる国家による先進産業技術導入 ②地祖をはじめとゆる安定度の高い気入を保障る祖税制度 ③質の高い労働力を生み出す公教育制度の確立 ④資本受種を防げる資本の非生産的消費とし...
明治期の日本の発展 国営産業 租税 教育 平和 先進産業技術、資本、労働力、平和 ①官房産業に象徴できる国家による先進産業技術導入 ②地祖をはじめとゆる安定度の高い気入を保障る祖税制度 ③質の高い労働力を生み出す公教育制度の確立 ④資本受種を防げる資本の非生産的消費としての 対外戦争の回避 岩倉具視 慣習の支配 自分 選択 菊と刀 恥の文化 罪の文化
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明治期に近代化を進める中で、近代化には欧州におけるキリスト教が果たした役割を、天皇に求めた。それにより、明治憲法の立憲民主主義と天皇の存在に矛盾が生じた。 教育勅語が天皇の神性を強め、立憲君主の枠を超越する存在にしてきたとしている。 であれば、その内容に関わらず、二度と教育勅語を...
明治期に近代化を進める中で、近代化には欧州におけるキリスト教が果たした役割を、天皇に求めた。それにより、明治憲法の立憲民主主義と天皇の存在に矛盾が生じた。 教育勅語が天皇の神性を強め、立憲君主の枠を超越する存在にしてきたとしている。 であれば、その内容に関わらず、二度と教育勅語を復活させてはならない。
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近代とは?果たして日本は近代を受容できたのか?「三四郎」を読んで取りつかれた疑問に思考の枠組みを与えてくれました。不平等条約は、その後の日本に大きなくびきを与えます。西洋の近代という大きな津波を前に溺れるか浮かぶか、一瞬一瞬ごとに選択を迫られるような時代に立ち向かった先人の気概が...
近代とは?果たして日本は近代を受容できたのか?「三四郎」を読んで取りつかれた疑問に思考の枠組みを与えてくれました。不平等条約は、その後の日本に大きなくびきを与えます。西洋の近代という大きな津波を前に溺れるか浮かぶか、一瞬一瞬ごとに選択を迫られるような時代に立ち向かった先人の気概が伝わります。初めて知ることも多く非常に刺激的な読書でした。
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日本政治外交史の泰斗による日本の近代論考。政党政治、資本主義、植民地に加えて天皇制についても述べられています。 日本に憲法を導入しようと渡欧した伊藤博文に対し、プロイセンの公法学者グナイストは、社会の結びつきを強める機能を宗教に認め、「日本は仏教を以て国教と為すべし」と勧告します...
日本政治外交史の泰斗による日本の近代論考。政党政治、資本主義、植民地に加えて天皇制についても述べられています。 日本に憲法を導入しようと渡欧した伊藤博文に対し、プロイセンの公法学者グナイストは、社会の結びつきを強める機能を宗教に認め、「日本は仏教を以て国教と為すべし」と勧告します。 対して伊藤は、既存の日本の宗教にヨーロッパにおけるキリスト教の機能を見出だすことはできず、「我が国にあって機軸とすべきは独り皇室あるのみ」との断を下します。「神」の不在が天皇の神格化をもたらしました。 この伊藤の判断が、戦前においては天皇の神聖不可侵性に、戦後には日本国民の象徴へとつながっていきました。 筆者は宮内庁参与として、象徴天皇を誠実に務められた平成天皇を間近で見てこられました。 平成から令和へと時代は移っても、平和を願い国民の象徴を模索され続けた陛下の思いは大切に守っていかなければならないと再認識させてもらえた著作でした。
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日本政治外交史の碩学である著者が、日本近代についての「総論」を目指して執筆した本。ウォルター・バジェットが提示した「議論による統治」を重視した「近代」概念を参照しつつ、「なぜ日本に政党政治が成立したのか」「なぜ日本に資本主義が形成されたのか」「日本はなぜ、いかにして植民地帝国とな...
日本政治外交史の碩学である著者が、日本近代についての「総論」を目指して執筆した本。ウォルター・バジェットが提示した「議論による統治」を重視した「近代」概念を参照しつつ、「なぜ日本に政党政治が成立したのか」「なぜ日本に資本主義が形成されたのか」「日本はなぜ、いかにして植民地帝国となったのか」「日本の近代にとって天皇制とは何であったか」という4つの問いについて歴史的考察を行いながら、現在の日本が置かれている歴史的位置の確認を含めた日本近代についての総合的考察を試みている。 骨太の日本近代史論であり、日本近代史の本質をつかむことができる一冊である。明治憲法下の権力分流体制とそれゆえの統合主体としての政党、自立的資本主義の発展の一つの条件としての明治前半期の戦争の回避、日本の近代を貫く機能主義的思考様式、西洋諸国における国家の基軸としてのキリスト教の機能的等価物としての天皇制といった本書の指摘は、日本近代史を理解する上で、目から鱗だった。 ただ、終章で触れられている今後の日本の展望については、国際共同体に基盤を置いたグローバルな規模での近代化路線の再構築という内容に異論はないものの、歴史的考察からはいささか飛躍した論であるように感じた。
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近代国家形成に向けて日本がどう歩んできたのか、「政党政治の成立」「資本主義の形成」「植民地帝国の経緯」「天皇制とは」という4つの観点から学術的に説く。前近代において他国からの侵略、宗教の諍いが限られていた日本では、事情の異なる西欧の近代化を倣うにあたって試行錯誤が続く。植民地領有...
近代国家形成に向けて日本がどう歩んできたのか、「政党政治の成立」「資本主義の形成」「植民地帝国の経緯」「天皇制とは」という4つの観点から学術的に説く。前近代において他国からの侵略、宗教の諍いが限られていた日本では、事情の異なる西欧の近代化を倣うにあたって試行錯誤が続く。植民地領有の理由については、西欧では経済的利益を求めたのに対し、日本では軍事的安全保障を求めたものであることが明確に示される。著者を極左と責める向きがあるが、現在の西欧での移民、難民の問題はもちろん、日本での近隣諸国との関係で精算しきれない問題は、それぞれが植民地帝国であったゆえの負の遺産であることを受けとめたい。そしてそれを教訓とし、未来というより常に今この時のありようを考えていかなければと思う。
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