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冬の日誌 の商品レビュー

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19件のお客様レビュー

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2024/06/16

 車中泊の車の中で読み終えた。読み終えた本を両の掌でこねるように持ち替え、表紙を見返してみる。先日亡くなった著者を想わずにはいられない。  64歳の著者が、命あるうちにと、人生を振り返った記録だ。著者の経験した出来事、出会った人たちの物語を読むとき、読者は自身の過去の経験もシン...

 車中泊の車の中で読み終えた。読み終えた本を両の掌でこねるように持ち替え、表紙を見返してみる。先日亡くなった著者を想わずにはいられない。  64歳の著者が、命あるうちにと、人生を振り返った記録だ。著者の経験した出来事、出会った人たちの物語を読むとき、読者は自身の過去の経験もシンクロして思い出している。エピソードはドライな筆致で描かれるが、かえって読者自身の人生を重ね合わせ易くしている。著者がタイトルを日誌(Journal)とした狙いはそこにあると思う。  著者の狙い通り、本書を読み終えたとき、自分自身の人生の旅を経験したようで、本書がいとおしく感じられ両掌で本を抱き、表紙を見返した。  青春、朱夏、白秋と、人生の四季の扉を開いてきた。そして玄冬の扉を開けようとしている今、著者の言うように自問する、あといくつの朝が残っているのだろう。

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2022/10/31

これまでの作品(特に「ニューヨーク三部作」などの初期作品)においては、ポール・オースターという名前や存在を装置として活用することで新たな文学を切り拓いてきたオースター。 そのような作者が人生の老いという冬の時代にさしかかり、身体をめぐるこれまでの出来事を赤裸々に語っています。長...

これまでの作品(特に「ニューヨーク三部作」などの初期作品)においては、ポール・オースターという名前や存在を装置として活用することで新たな文学を切り拓いてきたオースター。 そのような作者が人生の老いという冬の時代にさしかかり、身体をめぐるこれまでの出来事を赤裸々に語っています。長年の喫煙や過去のセックスなど、あまり言及されてこなかったトピックも含めたエピソードが時系列に沿って、それこそ「日誌」のように語られています。 個人的には、「これ!」というような箇所にはあまり遭遇しませんでしたが、そこはオースターの文体と名訳者による訳文ですから、するすると通読できました。

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2022/01/03
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

後半に出てくる“君が子供のころ愛した食べ物”がどれも美味しそうでたまらない。 “アイスクリームこそ君の若き日の煙草だった” は名言だと思う。 家族を乗せた吹雪の中のドライブの話も良かった。 戦争を経験された、寡黙なお義父さまの雪道のアシストもウィンクも、どれも素敵なシーン。

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2021/09/14

ポール・オースターのことを今まで知らなかったが好きな本屋さんがオススメしていたので読んでみた。人生にドラマを感じる1冊だった。

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2021/06/13

ポール・オースター。この方はこういう人生を生きているんだと知る。長い長い64歳の回顧録。大きな出来事も、小さな出来事も平等に掬いあげて書かれている。人生って、ビッグイベントだけじゃないものね。それにしてもなんというあたたかみのある文章。自分の人生をこんなふうに慈しむことができたら...

ポール・オースター。この方はこういう人生を生きているんだと知る。長い長い64歳の回顧録。大きな出来事も、小さな出来事も平等に掬いあげて書かれている。人生って、ビッグイベントだけじゃないものね。それにしてもなんというあたたかみのある文章。自分の人生をこんなふうに慈しむことができたら、書き記せたら、それは相当なしあわせではないか。オースターもそれを感じている。だから最後は9.11であり、ドイツの収容所であり。これを噛み締めて、冬の時代に入るのだ。64になったらもう一度読みたい。その頃は暇にあかせて原書でいこうか。

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2020/08/16

人が記憶を辿るとき、強烈な事件を必ず最初に思い返すとは限らない。それは母がふと立ち上がる瞬間であったり、父の喫う煙草の煙の色であったりと、記憶とは必ずしもその出来事の重大性の順に現れたりはしない。ましてや時系列を追って行儀良く並ぶことなどあり得ない。こういった点において、オースタ...

人が記憶を辿るとき、強烈な事件を必ず最初に思い返すとは限らない。それは母がふと立ち上がる瞬間であったり、父の喫う煙草の煙の色であったりと、記憶とは必ずしもその出来事の重大性の順に現れたりはしない。ましてや時系列を追って行儀良く並ぶことなどあり得ない。こういった点において、オースターは実に誠実に本書を書いた。 もちろん、記憶を喚起するのに道具を使うことは有効だ。それが本書の場合は引っ越した家にナンバーを振ることであったり、商品名を羅列することであったりする。これらは技巧というよりは、やるべきことに適切な道具を用いる誠実さの現れと解釈した方が心地良く読書を愉しめるだろう。

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2018/11/18

大好物である柴田元幸訳ポール・オースターの新刊。いつもの通り、「訳者あとがき」を読んでから本文に取りかかった。 乱暴にまとめてしまうと、「人生の冬」を迎えた初老の作家の回顧録ということになるのだろうが、そこはオースター。彼の深い思索というフィルターを通すと、何か詩的で味わい深い文...

大好物である柴田元幸訳ポール・オースターの新刊。いつもの通り、「訳者あとがき」を読んでから本文に取りかかった。 乱暴にまとめてしまうと、「人生の冬」を迎えた初老の作家の回顧録ということになるのだろうが、そこはオースター。彼の深い思索というフィルターを通すと、何か詩的で味わい深い文章になる。 これまでに住んだ21箇所の家の記録こそ時系列だが、それ以外は時間を行ったり来たり。親、家族、恋愛・性愛、そして怪我・病気・事故。こうした過去の出来事を、かつての自分を「君」という二人称で呼び、少し突き放した形で書くことによって、読者と視線を共有している。 死んでいても不思議ではなかった体験など、かなり赤裸々に書いているのだが、それでも一向に世俗的なものを読んでいる感覚はない。それどころか、読み進めるにつれ、生と死について深く黙思せざるを得なくなってゆくのは、この作品の肝だろう。 本作を読んだ後、普段は受け取るばかりで、こちらからは出したことがほとんどないメールを離れて暮らす両親に出したことは、個人的なメモとして書き留めておきたい。

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2018/02/11
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ポール・オースターの、事実を基にしたフィクションかなと思ったら、「回想録」ということらしい。 淡々と書かれているのだが、子供時代〜思春期の、つらい思い出についても隠すことなく書かれている。作家というのは本当に大変な仕事だ。 しかしだいたいの作家は子供の頃、犬の過酷な死に立ち会っているものなのか、犬が天寿を全うする以外で死んでしまう記述が必ず出てきて、その部分を読むのはいつもとてもつらい。 母親の死の記述については、死そのものよりも、若き日の美しい姿からどんどん変わっていく様子がいたたまれない。 そのいたたまれなさは、自分の母親、自分の肉親、そして自分自身にも当てはまることに由来する、ということがとても悲しい。 俳優との朗読会で言われた言葉、 「ポール、ひとつ君に言いたいことがある、五十七のとき、私は自分が老いている気がしていた。七十四になったいま、あのころよりずっと若い気がするよ」 は、大いなる救いであった。 その他、美しくて共感できる娼婦との出会い、自動車事故で家族共々死にかかったことなど、波乱に富んだ出来事が次々と描かれている。

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2017/10/09

ポールオースター「冬の日誌」 http://www.shinchosha.co.jp/book/521718/ 読んだ。自伝だったのか。。オースター自身について些細なことまで書き尽くしてある。好きな食べ物が延々3ページも列挙されてるとか。内容よりも、一体どういう自意識でこれを書...

ポールオースター「冬の日誌」 http://www.shinchosha.co.jp/book/521718/ 読んだ。自伝だったのか。。オースター自身について些細なことまで書き尽くしてある。好きな食べ物が延々3ページも列挙されてるとか。内容よりも、一体どういう自意識でこれを書いたのか、のほうに興味がある(つづく わたしは他人や人の生活に興味がないんだなあ、とつくづく思った。作品を好きでも作家自身に興味はないの。日記に書くのではなく、これを作品として他人に読ませるのは何のため?別の構成や書き方ならもう少し興味を持って読めたかも。空腹の技法はおもしろかったのになー。住居変遷がよかった(おわり

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2017/10/02

過去の自分に向かって「君は・・」と語りかける自分史。 久しぶりのオースターです。小説だと思って借りたのですが、ジャンル的にはエッセイに当たるもののようです。 淡々たる饒舌。 これまで住んだ沢山の家の事、恋に落ちた女性たち、家族、30年連れ添い今も深く愛する奥さんについて、時代で並...

過去の自分に向かって「君は・・」と語りかける自分史。 久しぶりのオースターです。小説だと思って借りたのですが、ジャンル的にはエッセイに当たるもののようです。 淡々たる饒舌。 これまで住んだ沢山の家の事、恋に落ちた女性たち、家族、30年連れ添い今も深く愛する奥さんについて、時代で並べるという事もせずに、ただひたすら書きこまれた文章。ほとんどページに余白というものが無く、しばしば見開きの2ページが全て文字で埋められています。 もちろん翻訳なので原文は推測するしか無いのですが、饒舌なのに切れがあって、文章だけで作品の中に引き込まれて行きます(訳者さん、ご苦労様)。 64歳になって老いを感じながら過去を振り返る。ただ、そこにあるのはおセンチなノスタルジーでは無く、淡々とした報告書のようです。来し方を振り返り、確認した上で次のステージに向かう、そんな感じがします。 この「冬の日誌」はフィジカルな振り返りで、対をなすメンタル面が「内面からの報告書」という作品だそうです。少し間をあけて読んでみることにします。

Posted byブクログ