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冬の日誌 の商品レビュー

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19件のお客様レビュー

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2017/08/31

あまりエッセイとか自叙伝のようなものは読みませんが、今回は好きな作家の自叙伝「的」な散文ということで、一つの小説のように受け止めて読んでみました。 面白すぎます。 二人称で自分を呼び、経験したことや感じたことを客観的に描いていますが、それが作家の主観を少し離して読ませてくれるので...

あまりエッセイとか自叙伝のようなものは読みませんが、今回は好きな作家の自叙伝「的」な散文ということで、一つの小説のように受け止めて読んでみました。 面白すぎます。 二人称で自分を呼び、経験したことや感じたことを客観的に描いていますが、それが作家の主観を少し離して読ませてくれるので、自己主張が押し寄せてくるような自叙伝独特の印象はありません。 共感できるエピソードや、考えさせてくれるエピソードが多分に散りばめられていて、書き散らしているような作品でありながら次々とページをめくらせる本です。 事実は小説より奇なり、ともいいますが、まさしくそんな言葉を具現化している作品だと思います。 ポール・オースターってどんな人?とか、どんな作品?とか、興味のある方は、入門編として是非。 なお、対を為す作品で「内面からの報告書」という作品もありますが、それはこれから読みます。

Posted byブクログ

2017/08/16
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

やっと図書館で予約してたのが回ってきたら、お盆かよw その作品世界の稀有な美しさに比べて、多少出自が特殊とは言え、筆者の生の人生は、至って普通なアメリカ人のそれだ。ふーん、リディア・デイヴィスとこんなトコに住んでたんだ〜とか、お母さん三回も結婚したんだ(ボーイスカウトの野球でホームラン打っちゃうヒトだ)〜とか、なんか自分の下世話なトコを見せられて、精神衛生上、宜しくない。

Posted byブクログ

2017/05/29

まずジャケットが素晴らしい。 小説家にとっては作品が自伝でもあって、あえて自伝を書く必要というのは覚え書き以外にはないのではないかな、と思いながら、読んだ。 人生の冬に差し掛かり、自分のこれまでを振り返っているわけだが、自分を「君」と二人称にすることで、自分の半生に対して、あ...

まずジャケットが素晴らしい。 小説家にとっては作品が自伝でもあって、あえて自伝を書く必要というのは覚え書き以外にはないのではないかな、と思いながら、読んだ。 人生の冬に差し掛かり、自分のこれまでを振り返っているわけだが、自分を「君」と二人称にすることで、自分の半生に対して、ある距離感を保って描いたのは成功だと思う。 部分的には、これもまたウィタセクスアリスかーそれは別に興味ないんだよなーと思うところも。

Posted byブクログ

2017/05/28

遅かれ早かれ終わりがくることを自覚する64歳の作家が書いた自叙伝。 移り住んできたたくさんの家を順番に述べる部分もあるが、子供の頃や青年期の思い出、結婚生活での出来事などが順不同に織り込まれ、まさに細切れに記憶を辿っているという感じが味わえる。 著書のいくつかの作品の主題となって...

遅かれ早かれ終わりがくることを自覚する64歳の作家が書いた自叙伝。 移り住んできたたくさんの家を順番に述べる部分もあるが、子供の頃や青年期の思い出、結婚生活での出来事などが順不同に織り込まれ、まさに細切れに記憶を辿っているという感じが味わえる。 著書のいくつかの作品の主題となっている、アイデンティティを意識させられた。

Posted byブクログ

2017/05/20

ポールオースター、現代アメリカ文学を代表するうちの一人である作者(私は割と最近『リバイアサン』からのお付き合い)が晩年を迎えて、己が半生を綴った文字通りの『日誌』。 序盤はやや単調に感じてしまったが、後半、共感とともに引き込まれていた。 ひとりの人間と彼を取り巻く複雑な環境から...

ポールオースター、現代アメリカ文学を代表するうちの一人である作者(私は割と最近『リバイアサン』からのお付き合い)が晩年を迎えて、己が半生を綴った文字通りの『日誌』。 序盤はやや単調に感じてしまったが、後半、共感とともに引き込まれていた。 ひとりの人間と彼を取り巻く複雑な環境からは人生における喪失や哀しみ、決して平坦ではなく、喜びよりは苦悩に彩られている様が強く窺えた。 ただ読後、不思議なことにネガティヴな感情よりむしろ仄かに希望を抱かせる作品であった。 まさに『パンドラの甕』の趣き。

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2017/04/14

Paul Auster's biographic novel. Memories of physical experiences, and life in N.Y. and Paris. (マサト)

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2017/04/07

『全体の文脈の中ではすべて見慣れていても、部分を取り出してしまえばまったくの匿名性に埋もれてしまう。人はみな自分にとって見知らぬ異人なのであり、自分が誰なのかわかっている気がするのは、他人の目の中で生きているからにすぎない』 こうしてまとまった文章は、どれもどこかで読んだようで...

『全体の文脈の中ではすべて見慣れていても、部分を取り出してしまえばまったくの匿名性に埋もれてしまう。人はみな自分にとって見知らぬ異人なのであり、自分が誰なのかわかっている気がするのは、他人の目の中で生きているからにすぎない』 こうしてまとまった文章は、どれもどこかで読んだようでもありながら、今まさに作家の口から語られたばかりの話のようでもある。それは、並べられた記憶のピースが一見何の脈絡もなく、まるで死を前にした人が見るという人生の走馬灯を眺めるような印象を与えるように流れていくからだ。 記憶はいつも突然よみがえる。匂いや色、温度や湿度。五感をくすぐる刺激によっていとも簡単に。だのに思い出そうとすると記憶はいつも霞が掛かったようにぼんやりと輪郭を曖昧にする。楽しかった思い出は特に遠い。そんな凡人の記憶力と比べることも無意味だが、ポール・オースターのメモリーは、そんな曖昧さの欠片も感じさせない程きめ細かい。それが作家の性(さが)なのか、そんな記憶のコレクションが彼を作家に導いたのか。事実は小説よりも希なりと言うけれど、確かにポール・オースターの「トゥルー・ストーリーズ」は、いつも驚きに満ちている。しかし、これは小説の裏話を聞かせるために書かれた文章ではない。記憶を巡る考察と受け止める方がよい。 一つ一つの段落は、語られる時間も前後し、長さもまちまちだが、その一定でないテンポが記憶を手繰り寄せるもどかしさと響き合う。どの話も結論めいたものがある訳でもなく、と言って何も示唆していない訳でもない。記憶に残らないものは存在しないものと同じだと言ったのはエーコだったか。ポール・オースターのしていることは、いつでも記憶の中で再び人々に生を取り戻す行為だとも言えると思う。 凡人とは比べようもないと言ったけれど、ポール・オースターの記憶もまた身体の痛みや刺激と結びついているようであることが、本書を読み進めると理解される。なるほど、あとがきで柴田さんが言う通り。やはり本書は身体に刻まれた記憶を巡る考察、あるいはそのことが読者に及ぼす作用を狙った仕掛けだ。作家自身の感情もまた大きな波のように身体に繰り返し現れる症状と伴に記憶されていることが描かれ、その痛みと伴に感情が甦るかのよう。にもかかわらず、書かれた文章からは、痛みがそれ程伝わっては来ない。伝わるのはただ衝撃を受け止めた身体が起こす反射的な作用、神経の脳への伝達が遮断されて起きる貧血に似た脳の痺れ。もちろんそれは、書かれた出来事を想像して感じるのではなく、似たような記憶を手繰り寄せることで自分自身に再現される身体の反応だ。他人の記憶を辿りながら、自分自身の記憶と身体の結び付きを強く意識させられる。そして、作家自身が被った痛みについては、幽体離脱したものが自分自身を見るようして語られ、無表情のまま押しやられる。それが非凡な作家の天性の語り口なのか創作の技法なのか見極める術もないけれど、他人の記憶までもを呼び起こすポール・オースターの文書には、深い感動がある。

Posted byブクログ

2017/03/26

オースターの64年の人生における体の経験を語るエッセイ。 どこまでが本当の体験談で、どこまでが創作なのかはわからないけれど、人生の晩年を振り返ったときには体のそれぞれに物語があるのだろう。 最後の1ページに集約する想いが心に残る。

Posted byブクログ

2017/03/15

64年分の羅列された身体の描写や、64年間食べ続けたものの羅列を読んでいると突然、生きていく人の存在そのものに愛しさが募りなみだがでてくる。 そして時に、二言三言会話を交わすだけの通りすがりの人間(例えば車の修理工場の人など)との描写。人の形をした天使に出会う事もある、生きている...

64年分の羅列された身体の描写や、64年間食べ続けたものの羅列を読んでいると突然、生きていく人の存在そのものに愛しさが募りなみだがでてくる。 そして時に、二言三言会話を交わすだけの通りすがりの人間(例えば車の修理工場の人など)との描写。人の形をした天使に出会う事もある、生きているとそんな事もある。 柴田先生の朗読を聴けた事は一生忘れないだろう。次に出版される内面の報告書も、楽しみだ。

Posted byブクログ