甲鉄城のカバネリ 追憶の邑 の商品レビュー

笠岡淳平(著者)

2018/10/25

サブキャラ達の過去が語られるので楽しかった。こういうしっかりした話なら、OVAとかで映像化して欲しいくらいだ。
　巣刈も侑那も家族をカバネに殺されている。技工達は様々な経緯があって顕金駅に集まったのだ。
　一番、物語の核心をついていたのは無名の過去だろう。無名の過去を無理に現代につなげるために、若乃を侑那の妹にしたのではないかと思うくらいだ。無名が美馬に拾われて、カバネリになるまでの話はかなり重要だし、カバネリを作るための人体実験は非人道的な内容で、これをアニメでちゃんと描いていれば美馬の悪役っぷりも上がったのではないか。拾われた子供達の最初の仕事は最前線に水を運ぶことなのだが、怖がって運べなかった子供は次の日にはいなくて、戦場に置き去りにされる。美馬の実力主義の組織作りが良くわかるエピソードだ。
　無名がカバネリになる前は、美馬に特別の行為を寄せていないことが驚いた。拾われてすぐに「兄様」と言い始めたわけではないようだ。姉的な存在だった鋭利がカバネリになれなくて死んでしまうまではモノローグで書かれたのだが、そのあとに無名がカバネリになるところは書かれていないのでこれからに期待。無名はあれだけの事件を見て仲間の死を乗り越えて、どうやって美馬を心酔したのか。
　キャラの内面を掘り下げるのであれば、美馬メインの話も見たいな。結構わかりにくいキャラなので、最後の戦いで何を思っていたのか知りたい。