トレント最後の事件 新版 の商品レビュー
半分あたりで事件解決しちゃった?! と思ったら、ここから本番だった。 二転三転ある推理小説。 財界の大物マンダースンが銃殺されたところから始まり、新聞社から探偵兼画家のトレントが現場に送り込まれる。探偵兼画家って?と思ったけど、そうか、画家も人間の外だけじゃなく内面を映し出す仕...
半分あたりで事件解決しちゃった?! と思ったら、ここから本番だった。 二転三転ある推理小説。 財界の大物マンダースンが銃殺されたところから始まり、新聞社から探偵兼画家のトレントが現場に送り込まれる。探偵兼画家って?と思ったけど、そうか、画家も人間の外だけじゃなく内面を映し出す仕事だと思うと、人間観察力は探偵と共通してるなと納得。 マンダースン家の関係者一同に聞き込みをし、事件解決し…そうなところから複雑に入り込んでくる。 前半部分はスピーディーに進んでいく。 後半は二転三転。推理していると言っていいのかどうかわからないけど、予想してない展開でおもしろかった!人が何考えてるかなんて全然わからないね、本当に。 作者ベントリーに乾杯!(完敗)
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乱歩が選ぶ、堂々5位の作品。 あの『アクロイド殺し』(6位)をも上回るとは、一体どんな作品なのか? ベントリーは、なんと〈ディテクション・クラブ〉の2代目会長というすごい人物! 代表作はこの1作だけなのに、名だたる推理作家が集まるクラブの会長までやっているなんて、これはもう気...
乱歩が選ぶ、堂々5位の作品。 あの『アクロイド殺し』(6位)をも上回るとは、一体どんな作品なのか? ベントリーは、なんと〈ディテクション・クラブ〉の2代目会長というすごい人物! 代表作はこの1作だけなのに、名だたる推理作家が集まるクラブの会長までやっているなんて、これはもう気になる!読むしかない。 実業家が別邸で殺害された。 画家にして名探偵のトレントは、容疑者である美しい妻のメイベルと出会うのだった… 他の作品よりも名前を聞かないし、表紙も地味だし全然期待してなかったけど、とんでもなく面白かった!! 読み始めは特に惹かれることもなく読んでたけど、美しいメイベルと出会ってからは探偵トレントが苦悩する人間味のある人物になり、一気に面白くなる。 そして定型的な探偵ではあり得ない行動に出る。 謎めいた超人的な探偵がお決まりだった時代に、型を破ったおしゃべりで人間らしい探偵トレントは、どんなに斬新だったことだろう。 驚くことにこの型破りな作品は、クリスティーのデビュー作よりも7年も前の1913年に発表されている。 そして、素晴らしいのは型を破っただけではなかった。 古典だからと油断していたら、想像していない驚きの展開が(゚д゚)! 今読んでも全く色褪せてない。 人間が描かれていて、捻りもあり、定型的な探偵小説への皮肉も効いていて、最後が予想できないというこの作品は最高に好きなタイプだった。 1913年にまさかこんな探偵小説が出来上がっていたとは思わなかったので驚いた。 タイトルが『トレント最後の事件』だから、この作品の前にトレントシリーズがあると思いきや、この作品はデビュー作。 なぜ「最初」の事件なのに「最後」の事件なのか…!? それは読んでからのお楽しみ(^。^) ★10
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第一章から衝撃の展開で幕があがる本書。探偵が事件を解決し、それで終わりと思いきや、そうはならない本書。江戸川乱歩が絶賛した物語。ミステリファン必読の一冊。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
「スクランブル」に出て来たので。 と言っても、江戸川乱歩が選んだ十選のミステリーに入っているらしく、 ミステリー好きには有名らしい。 前世紀の推理小説からこの作品を期として、本格黄金時代を迎えたということらしい。 確かに恋愛がらみの展開と言い、 二転三転するトリックと言い面白かったが、 それほどすごい作品なのかはよくわからなかった。 つまりは、現在のミステリーに近いからこそ、 普通に読めてしまったのかもしれない。 被害者があわてて身支度をした証拠に、 義歯を忘れたというくだりが可笑しかった。
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この作品はタイトルが「トレント最後の事件」である。 最後というからには少なくとも最初の事件があったはずで、探偵トレントシリーズかと思いきや、本作はベントリーのデビュー作らしい。 シリーズだと最初から順を追ってきちんと読みたいわたしとしては、自分の作った決まりから外れるところだけれ...
この作品はタイトルが「トレント最後の事件」である。 最後というからには少なくとも最初の事件があったはずで、探偵トレントシリーズかと思いきや、本作はベントリーのデビュー作らしい。 シリーズだと最初から順を追ってきちんと読みたいわたしとしては、自分の作った決まりから外れるところだけれど、デビュー作らしいので十分愉しめる。 トレントは画家で、探偵としての才能も備えている。今までも数々の事件解決に貢献してきた。金田一耕助のように風采は余り良くないが、ひとの心に入り込む好印象を与える人物だ。 そのトレントが、アメリカ実業界の大物マンダースンが片目を撃ち抜かれた射殺体となって発見された事件を解決する。 こういういかにも切れ物ではなく、ちょっと頼りないくらいの人物が活躍する設定が好きなので、ここまでは面白い。 作品で扱われるのはマンダースン事件のみで、その後は全く事件は起こらない。 事件自体はなくても、どうなるのかと気がかりな展開をする作品は多いが、それも特にない。 マンダースン夫人が美しく知的で、誰からも好かれる人物であるため、この人物を巡って色々ありそうだと思うが、特に何もない。 比較的早い段階から、これって何なんだと思い始めた。 一応推理もののようだが、怪しい人物はだいたい絞られ、トレントが予想した事実も概ね想像出来た。 そして、想像通りだった。 作品中盤辺りから、物語が推理ものから別方向へ進み始める。そして、謎解きが始まり、やけに早く解決するなと思う。 どこに向かっていくつもりなんだと戸惑い、若干興味が薄れながら読む。 ラストでちょっとしたどんでん返しがある。 しかしそれも、そうなるんじゃないかと思っていた。そのため特に衝撃も受けない。 このどんでん返し部分が、この作品の中では盛り上がる場面だろうと思う。 更に、最後の最後で「トレント最後の事件」というタイトルの意味がわかる。 だから、最後なのかと。 そこも、そんな大袈裟なと感じてしまう。 金田一耕助もよくする事件の真実を隠しておくという、人情味溢れた大団円。 わたしはこういう、ひとりの判断で真実に勝手に蓋をするというのが嫌いだ。 そこが金田一耕助のやさしさで魅力だというひとも多いことはわかるが、やはり誰かに肩入れして真実を捻じ曲げるのはおかしいと感じてしまう。真実を明かしたときに、それに伴い哀しい事実が浮かび上がる悲劇と、誰かの命が失われた事実の解明は別の問題だと思う。それをごっちゃにして、無かったことにしましょうは乱暴すぎるし傲慢だ。 この金田一耕助式大団円が本作でも起きる。 起きると断言してはいけないだろうが、そうだろうことが文章から明らかだ。 ということでラストも好みでない。 帯に、“乱歩が惚れた大傑作”とある。 これに惹かれて読みたくなったのだが、乱歩はどこに惚れたのだろう。 美しい夫人が出てくるところだろうか。 美しい夫人に心乱された人物の行う奇行だろうか。 乱歩作品から感じる倒錯した醜い美というもの程でもなく、至って中庸に感じたのだけれど。 余り好みではなかったけれど、こういう出会いもまた献本の良さなのだと思う読書だった。
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