錆びた太陽 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
たまたま重なったのだろうが、すごい新刊ラッシュである。東日本大震災から6年。福島第1原発周辺の一部地域で、避難指示解除が迫る中、恩田陸さんの新刊のテーマは…原発問題? テロリストによって原発を爆破され、各地に立入制限区域ができてしまった、作中の日本。ロボットが働いているその区域に、ある日、人間の女性が訪問してきた。国税庁所属だというが、人間に接したことがないロボットたちは、戸惑う。 ロボットといっても、外見は人間そのもの。彼ら(?)と、人間・財護徳子との掛け合いは、やたらと軽妙で漫才のようだ。さぞかし重いテーマかと思いきや、すいすい読めてしまう。危険地帯を舞台にしながら、緊張感がない。 とはいえ、現実の原発事故や、福島県民の苦悩を連想させる描写は、随所に見られるし、読みながら苦い気持ちにもなる。それを漫才というオブラートに包み、飲み下しているような作品だろうか。うーむ、真面目なような、ふざけているような…。 そもそも、徳子の目的は何か。彼女の行動は、あまりにも無謀で命知らずである。人間を保護しなくてはならないロボットたちは、振り回されるが、あまり迷惑そうに感じていないように思えるのは、気のせいだろうか。何だか馬が合っているし。 さて、財政が危機的状況の日本が、立入制限区域で極秘に進めていた計画とは。薄々予想できたし、正直驚かなかった。だって、現実にありそうな話なんだもの。やっぱり、軽妙なようで、全体的には苦い話だったのだ。 現在進行のテーマでもあり、重くしようと思えば、いくらでも重くできたはずである。それでも、敢えてガチガチのディストピア小説にしなかったのは、恩田陸らしい。あまり構えずに手に取ってほしいが、訴えるべきところは訴えている。福島第1原発の廃炉作業は、自分が生きているうちに終わらないだろう。
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恩田陸の最新作。直木賞受賞後に立て続けに新刊が出たが、発行日としては本書が一番新しい。 SFのようでもあり、ミステリのようでもあり、ジャンルがよく解らないところは何時もの恩田陸だった。主人公のエキセントリックなキャラクターはやりすぎ感が漂い始めるギリギリのところに留まっていて、そ...
恩田陸の最新作。直木賞受賞後に立て続けに新刊が出たが、発行日としては本書が一番新しい。 SFのようでもあり、ミステリのようでもあり、ジャンルがよく解らないところは何時もの恩田陸だった。主人公のエキセントリックなキャラクターはやりすぎ感が漂い始めるギリギリのところに留まっていて、その辺りも非常に上手い。
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原発事故で汚染された地域を巡回する ロボットたちの居住区に、謎の女・財護徳子が やってきた。ロボットたちは人間である徳子の 指令に従おうとするのだが…。 彼女の目的は一体何なのか?
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最初はなんて本なんだと気分が悪くなったし、楽しみにしていた恩田さんの作品がこれかと、残念に思ったのだけど、読み進めていくとラストになぜか爽快感を味わうという不思議さ! 妙に生々しい現実味と、やっぱりあり得ない設定の中にサブカルな感じも覗き、笑いを誘うというかすこんと抜く感じがさす...
最初はなんて本なんだと気分が悪くなったし、楽しみにしていた恩田さんの作品がこれかと、残念に思ったのだけど、読み進めていくとラストになぜか爽快感を味わうという不思議さ! 妙に生々しい現実味と、やっぱりあり得ない設定の中にサブカルな感じも覗き、笑いを誘うというかすこんと抜く感じがさすが。 嫌な空気のまま、物語が進まないところが憎い。 なんだかんだとコンスタントに恩田さんの新刊が読めて幸せだったーー。 当面刊行はないのだろうか。
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