マインド・クァンチャ の商品レビュー
ヴォイド・シェイパシリーズ第五弾にして完結編。ゼンの長い旅はここでようやく終わった。全て読んで感じた事と言えば作者の別作品である「喜嶋先生の静かな世界」に雰囲気が似ていたような気がするということだ。それはどちらも何かを極めようとした人の存在感というか軌跡のようなものだと思える。
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これで完結なのか。素晴らしく澄んだ小説だった。ゼンさんの今後、気になる、、、、気になりすぎる。 エピローグ後、どのように展開するのか2つの道がある。私は置かれた場所へ戻ったんじゃないかと思う。ゼンさんの全く新しいストーリーがそこから始まると信じて…
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'あの赤い面の刀筋の美しさといったらない。あんな剣が自分も欲しい。 紙一重は、超えられない隔たりなのか。 待て……。 しかし、今ここで見た幻覚でも、自分は斬られたではないか。 夢でも斬られ、幻にも斬られた。 待て、それは違う。 斬られてはいない。自分は生きているではない...
'あの赤い面の刀筋の美しさといったらない。あんな剣が自分も欲しい。 紙一重は、超えられない隔たりなのか。 待て……。 しかし、今ここで見た幻覚でも、自分は斬られたではないか。 夢でも斬られ、幻にも斬られた。 待て、それは違う。 斬られてはいない。自分は生きているではないか。 当たり前なので、また笑ってしまった。今度は本当に声を上げた。 相手は幻なのだから、斬られないのは当たり前。当たり前だが、しかし、斬られていない、という確信が何故かあった。それどころか、自分の刀は、敵の躰に達していたのではないか。手応えもないのに、そう思えるのだ。 そして、そう思った一瞬、躰が震え、笑いも止まり、目を見開いていた。 … まちがいない。 あの剣に勝てる。 理由はわからないが、勝てると思った。 あの美しい剣に。 どうしたのだろう? 何の違いがあった? いや、それも違う。 それこそ、大間違いだ。 そうか……・ 理由など、もしかしていらないものか? これも、身震いを伴う思いつきだった。 ただ、ただ、そんな気がしたのだ。 もう、その答えしか残っていない。 そうとしか考えられない。 … 気が狂ったのではないか、と思い、また笑いたくなった。 山の中、崖の上で、ただ一人。 一心不乱に刀を振り回して踊っていたのだ。 躰は熱く、汗が流れていた。 息は早く、そして白い。 振り返ると、東の空が明らんでいる。 大事なことに気づいた一夜だったな、と思った。 大事なこと? それは何だ? それは……、 大事なことなどない、ということだ。 これが大事と決めることが、すなわち理由というものであって、その理由に縋っていたのが、斬られた自分だったのだ。 それが、間違いだったのだが、否、それが間違いだと決めることもまた、理由にほかならない。 … 自分の刀は、なにも考えずに、襲いかかるものへ向かう。 それを信じることが、剣の道だ。 あの老人は、刀は人を斬る、人を殺すものだと言った。自分もそれを否定することはできない。 しかし、この刀が抜かれ、振られるときには、良いも悪いもない。 生も死もない。 理由などなかったのだ。 あるのは、筋、つまり道のみ。 ただ、己の道があるだけだ'
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常識や思い込みに囚われず、より軽く、より澄んだ思考になれるような気がする本。何度も読み返したいシリーズ。
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そういえば、幻で見た血は、丸くなって宙を飛んでいた。雨が落ちる水面にも丸い模様ができる。月も丸いし、樹の実も丸い。丸いものは、留まることなく転がっていく。それは、流れる水が形を留めないのに似ている。 episode2: Thinking sequence より 「天とは、剣よりも上ですか?」 episode4: Lining conference より 『ヴォイド・シェイパ』シリーズ完結。作中の引用は『能・文楽・歌舞伎』。 常に自分に問い、他者に問い、幾度も惑い、師の教えを反芻し、自分なりの答えを見つける。刀を抜き、交えるときの静けさはこの作家ならではだと思います。『スカイ・クロラ』シリーズを執筆されているときには構想があったそうで、このモードが自分の好みとかなり一致する部分が多く、読んでいるときは楽しい時間が過ごせました。中央公論新社から出る著者の小説はマスト。 舞台は刀のある時代の日本ですが、大っぴらに武士道、侍道、剣豪小説、時代小説、という感じではありません。話の大枠はそれでも、風景描写というか風や樹々、山あいの景色、名もわからない鳥の鳴き声、季節や時間が自然がゆっくりした速度でうつろう様子が想像でき、それもこの小説の持つ魅力のひとつだと思います。 5作とも引用は国内の書籍でかなり良い雰囲気です。反して、メインタイトルと各エピソードのタイトルは英語で統一されており、こういうのが海外にいくと面白いんじゃないかなと思うけど、どうなんでしょう。 文庫の幾何学的な装丁も悪くはないけれど、単行本の、山、竹林、紅葉、霧、最後は桜の色彩豊かな写真も素敵です。
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すべてを失い、ついに無心へと至る。 すべてを手に入れ、そこで道は途絶えた。 ただただ悲しかった。 一筋の煌めきに魅せられて、その煌めきが無意味とされるのが悲しかった。 何者かであることを捨ててただ繰り出された一閃の描写は美しかった。 美しい旅路だった。 終わってしまったかーとい...
すべてを失い、ついに無心へと至る。 すべてを手に入れ、そこで道は途絶えた。 ただただ悲しかった。 一筋の煌めきに魅せられて、その煌めきが無意味とされるのが悲しかった。 何者かであることを捨ててただ繰り出された一閃の描写は美しかった。 美しい旅路だった。 終わってしまったかーという思いでいっぱい。 いろいろだらしがないし、いい加減でボーッと生きてるけども、自分なりに少しでも美しく生きれたらと、何かのタイミングで思ったりする。 美意識?的な意味ではなくて、なんか、潔さみたいなもの。鏡が曇らんかったらいいなーみたいな感じ。
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シリーズ全部読んだ。終始静かで綺麗だった。剣の物語で、「死は当たり前のもので、特別なものではない」っていう森先生的な考えが入ると、どうなるんだろうと思ったけど、やはり出てくる人皆落ち着いていたな〜。 今回、けっこう展開が急だったけど、最終的にはそういう風になるんだろうなってところ...
シリーズ全部読んだ。終始静かで綺麗だった。剣の物語で、「死は当たり前のもので、特別なものではない」っていう森先生的な考えが入ると、どうなるんだろうと思ったけど、やはり出てくる人皆落ち着いていたな〜。 今回、けっこう展開が急だったけど、最終的にはそういう風になるんだろうなってところに落ち着いた。自分としては、ゼンはこのあとこうなる、っていう確信はある。
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都へ向かう道中、ゼンは赤い面をした凄腕の侍と切り合いとなり、瀕死の状態となる。気が付くと、自分の名前、旅の目的、出自など、いろいろなことを忘れてしまっていた。 少しずつ自分を思い出しながら、究極の剣とは何かを考える。 続きがすごく読みたい。
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ヴォイド・シェイパシリーズ、第五作。完結巻。ずーっと温めていましたが、とうとう読み終えてしまいました…嗚呼。記憶をほぼ全て失い、それと引き換えに剣を究めたゼン。そして天下人になる——。やはり斬り合いのシーンは詩のように美しく、短いセンテンスで、川の流れのように心地良く響く。最後はノギとの再会で終わる。今後のゼンの行方はどうなるのか、それは読者の心に——。
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ゼンの旅がついに幕を閉じた。記憶を失ったことで失ったもの、得たもの。体が覚えている感覚。記憶を失った分シンプルに考えて身軽になった部分もある。だからこそ、勝てた戦いもあるのか。剣の道を突き詰めた結果はゼンが求めたものか、否か。
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