歌集 人魚 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
染野先生! 図書館のビブリオ紹介本の中に並んでいたのを偶然発見、これは借りなければ。 教師の時の生徒に真摯に向き合い葛藤苦悩した様を痛々しい感情ではあえて直接表現はしていないが、日常の歌では感情をあらわにしてその差に驚く 余韻を残すためのリズムや結びの言葉選びが心地よい ひらがなが効果的に使われる例がありお手本にしたい 好きな歌 手袋が手袋のまま落ちていた校門を出て右に曲がれば 妻の炊くかぼちゃの湯気がやけに濃い生徒を叱り過ぎた火曜日 ぼくの知らぬ過去が散らばる 教室の後ろでふいに筆箱落ちて すでに老いて父の広げる間取図のセキスイハイムの「キス」のみが見ゆ 君でなきひとに会うにもバス停にひかり浴びつつ待たねばならぬ 怒りにて冷えた身体を浴槽に沈める 怒りのみ濡れていく 海を見にいきたかったなよろこびも怒りも捨てて君だけ連れて 鳴りやまぬ拍手のごとく湯の沸けば電気ケトルを傾けにけり 年賀状に家族写真を載せるのはもういいやめろあてつけかと言わず 先生が恋は罪悪と言いしときのざいあくのアクセント知りたし
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『人魚』は染野太朗氏の第二歌集。第一歌集『あの日の海』の強いいらだちとなまな現実から大きく舵を切った歌集となった。(野口あや子)
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