白い衝動 の商品レビュー
スクールカウンセラーをする主人公のもとに、人を殺してみたくなると相談をする高校生が現れる。少し前に学校で起きた山羊の切り付け事件もこの高校生がしたと告白。 時を同じくして、過去に凶悪な犯罪を起こした犯罪者が同じ町に引っ越してくるとの情報が入ってきて、騒動が大きくなり町から追い出し...
スクールカウンセラーをする主人公のもとに、人を殺してみたくなると相談をする高校生が現れる。少し前に学校で起きた山羊の切り付け事件もこの高校生がしたと告白。 時を同じくして、過去に凶悪な犯罪を起こした犯罪者が同じ町に引っ越してくるとの情報が入ってきて、騒動が大きくなり町から追い出していくという流れが巻き起こる。 主人公は人とは違う個性も受け入れるべきとの信条を持っているが、高校生の対応や引っ越してきた犯罪者へ対する思いなど葛藤を抱えながらスクールカウンセラーとして対応していくところに共感を覚えながら読み進めていたら、主人公にも驚きの事実が隠されていることが判明し、最後まで楽しく読むことができる作品であった。
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難しくなりそうな話を一人のスクールカウンセラーの視点から緊張感と不穏さをもって描いている。 異常者への理解と、無理解、偏見の中で露わになるのは「では、お前たちは普通なのか。自分たちと違う存在を見ると団結し、排除しようとするお前たちは普通なのか?」という問いかけである。 とても苦味...
難しくなりそうな話を一人のスクールカウンセラーの視点から緊張感と不穏さをもって描いている。 異常者への理解と、無理解、偏見の中で露わになるのは「では、お前たちは普通なのか。自分たちと違う存在を見ると団結し、排除しようとするお前たちは普通なのか?」という問いかけである。 とても苦味のある展開で興味深い。推理小説としても捻りが効いている。 自分たちと違う存在は異常だ、排除すべきだ、その一方で「多様性大好き!」だのと叫んでいる輩にこの本をそっと渡してやりたい。
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「人を殺してみたい」。小中高一貫校でスクールカウンセラーとして働く奥貫千早のもとを訪れた高1の生徒がこう語る。そして千早の住む町に、連続一家監禁事件を起こした入壱要(しかも彼は過去の関係者!)が暮らしていることが判明する。存在する悪をどう扱うのか、問題提起の一冊!
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犯罪者をどうやって受け入れるか。自分の地域に来たら。心理学をかじった身として、受け入れるべきという千早の気持ちはよく分かる。でも人を殺したいとか、悪いとは分かっていてもどうにもならない衝動があるというのも何となくわかる気はする。私は偏見に満ち満ちているので、すぐ自分と合わない人は『合わない』と決めつけるし、白石重三のように絶対悪の人がいると思っている。白石重三はすごい人物だ。殺したいほど憎かったはずなのに、その相手を支援する方向に行くとは。たとえ隔離でもその方が穏やかに過ごせるなら。私も自ら引きこもりとなってるようなものだし。最後の山羊使いの犯人はちょっと納得しがたい。この子が山羊を叩き殺すとは。なんのためにカウンセリングルームに来ていたのか。あと千早と紀文の夫婦が続いてるのもよく分からなかった。
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殺人衝動とか持ってる高校生の野津秋成、目が座っててスクールカウンセラーの奥貫千早の反応を窺いながら会話を愉しんでいるようでぞーっとする。 もう一人、3件の女子高生に暴行、監禁、強姦と両親の目の前で陵辱し刑期を終えてこの街に越してきて、金属バットをもって公園をうろついてる入壱。 ...
殺人衝動とか持ってる高校生の野津秋成、目が座っててスクールカウンセラーの奥貫千早の反応を窺いながら会話を愉しんでいるようでぞーっとする。 もう一人、3件の女子高生に暴行、監禁、強姦と両親の目の前で陵辱し刑期を終えてこの街に越してきて、金属バットをもって公園をうろついてる入壱。 服役を終えた人間と、犯罪願望のある人間。 ビフォーアフターのように映ってしまいます。 入壱は更生したけど再犯しないように監視してほしいと思ってしまう。いい大人が金属バットをもってうろつくとか見るからに不審者だし職質ものですよね。 私情を挟まずシンプルに考えれば社会復帰してるならOKだし、思ってるだけで実行してなければこれも個性とゆうことでOKなんでしょうね。 私としてはソーシャルディスタンスで10m以内には近づいて欲しくないですけど。山で熊と出会いたくない感じに似てる扱いです。 この二人、責任能力が問える状態にある様子ですが悪いことだと認識あるなら罪に問えるけど、反社会的な行動をして喜びを感じてしまうって性格だと反省できないだろうから面倒そうです。 衝動が満たされない状況が拷問にあってるようで息苦しさ覚えるんでしょうか? 感情をコントロールすることってすごく辛そうだし、たいていの場合、思考停止して充分な睡眠取れれば大丈夫じゃないかなww
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「悪はある。悪としか呼びようのないものが。」 「我々にできるのは三つだけだ。排除、隔離、そして包摂」 「包摂とは洗脳だ。社会とアウトサイダーがどちらも最小限の忍耐で暮らしていけるよう、上手に洗脳してあげることだ。」 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 奥貫千早は小中高一貫校「天錠学園」でスク...
「悪はある。悪としか呼びようのないものが。」 「我々にできるのは三つだけだ。排除、隔離、そして包摂」 「包摂とは洗脳だ。社会とアウトサイダーがどちらも最小限の忍耐で暮らしていけるよう、上手に洗脳してあげることだ。」 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 奥貫千早は小中高一貫校「天錠学園」でスクールカウンセラーをしている。最近 学校で飼育されている山羊のゲンジロウが何者かによって傷つけられる事件がおきた。生徒たちの間では「金属バットをもってうろつく【シロアタマ】という幽霊の仕業」だという噂が飛び交っていた。 ある日、千早のもとに 高等部一年の秋成が訪れる。 ─山羊は僕がやりました ─ぼくは、人を殺してみたい ─誰か、先生にとって邪魔な人はいませんか?ぼくに、その人を殺させてくれませんか? この日から定期的に秋成はカウンセリングに通い始める。 同じ頃、千早の住む街に 入壱という男が引っ越してきた。入壱は十五年前、三人の女子高生を両親の目の前で陵辱し 危害を加えるという犯罪を犯していた。服役を終えたとはいえ、街の住人は入壱を追い出そうと集会を開くことになった。千早は帰宅時に バットを持って公園を歩く入壱と遭遇する。どうやら【シロアタマ】とは入壱のようだ。 罪を犯した人間。殺害願望のある人間。 人は、社会は、どこまで「他人」を受け入れられるのか─。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 簡単には答えの出ない読書です…。 例えば 入壱のような人間が 明日から我が家の隣に越してきますとなったら、秋成のような子が 自分の子どもと同じ学校に通っていたら。きっと毎日 不安でしょうがないでしょう。それこそ、千早の夫の紀文と同じように「家族に危害を加えられる前に 追い出したい」と願うかも…。 でも、追い出された人間は どこへ行けばいいのか。 今まで読んできた呉さんの作品とは少し違うなと思ったのは「スワン」や「爆弾」のように憎むべき絶対悪がいないことなのかな。加害者の親族、被害者の親族、学校、マンションの住人、千早と夫、そして加害者。みんなが何かしら苦しんでいる。 秋成は「ぼくが人を殺して、家族が苦しむのはいやだから ぼくはぼくを諦める」と悩んでいるし、入壱は「みんな自分から離れたいから『孤人』だ」と言う。そして秋成の母も、入壱を保護してる叔父も…。 「だから、許してあげましょう。被害者は彼を憎み続けるかもしれない。私たちは彼を恐れ続けるかもしれない。けれどあなたが、いてもいいよ、ってそう思えるなら、あなたはそう思ってもいいんだから。」 ラストはミステリーっぽくなり 急展開。 天錠学園の学園祭。 窓の外に入壱に似た人物を見かけた千早は、慌てて中庭に向かうと そこには死んだゲンジロウを抱いた入壱がいた。 ゲンジロウを殺したのは本当に入壱なのか。 そして明かされる千早の過去と闇。 わーー!やっぱり呉さんだった! 最後の一行なんてまさにっ!!ゾワッ 未読なのは「ロスト」「蜃気楼の犬」「バットビート」「俺たちのなんちゃら」かな あとは … 来月 発売の「爆弾2」だねっヽ(´▽`)ノ.。゚+. (いっきゅうさんの『チキンカツを食べたい衝動』は治まったのだろうか…)
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主人公・千早の言う「包摂」、心情的に受け入れ難い。刑期を終えた人に対する差別はいけないという一方、実際のところ共同体において、他者を害したい衝動を持った人、他者に対して取り返しのつかないことをしてしまった人と一緒にいたくないというのは当たり前の心理だと思う。ただ「包摂」は千早自身...
主人公・千早の言う「包摂」、心情的に受け入れ難い。刑期を終えた人に対する差別はいけないという一方、実際のところ共同体において、他者を害したい衝動を持った人、他者に対して取り返しのつかないことをしてしまった人と一緒にいたくないというのは当たり前の心理だと思う。ただ「包摂」は千早自身を救うための祈りだと考えるとしっくりはくる。
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※このレビューにはネタバレを含みます
非常に興味深く好みのテーマだった。 悪とは何か、加害者家族、加害者の更生、被害者遺族等色んなテーマが書かれてて一気読み。 絶対悪ってのは存在すると思う。 ただし悪は時代や価値観やら宗教やらで、何が悪なのかは変わってくると思う。 白い山羊を殺したのが、加奈。ただし加奈は本当の加奈じゃなくて入壱の親戚の子。 秋成が殺したのかと思ってたのでびっくり!
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連続一家監禁事件を起こした男が、刑期を終え、自分が住む町に暮らしていることがわかったら。「人を殺してみたい」と告白する男子高校生。人はどこまで受け入れる事ができるか。小説というより何か学術本、哲学書を読んでる感じで、なかなか進まなかった。所詮他人の考えてる事なんてわからない。そん...
連続一家監禁事件を起こした男が、刑期を終え、自分が住む町に暮らしていることがわかったら。「人を殺してみたい」と告白する男子高校生。人はどこまで受け入れる事ができるか。小説というより何か学術本、哲学書を読んでる感じで、なかなか進まなかった。所詮他人の考えてる事なんてわからない。そんな他人、しかも犯罪を犯した者を信じるなんて無理。信じられない者を受け入れる事なんて尚更だ。
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「他人を受け入れたいという気持ちは、他人に受け入れてほしいという願いの裏返し」その通りだと思う。だから悲しくなったり裏切られたと思ったり、喜んだり安堵したりするのだろう。共感できるところと、そうなんだろうかと考えさせられるところがあって引き込まれた。いろいろ考える。
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