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質的社会調査の方法 の商品レビュー

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11件のお客様レビュー

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2024/07/26

◾️他者の合理性を理解する  こうした、私たちにはあまり縁のない人びとの、一見すると不合理な行為選択の背後にある合理性やもっともな理由のことを、ここでは「他者の合理性」という言葉で表現したいと思います。社会学、特に質的調査にもとづく社会学の、もっとも重要な目的は、私たちとは縁のな...

◾️他者の合理性を理解する  こうした、私たちにはあまり縁のない人びとの、一見すると不合理な行為選択の背後にある合理性やもっともな理由のことを、ここでは「他者の合理性」という言葉で表現したいと思います。社会学、特に質的調査にもとづく社会学の、もっとも重要な目的は、私たちとは縁のない人びとの、「一見すると」不合理な行為の背後にある「他者の合理性」を、誰にもわかるかたちで記述し、説明し、解釈することにあります。  質的調査の社会学の仕事は、いろいろありますが、つきつめて考えると、この「行為の合理性の理解」ということに尽きます。人びとの行為や相互行為、あるいはその「人生」には、必ず理由や動機が存在するのです。その行為がなされるだけの理由を見つけ出し、ほかの人びとにもわかるようなかたちでそれを記述し説明することが、行為を理解する、ということです。理由や動機の多くは、当事者にとっての「利益」や「利得」、あるいは(経済学の用語でいえば)「効用」というものに結びついています。もちろんこの行為や利得というものは、単に金銭的な利益なのではありません。それは非常に広い意味において使われています。 ◾️参与観察の視点  私は参与観察とは、特定の人びとの視点に依拠して物事を捉える営みだと考えています。…  このように参与観察とは、フィールドのあらゆる関係者を万遍なく扱うのではなく、特定の人びとに観察の視点を係留してそこから調査を開始する営為だと思います。複数の視点を超越した地点から、第三者的に物事を捉えるものではないのです。では参与観察は、恣意的な視点に基づいた恣意的な観察なのかと言われると、それは違います。なぜなら、参与観察の重要な著作の多くは、特定の人びとの視点に立って物事を観察しながら、同時にその成果がどのような人びとの視点を経由したものであるかを自己言及的に記述するからです。 ◾️インタビューに関する2つのアドバイス  …ひとつは、「頭のなかに情景を描きながら聞く」ということと、「なるべくそのときの感情や印象を聞く」ということです。頭のなかに情景を描きなが聞くと、その「絵」の足りないところを埋めていく感じで、かなり具体的な質問をすることができます。それから、これも繰り返しになりますが、たとえば学校のことを聞くときでも、何年にどこのどういう学校に入ったか、という事実だけを聞くのではなくて、その学校でどういう時間を過ごしたのか、主観や感情や印象に関することをじっくりと聞いてください。  …  もうひとつ、インタビュー中に気をつけなければならないことで、とても大切なことがあります。それは、語り手の語りを絶対に否定しない、ということです。これはとても、とても重要なことです。私たちは、議論をするために誰かにインタビューするのではありませんし、ましてや、相手の考えの間違っているところを指摘して、言い負かしてしまうということは、聞き手の行為としては最低のことです。たとえ相手が犯罪者でも差別者でも、その語りや意見をその場で否定したり、言い返したりしてはいけません。あるいは、相手の生き方や価値観の間違っているところを、上から否定して説教したりアドバイスしたりしてもダメです。

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2023/04/01

質的社会調査、社会学の入門書である。大学院に在籍しながら、「調査」の仕方を勉強してこなかった自分にとって、とても良い入門書となった。 ただそこにあるのは、ノウハウではない。「他者の合理性の理解社会学」と副題がついたことからも想像できるように、著者3名の経験に基づいて調査を通して同...

質的社会調査、社会学の入門書である。大学院に在籍しながら、「調査」の仕方を勉強してこなかった自分にとって、とても良い入門書となった。 ただそこにあるのは、ノウハウではない。「他者の合理性の理解社会学」と副題がついたことからも想像できるように、著者3名の経験に基づいて調査を通して同社会と関わるか、が書かれていて、教科書にありがちな無味乾燥さはない。読み物としても抜群に面白い。 あとがきに「『社会調査』である限りは、人びととのコミュニケーションの中で鍛えられ、試され、厳しく批判される」とある。この一節がこの本全体を貫く思想になっていると思う。 論文のテーマを再構築していこうとする中、非常に有意義な本であったが、それにはとどまらない、さまざまなことを考えさせられた。

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2023/03/09

有斐閣なのでフィールドワークの教科書という位置づけであるが、研究者のインタビューの関わりがとても丁寧に具体的に書いてあるので、フィールドワークについて書かれた教科書の中で最も面白い本の一つである。  質的調査の領域の説明をすべて網羅しているわけではないが、フィールドワークをどのよ...

有斐閣なのでフィールドワークの教科書という位置づけであるが、研究者のインタビューの関わりがとても丁寧に具体的に書いてあるので、フィールドワークについて書かれた教科書の中で最も面白い本の一つである。  質的調査の領域の説明をすべて網羅しているわけではないが、フィールドワークをどのようにすればいいのだろうかということについては、学部生から修士の院生、博士論文を書こうとしている院生まで全ての学生に役立つと思われる。

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2022/06/12

とっても面白かった、知的興奮をありがとう。 最も興奮したのは、自分が仕事やプライベートで楽しくやっている街歩きやフィールドワークが、実は無意識に社会学的方法をだいぶ実践できていること。 何も習ってないのに自分でできすぎててビビッた。天性のフィールドワーカー なんですか!? 大学...

とっても面白かった、知的興奮をありがとう。 最も興奮したのは、自分が仕事やプライベートで楽しくやっている街歩きやフィールドワークが、実は無意識に社会学的方法をだいぶ実践できていること。 何も習ってないのに自分でできすぎててビビッた。天性のフィールドワーカー なんですか!? 大学院に行きたい気持ちもなおさら高まった。 それからもちろん色々気づきもあった。 以下備忘録。 ☆社会学=私たちとは縁のない人びとの。一見 すると不合理な行為の背後にある 「他者の合理性」を誰にでも分かる かたちで記述し、説明し、解釈すること ☆社会は、複数の、お互い矛盾する「ゲーム」で 構成されている。それらが同時に進行して いる。社会学は、自分が参加しているゲームや 社会の主流派となっているもの以外の「もう ひとつのゲーム」の存在を明らかにする。 思ったこと。「何者としてフィールドワークでふるまちか」と いう点、散かかれてるけど自分のばあい「記者」or「きょう みあって学びたい人」のどっちかを時によって自由に選 択してる。し、今までそれで不都合だった時ない。と思っている。ただP60の「フィールドにより対象との関係性 がちがった」というのは興味深い。もう少し自分でも意 識してみてもいいかも。 社会学者は、記者よりも「取材の暴力性」ということに 圧倒的に真摯に謙虚にむきあってると思う。自分ももっと ←誰の、何のための取材か」「応じてくれた人の親切 心にどう報いることができるか」をきちんと考えよう。 ・データ整理から疑問がうかびあがる」「矛盾の 存在にきづく」「おもしろいところ、半年徴的な ところをピックアップし、フィールドワークの焦点 をしぼる」「その際に、データはもちろん、先行 研究の中に位置づけることで問いを見い出す」 ⇒それらの作業を通して、 結論に合わせて問いを作る。 ☆「人々」ではなく、「人々の対峙する世界を知る」 「人々」を知るだと、人々の視点ではなくそれを分析 する分析者の視点で考えることになってしまう。「人々の対峙する世界」を知ることは、対象者を受動的な容器としてではなく、能動的な働きかけを行う 主体としてとらえることができる。(倉敷水島地区の女フィールドワークby中野卓の例) ☆人々の行為の背景にある様々な事情、経緯、構造的 条件や制約を記述し、その行為がどのようなプロセスで 選択されたかを理解する。それは無理解が生む 「自己責任論」の解体につながる。 ☆生活史法=語り手が何を語ったか」「どう語ったか」、その語りを、統計データや履史的資料などをもとに「歴史構造」の中にいちづける。そしてその社会問題についての新しい理論を作る

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2021/12/10

社会学の調査について丁寧に書かれている。 フレームとその間の肉付けが、冷静と情熱の間を行き来しながら説明されているように思えた。 最後にあるブックガイドと索引が、さらに深みを与えてくれる。

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2021/12/02

社会調査の方法だけでなく、社会学全般についてわかりやすく書かれていて良かった。もっと早くにこの本を読むべきだったと後悔。 以下、読書メモ 面白いの軸の話 自分と他人 ゴシップ的面白さと社会学学的面白さ →バージョンアップができるか否か メモの重要性 出来事のメモ(雑記メモ 出...

社会調査の方法だけでなく、社会学全般についてわかりやすく書かれていて良かった。もっと早くにこの本を読むべきだったと後悔。 以下、読書メモ 面白いの軸の話 自分と他人 ゴシップ的面白さと社会学学的面白さ →バージョンアップができるか否か メモの重要性 出来事のメモ(雑記メモ 出来事から浮かんだ社会学的発想(論点メモ 日記(気分を書く 人ではなく、人の捉え方を見る 「時間的予見」の問題としての貧困 論文執筆 理論を使う 枝葉を切り落とす、一言にまとめる 調べたことを書いても論文にはならない 調べたことから何を考え、何を調べ直したのか 「他者の合理性」 枠組みを問い直し、対象を論じ直す   ↕️ 「自己の不合理性」 自らの行いが不合理である点を知り直し、通俗的なものの見方を問い直す 「他者の不合理性」 調べる前からわかっていることしか書かれていない 調査の暴力性 個人の生活史に耳を傾ける(語り) テーマである社会問題の背景知識を得る(歴史と構造) その社会問題についての新しい見方を獲得する(理論)

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2021/06/05

オーラルヒストリーの大事なところはそれが事実かどうかではなく、話した本人にとって心理的に本当だったということ。 他者の合理性を会話を通して理解する。 映画なども有効? 事実を聞くことと、語りを聞くこと。 どのようにその会話、生活史ができてきたかを分析する。 調査は暴力である、その...

オーラルヒストリーの大事なところはそれが事実かどうかではなく、話した本人にとって心理的に本当だったということ。 他者の合理性を会話を通して理解する。 映画なども有効? 事実を聞くことと、語りを聞くこと。 どのようにその会話、生活史ができてきたかを分析する。 調査は暴力である、その暴力性に向き合い、可能な限り常に問い続ける必要がある。 語り、歴史と構造、理論の3つの間での往復が大切。 経験の全体を解釈する。 理論的先入観。

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2020/09/16

この本を読むのは2回目だ。正直に言うと、読んでいる途中でなんだか見覚えがあるなと感じていて、途中で既に一度読んでいたことを思い出した。初めて読んだのは一年くらい前だったと思う(後で調べたら二年前だった・・)。質的調査の入門書として読んでいて、紹介されている参考文献を何冊か購入す...

この本を読むのは2回目だ。正直に言うと、読んでいる途中でなんだか見覚えがあるなと感じていて、途中で既に一度読んでいたことを思い出した。初めて読んだのは一年くらい前だったと思う(後で調べたら二年前だった・・)。質的調査の入門書として読んでいて、紹介されている参考文献を何冊か購入するくらいにはちゃんと興味も持っていた。ただし、購入した参考文献は未だ積読になっていて、今回の読書でさらに本書のブックガイドより数冊購入してしまった。 そもそもは、昨今の流行もあり、量的調査分析に興味があった。調査というか、データ分析?って何をするのレベルで関心があり、調査法の入門書や統計について何冊か読んでいた。量的調査というと、客観的で「正しい」ような気がしていて、RやPythonなどのツールを使って分析するのもカッコいいような気もしていた。何より「正しさ」に近づくアプローチなのだと思っていた。でも、量的調査の本を読み進めるうちに、そうでもなさそうだと思うようになってきた。分析対象であるデータは「客観的」であるにせよ、結局、分析である以上、そこに意味を見出すことになり、その解釈は様々な幅が出てくるし、そもそもデータの定義や分析方法は調査者の匙加減となる部分があることは避けられないのではないかと考えるようになった。統計手法自体は、数学的な裏付けがあるものなのだろうが、その運用方法の段階で「客観性」が必ずしも担保されなくなる。そもそも「客観的」な「正しさ」なるものがあると考えること自体に無理があるので、いたしかたない。 そんなモヤモヤを覚えている時に、では量的調査と一緒によく語られている質的調査とはどういうものなのか気になり出して手にしたのが本書だった。結果としては、全くの予備知識のない自分のような読者でも抵抗なく読み進められるように書かれていた。質的調査手法である、フィールドワーク、参与観察、生活史について三人の著者がそれぞれ説明してくれる。質的調査と量的調査は綺麗に分けられるものではないこと、他者を理解すること(そもそも他者を理解することとは?)、などなどを三人が自身の調査経験をもとに解説してくれる。何より質的調査が持つ魅力を伝えようとする意気込みが伝わってくる。これも面白いよ、これも面白いよとオススメの本を紹介してくれるので、買ってしまったのが以下4冊だ。 オスカー・ルイス「貧困の文化ーメキシコの<五つの家族>」ちくま学芸文庫 ロバート・マーフィー「ボディ・サイレントー病と障害の人類学」平凡社 桜井厚「境界文化のライフストーリー」せりか書房 丸山里美「女性ホームレスとして生きるー貧困と排除の社会学」世界思想社

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2020/07/10

下記URLより閲覧できます※学内限定。ただし学認を利用すれば学外も可 https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000046035

Posted byブクログ

2018/11/15

岸雅彦、石岡丈昇、丸山里美 中野卓、桜井厚、谷富夫の理論を通して、語りは「事実」か「物語」という問題を洗い直す下りはいずれ再読する

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