新編現代と戦略 の商品レビュー
岡崎久彦氏との国家戦略に関する論争から生まれた書である。防衛論争の座標軸、安全保障と国民経済、ソ連の脅威、有事、戦略的思考、摩擦と危機管理、そして岡崎氏との対論からなる。著者は吉田ドクトリンを肯定する立場。清水幾太郎、森嶋通夫といったその他の論者についても触れており、日本の戦後の...
岡崎久彦氏との国家戦略に関する論争から生まれた書である。防衛論争の座標軸、安全保障と国民経済、ソ連の脅威、有事、戦略的思考、摩擦と危機管理、そして岡崎氏との対論からなる。著者は吉田ドクトリンを肯定する立場。清水幾太郎、森嶋通夫といったその他の論者についても触れており、日本の戦後の国家戦略論がどう変遷してきたかの概略を知ることができる。そして著者の論考は数十年を経た今の日本にも当てはまるところが多々あると感じる。 野党が政権担当の可能性がないから理想と正論を掲げることができ、それが結果として日本の軍事化を阻んだ。第二次大戦の米国で大砲を作ることでバターも増えるという軍事ケインズ主義とでもいうものが生まれたが、吉田ドクトリンが日本におけるそれの発生を阻んだ。実戦能力と無関係に限界的改善を重ね、無駄な費用がかさんで技術的停滞と退廃の兆候を見せる軍事ハードウェア産業をバロック兵器廠と呼んでいる。覚醒剤としての軍事費、武器輸出という側面。ただ陳腐化や不安定さといったリスクがあり、絶えず更新しなければならなくなるために生じたフォローオンシステムの制度化。エックス非効率を生み出し企業を腐蝕させる。戦勝すると批判を許さない聖域としての軍部勢力が国内に確立される。機構内部の要請と必要から軍備増強を計画、そこから逆算して仮想敵が想定される。
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東西対立時代の政治分析、日本の立ち位置、政策についての論評。 20世紀の現在から見ると答え合わせ的な面もあるがいまだに色褪せない分析と論理組み立て能力。
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戦後日本の経済重視・軽武装路線を「吉田ドクトリン」と定義づけた国家戦略論の名著。岡崎久彦との対論を併録。文藝春秋読者賞受賞。〈解説〉中本義彦
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