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いじめのある世界に生きる君たちへ の商品レビュー

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28件のお客様レビュー

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2018/05/20

とある編集者の方から「ぜひ」と勧められて手にしたのが本書。 いい本と出合うことができました。 本書はいじめられっ子だった精神科医が書いた「いじめ論」。 読む前と読んだ後では、確実にいじめに対する考え方、さらには対応が変わって来るでしょう。 いじめが、どのように人間を破壊していくか...

とある編集者の方から「ぜひ」と勧められて手にしたのが本書。 いい本と出合うことができました。 本書はいじめられっ子だった精神科医が書いた「いじめ論」。 読む前と読んだ後では、確実にいじめに対する考え方、さらには対応が変わって来るでしょう。 いじめが、どのように人間を破壊していくか、そのプロセスが誰でも分かるように易しい言葉で書かれています(小学生でも読めるはず)。 私はその巧妙なプロセスを辿りながら、何度も戦慄しました。 本書によれば、いじめは①孤立化②無力化③透明化―というプロセスを辿って、いじめられっ子を巧みに追い詰め、人間性を破壊します。 酷いのは、いじめの被害者に「いじめられるのは自分が悪いせい」と信じ込ませてしまうことでしょう。 「いじめのない日はまるで神の恵みのようです。やがて被害者はこの恵みを、加害者からのありがたい贈り物だと感じるようになります。」 何という倒錯でしょうか。 よく、「いじめはなくならない」とか「いじめは犯罪じゃない」という言葉を耳にしますが、いじめは紛うかたなき犯罪です、なくさなければなりません。 本書にも、「いじめのかなりの部分は、学校の外で行われれば立派な犯罪です」とあります。 重く受け止めなければなりますまい。 では、いじめに大人たちはどのように対処すればいいのでしょうか。 本書には、「まずいじめられている子どもの安全の確保であり、孤立感の解消であり、二度と孤立させないという大人の責任ある保障の言葉であり、その実行である」とあるだけで、具体的な処方箋は書かれていません。 私はしかし、それこそが本書の値打ちだろうと思いました。 著者は「いじめられっ子」だっただけに、いじめに万能薬などないと分かっているのです。 安直な対策を示す類書とは一線を画していると言えましょう。 本書でいじめの構造を理解したうえで、大人たちが自ら考えてケースバイケースで対応する。 親御さんはもちろん学校の先生たちにも、ぜひ読んでほしい1冊です。

Posted byブクログ

2018/03/17

精神科医の筆者が書いた「いじめの政治学」という論文を小学校高学年程度で読めるように簡単に記載しなおしたもの。 簡単な言葉で非常に大事なことが述べてある。 「いじめは絶対ダメ」「いけないこと」とだけ単純に言う本ではなく、いじめる側、いじめられる側がどのようにいじめの構図にはまって...

精神科医の筆者が書いた「いじめの政治学」という論文を小学校高学年程度で読めるように簡単に記載しなおしたもの。 簡単な言葉で非常に大事なことが述べてある。 「いじめは絶対ダメ」「いけないこと」とだけ単純に言う本ではなく、いじめる側、いじめられる側がどのようにいじめの構図にはまっていくか、その仕組みを、精神的な変化もともに仕組を解析して教えてくれる。 いじめの渦中にいるいじめ被害者が、自分に非があるように思ってしまい、どんどん萎縮していってしまうことや、加害者側が自由にふるまっているようで、意外と周りの世論のようなものを気にしながら、したたかに周りを味方に巻き込んでいることなどが、具体的に書かれている。 いじめにより、被害者は視野がどんどん狭まっていき、社会がいじめる加害者と被害者だけの関係になってしまう。その中で周りが見えなくなりどんどん悪循環になり、被害者が追い込まれてしまう。 この本はそのような状態のいじめに関わる被害者へ自分を客観的に見る視点を提供する。自分は悪くない、いじめは犯罪であるという意識を強く持つこと。を提案する。 また、いじめられる子供たちが、大人に簡単に助けを求められない事(そんなことしたら、子供の世界は崩れ去って終わってしまうこと)など、子供の社会(大人よりも厳しい無政府社会)目線からの視点が新鮮である。 筆者自体が子供時代にいじめにあっていること、様々なカウンセリングから導き出されている深い内容。また、筆者がいじめられる側の立場に真摯にたっていることが分かる。(救ってやろうという姿勢ではなく、いじめられている側に寄り添う姿勢) いじめに関わっている人々に広く読んでもらいたい本。

Posted byブクログ

2018/01/09
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

子どもでも読めるくらいに読みやすいく書かれているが、構成・編集者もあとがきで書いているように、いじめを人間奴隷化のプロセスととらえ、巧妙に行われる孤立化→無力化→透明化という部分には息が詰まる。正直、子供には読ませたくないほどに、いじめの辛さが感じ取れる。 その三段階のプロセス以外に参考になったのは、下記2点。 ①いじめ かどうかの境界線は、やる側、やられる側に「立場の入れ替え」があるかどうか。 ②家の中で権力を制限され、権力的に支配されている子どもほど、権力に飢えている。

Posted byブクログ

2017/11/24

短い文章の中に、いじめに対する深い洞察といじめられてる子どもへのいたわりが込められている。この本を読んでいじめられている子が自分を客観視し、重荷から解放されるとは思わない。むしろ、第三者が当事者にこの本を勧めるというその行為自体が救いになる可能性はあるだろう。それこそ、孤立化から...

短い文章の中に、いじめに対する深い洞察といじめられてる子どもへのいたわりが込められている。この本を読んでいじめられている子が自分を客観視し、重荷から解放されるとは思わない。むしろ、第三者が当事者にこの本を勧めるというその行為自体が救いになる可能性はあるだろう。それこそ、孤立化から無力化、透明化への進行を食い止めることになるのだから。

Posted byブクログ

2017/08/08

いじめに関する本は子供向けから大人向け、小説、教育・心理学専門書など山のようにあり、まあそれぞれためになることが書いてあるようにも思えるが、これは子どもも(小学校高学年くらいなら)読める文章で書かれている本としては、出色の本ではないか。 いじめの構造と展開が非常にクリアにまとめら...

いじめに関する本は子供向けから大人向け、小説、教育・心理学専門書など山のようにあり、まあそれぞれためになることが書いてあるようにも思えるが、これは子どもも(小学校高学年くらいなら)読める文章で書かれている本としては、出色の本ではないか。 いじめの構造と展開が非常にクリアにまとめられており、どんないじめもこのパターンに当てはめることができる。いじめの当事者(加害者・被害者・傍観者)はそれぞれの立場で混沌とした思いを抱き、事態は複雑で、そう簡単に分析はできないと思いがちだが、こうして考えると非常にわかりやすい。「なんだ、客観的に見ればこんなことか」と。 それだけでも救われた気持ちになる気がするし、何より(ここが一番大事なことだけど)書き手に優しさと知性と人間的な大きさがあるため、分析されて、「自分は学者の研究の道具じゃない!」と感じる余地がないこと。 優しくて温かいが客観性や分析力に欠ける人、分析力があって知的だが冷たい人というのはゴマンといるが、優しさと冷静さと知性を兼ね備えている人は非常に少ない。(だからこそ優れた精神科医なのだろうが。)こんな人に話を聞いてもらえたら、と私ですら思う。 具体的な対応法が書かれているわけではないが、事態を客観視できるようになると、自ずと変わってくると思う。 いじめの渦中にある子供の手に届けばいいな、と思う。 パワハラ、モラハラについてもほぼ同じ分析ができると思うので、子どものいない大人にも読んでほしい。

Posted byブクログ

2017/07/08

このメカニズムは何も特別なことじゃなくて、この社会のどこでも、ごく普通に行われてしまうということ。 そして、みんなそんなことしてるという自覚がないまま行われるので、気づいたときには取り返しがつかないことになっていたりするということ。 当たり前に起きていることだから、起こさないよう...

このメカニズムは何も特別なことじゃなくて、この社会のどこでも、ごく普通に行われてしまうということ。 そして、みんなそんなことしてるという自覚がないまま行われるので、気づいたときには取り返しがつかないことになっていたりするということ。 当たり前に起きていることだから、起こさないようにすることはできない。起きていることに気づいたとき、どう動くか。 ひとりでは難しいね。仲間を作るの大事。 でも、それが始まる原因も、仲間作りだったりするのね。

Posted byブクログ

2017/02/23

いじめのプロセスについて、的確に解説しているのですが、酷い具体的な描写がある訳ではなく、子どもにも分かる表現で書かれてあるのですが、凄くストレートに心に突き刺さります。私も酷くはないが、からかわれていたので、凄く腑に落ちました。 大人として、どうやったらいじめられている子どもを助...

いじめのプロセスについて、的確に解説しているのですが、酷い具体的な描写がある訳ではなく、子どもにも分かる表現で書かれてあるのですが、凄くストレートに心に突き刺さります。私も酷くはないが、からかわれていたので、凄く腑に落ちました。 大人として、どうやったらいじめられている子どもを助けられるか、具体的ではないが、的確にその方法が表現されています。 精神科医の巨匠ならではの、全力の誠実さが感じられます。

Posted byブクログ

2016/12/12

日本を代表する精神科医、中井久夫の「いじめの政治学」を子ども向けに訳した本。いじめの過酷なプロセスを精神会の知見から叙述。いじめられている子ども、いじめ体験に傷ついた子ども、いじめをみている子どもたちが、自分の状況や体験を理解し、サバイバルのきっかけをつかむ心の1冊。親や教師、子...

日本を代表する精神科医、中井久夫の「いじめの政治学」を子ども向けに訳した本。いじめの過酷なプロセスを精神会の知見から叙述。いじめられている子ども、いじめ体験に傷ついた子ども、いじめをみている子どもたちが、自分の状況や体験を理解し、サバイバルのきっかけをつかむ心の1冊。親や教師、子どもの近くにいる大人たちが、いじめを軽く見ず、真剣に向き合うための必読の書。

Posted byブクログ