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哲学する子どもたち の商品レビュー

3.7

17件のお客様レビュー

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2017/07/30

借りたもの。 フランスでの教育と日本のそれの違いを、著者の経験、具体的な描写を交えて比較する。 その根底にあるのが、フランスは「哲学する」事を学ぶのが学問であるという意識。 対して日本は進級や学歴という一種の資格のようなものとして学んでいる節がある。 「自分で考える力を促す」フラ...

借りたもの。 フランスでの教育と日本のそれの違いを、著者の経験、具体的な描写を交えて比較する。 その根底にあるのが、フランスは「哲学する」事を学ぶのが学問であるという意識。 対して日本は進級や学歴という一種の資格のようなものとして学んでいる節がある。 「自分で考える力を促す」フランスのカリキュラムに対し、「決まりきったことを効率よく教える」日本のカリキュラム。 また、日本は再チャレンジを許さない厳しいものという印象があったが、フランスにも日本とは違う視点からの厳しさがあることを知る。 それは成績の点数ではなく、品行素行の問題に寄るところ、どうしても学ぶ姿勢が見受けられないという至ってシンプルなものだった。(そこに教育関係者だけでなく、他の保護者との会議がある点が興味深い) 著者はフランスの――広義には欧米文化の――ラテン語至上主義文化に対しては難色を示しているようだが…… フランスの教育姿勢から日本も見習え!という話ではなく、日本の教育現場に足りない視点が何なのかを浮き彫りにする。 日本は学問に対する自意識が非常に乏しいのではないか?学問とは何のためにするものなのか?という基盤が弱いことを意識させられた。

Posted byブクログ

2017/07/11
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

「引用は、それだけでは根拠にならない。説明され、主題に関係付けられてはじめて根拠となる」(p.44)  フランスの「哲学」という科目では自分の考えを発展させることが優先されているが、だからといって、哲学者の言ったことを勉強しないで勝手に考えてよいわけではない。というより、たった一人で考えることはとても難しい。先人の考えたことを学ぶことでこそ、自分の考えを発展させることができるのだ。哲学を学ばないで、「考える力」だけつけようとするのは、技術を学ばないで船を作ろうとするようなものだろう。先人の技術を学ばないで、孤島に置き去りにされたら、自分に作れるのは丸太舟止まりだろうと、私はいつも思っている。(p.45)  たとえば設問1に、ぶっきらぼうに「全体主義」と答えたのでは良い点はもらえない。「政治体制は何か」と訊いているのだから「全体主義である」で良さそうなものだが、それだけではだめなのだ。何を知っているかが試されるだけではなくて、物事を理解するために持っている知識をどう使うか、それをどう表現するかまでが試されているからだ。(pp.188-189)  フランスの勉強は一人でやれることに限界があるような気がするのだ。論述式の試験に備えるためには、知識だけでなく、それをどう与えられた課題の分析に使うか、同組織して論理を組み立てるかを訓練しなければならないが、それには足りないところを指摘してくれる他人の目が何より有効なのではないかと思う。一般には親が勉強の面倒を見ているようで、はっきり言って親がそれができるかできないかで差がついてしまう面がある。「文化資本」による格差はここにも出てくるのだ。(p.202)  私の手元にある高校生のためのフランス語の受験参考書には、「こうして構造を把握すると、問題のテクストを距離を持って見られるようになる」と書いてある。「テクストと距離を持つ」ことを勧めていることに注意を促したい。フランスの「国語」の授業で要求しているのは「登場人物の気持ちを想像すること」や「語り手の気持ちを想像すること」ではない。著者が「登場人物の気持ちをどのような方法で表現したか考えること」だ。そういう点が日本の「国語」ととても違うと思う。(p.226)

Posted byブクログ

2017/05/18

フランス人夫を持つ、元フランス語教師だった著者が、フランスで二人の子育てをする中で見えてきた、フランスの学校・教育事情を綴った本。著者は、『パリの女は産んでいる』の著者でもある。 表題にもなっているが、フランスの授業で凄いのは「哲学」の授業である。「哲学」の授業と言っても、「昔...

フランス人夫を持つ、元フランス語教師だった著者が、フランスで二人の子育てをする中で見えてきた、フランスの学校・教育事情を綴った本。著者は、『パリの女は産んでいる』の著者でもある。 表題にもなっているが、フランスの授業で凄いのは「哲学」の授業である。「哲学」の授業と言っても、「昔の哲学者はこう言った」という日本式の暗記型の授業ではない。そうではなく、高校生の時点で、例えば「芸術作品には必ず意味があるか?」とか「尊敬するためには愛さなければならないか?」といった哲学的な問題に対し、自分の意見を書けるよう鍛え上げられるというのである。 さらに言うと、「自分の意見を書く」というのも、単に「私はこう思う。なぜなら~」と単一的な自説を述べればよいわけではない。まずは、出された問題を自分の言葉で定義し直す必要がある。例えば、「愛する」を「強い愛着の感情を持つこと」などと、最初にしっかりと用語を定義するのである。次に、「見つけた複数の答えをそれぞれ極端に推し進める」、つまり、2つ以上の説について書き進めなければならないらしい(いわゆるテーゼとアンチテーゼ)。 そして極めつけに、「推し進めた2つの説を調整した別の説」を最後に書いて結論とするのである(いわゆる弁証法でいうジンテーゼ)。筆者も書いているが「結論で序論と同じことを繰り返せ」と説く日本の小論文指導とは全く異なる。「抽象的にものを考えて他人に示すにはどのようにすればいいか」「異なる意見に耳を傾ける習慣」が身に着くだろうと書いてあったが、その通りだろうと思う。 他にも、単なる読書感想文でなく、テクスト評釈の書き方も高校で習うらしく羨ましい限りである。私が覚えている日本の高校の現代文授業と言えば、「国語の教科書を貰った初日に全部読んでしまって終わり(授業でそれ以上のことが分かるわけではない)」くらいで、3年間かそれ以上?「哲学」や「テクスト評釈」の授業を受けてきたフランスの高校生とどれだけ差がついているのだろうと、残念な気持ちになる。 ただ、日本の方も、小中の算数数学だと、かなり日本の方が良いらしい。そのため、ただ羨むだけでなく、少しでも良い所を取り入れていけたらよいのではないかと思った。特に日本の場合、読書感想文でも何でもいいので、せめて書き方の構造を学んで練習する授業を取り入れたらどうだろうと思わずにはいられなかった。 最後に、本書では、授業内容だけでなく、先生や、成績の付け方、修学旅行、弁当(昼食)など、様々なフランス事情も書かれてあるので、日本とは違った様子も読んで楽しめるはずである。

Posted byブクログ

2017/05/12

フランスの中・高校教育の実際がどのようなものか、細かい実際が紹介されていて、日本とのあまりの違いに驚くことが多かった。 何より、フランスの高等教育の核となる部分にリベラル・アーツが据えられていることは、日本の大学から教養教育が消滅しつつある状況を考えると、本当に日本の大学教育は現...

フランスの中・高校教育の実際がどのようなものか、細かい実際が紹介されていて、日本とのあまりの違いに驚くことが多かった。 何より、フランスの高等教育の核となる部分にリベラル・アーツが据えられていることは、日本の大学から教養教育が消滅しつつある状況を考えると、本当に日本の大学教育は現在のままでいいのかと疑問に思えてきてしまう。 余談だが、実際にフランスで販売されているバカロレア受験のための参考書の邦訳があれば、ぜひ購入してみたいと思った。

Posted byブクログ

2020/07/27

モーパッサン読まないとな。◆講評の仕方、恥ずかしながら、ようやく理解できた。◆◆なるほど、このように考える作法を知れば、高等教育で困らない。

Posted byブクログ

2017/01/06

フランスの教育についてよくわかった。 もっと哲学する子どもたちが読みたかった。 哲学をするというのはどういうことなのか知りたい。

Posted byブクログ

2016/11/25

久しぶりに一気読みした本。フランスの初等中等教育の特徴をバカロレアの論述形式の試験と関連づけて話している。著者と著者の娘と息子の実体験を基にしているので具体的であり,成長物語のようでもある。 フランス人と交流したくなった。

Posted byブクログ