世にも奇妙な人体実験の歴史 の商品レビュー
痛みや苦しみや悲惨さに目を伏せたくなる様な人体実験の数々だが、興味深い話ばかりだった。 医療技術はもちろん医療に関する法律も定められていない時代。イギリスでは当時、死刑囚の死体が解剖に利用することが認められていた。その死体は、度々遺族と解剖をしたい医者との死体の奪い合いが起き...
痛みや苦しみや悲惨さに目を伏せたくなる様な人体実験の数々だが、興味深い話ばかりだった。 医療技術はもちろん医療に関する法律も定められていない時代。イギリスでは当時、死刑囚の死体が解剖に利用することが認められていた。その死体は、度々遺族と解剖をしたい医者との死体の奪い合いが起きて、その奪い合いの激しさから死刑囚が生き返ったこともあったという。 医学生に必要な遺体が足りないために、メスを入れるのが初めての患者だということも。そのため、遺体が高値で取引され、埋葬屋が医者へ遺体や臓器を横流ししたり、遺体を採掘盗掘する輩がはびこった時代も。 生きた被験者としては主に、医者自身・死刑囚などの犯罪者・黒人・孤児院の子供(特に障害児)・末期の病床人などが利用されることが多かった。 自己人体実験 ・淋病と梅毒を同じ病気が進行したものだということを証明しようと、自身の性器に淋病患者と梅毒患者の膿などを擦りつける。 ・心臓にカテーテルを自ら通す。 ・壊血病を証明するため、数ヶ月の間ビタミン無しの同じ食事で過ごす。 ・炭に解毒作用があることを証明するため毒と一緒に炭を飲む 麻酔剤が"笑気ガス"と言って40年以上も楽しむためだけの扱いを受けていたとは驚きだ
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常人では考えられないような実験が、過去に行われていたことを知った。どう考えても、自分ではやろうと思えないことばかりであった。訳者あとがきにもあったが、「自己保存本能よりも知的好奇心が強い」という人間たちによって様々な実験が行われていたようだ。現在の医学(というよりも一般常識的)で...
常人では考えられないような実験が、過去に行われていたことを知った。どう考えても、自分ではやろうと思えないことばかりであった。訳者あとがきにもあったが、「自己保存本能よりも知的好奇心が強い」という人間たちによって様々な実験が行われていたようだ。現在の医学(というよりも一般常識的)では考えられないような医療行為が行われていたが、そのような医療行為が現在行われていないのも、多くの研究者たちが人体実験を行なってきてくれたためであると思うと、人体実験を真っ向から否定しにくくなる(もちろん現在では倫理的にあり得ないことではあるが)。真っ当な医療をしてもらえる時代を作り上げてくれた多くの研究者たちに感謝したくなる良書であったと思う。
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人体実験、というとマッドサイエンティストだとか、戦時中の非人道的な行為、というイメージが先行する。 確かに本書に出てくる実験はそういったものもある。 だが、それを、なかったことにできる? 自分に関係ない、と言える? 誰にだって程度の差はあれ、興味はあるでしょう? 私は空気抵抗の...
人体実験、というとマッドサイエンティストだとか、戦時中の非人道的な行為、というイメージが先行する。 確かに本書に出てくる実験はそういったものもある。 だが、それを、なかったことにできる? 自分に関係ない、と言える? 誰にだって程度の差はあれ、興味はあるでしょう? 私は空気抵抗の実験をしたことがある。仮説はこうだ。 パラシュートが安全に脱出できるのなら、傘でも空気抵抗を実現できるはずだ。 そして私は駐輪場の屋根から傘を両手に持って飛び降りた! 最悪の結果にならなかったが、端的に言えば失敗した。 他にも、「アルコールの摂取量による消化器官と判断力の変化に対する考察」を行ってみたこともある。 が、そんな些細な実験と本書の内容を比べると、比べ物にならない。 音速の壁、ソニックブームの恐ろしさは、思わず電車の中で身震いした。 淋病と梅毒に同時に罹患するよう仕向けたり、炭疽菌を培養したり、漂流してみたり、ありとあらゆる実験がなされてきた! 死骸を食べる実験の章では、日本人にはお馴染みの高級魚(矛盾?)フグも登場! それにしても、こんな人体実験の数々は、せいぜい20世紀初頭まで、そんなふうにどこか楽観的になってはいまいか? 驚くべきことに2006年、臨床試験中の失敗が起きている。 門外漢の私には、この実験方法が適切だったのかはわからない。 また、募集を見てやってきた被験者たちに問題があったとも考えられない。 当然、臨床試験そのものを否定するものでもない。 しかし、言えるのは、人体実験は功罪併せ持つものであるということ。 医学、科学に従事する人々には心から感謝と尊敬の念を抱くけれども、一方で、一般人の尊厳もやはり忘れてはならない。 本書は、普段ノンフィクションを読まない人、ミステリやホラー好きな人にもおすすめ。 不謹慎? いや、現実の奇妙さや恐ろしさから現代と自分を省みることができる。 巻末の仲野徹氏の解説までしっかり読み込んでほしい。 「NHK フランケンシュタインの誘惑」でも解説をされている先生だ。
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人体実験から現代のサイエンステクノロジーがどのようにして誕生してきたのかを説明している本です。 寄生虫などちょっと気持ち悪い話もありましたが、様々な分野に渡って話が展開され、ワクワクするような話もありました。 読み終わった後は、現代の医学に自らの身体を使って貢献してきた人々に感謝...
人体実験から現代のサイエンステクノロジーがどのようにして誕生してきたのかを説明している本です。 寄生虫などちょっと気持ち悪い話もありましたが、様々な分野に渡って話が展開され、ワクワクするような話もありました。 読み終わった後は、現代の医学に自らの身体を使って貢献してきた人々に感謝の気持ちが出てきました。 少し冗長な感じもありますが、全体的におもしろい本でした。
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人体実験の歴史をまとめた本。 『マッド・サイエンティストの世界へようこそ!』という劇的な帯だが、実際は淡々とした語り口で様々な事例が紹介されていく。 正直、帯が『煽り過ぎかな』という気持ちにもなった。 途中、話が難しいのもあれば興味のわかないものもあって眠気に襲われたけど、今...
人体実験の歴史をまとめた本。 『マッド・サイエンティストの世界へようこそ!』という劇的な帯だが、実際は淡々とした語り口で様々な事例が紹介されていく。 正直、帯が『煽り過ぎかな』という気持ちにもなった。 途中、話が難しいのもあれば興味のわかないものもあって眠気に襲われたけど、今我々が当たり前に行っている治療とか常識が過去の人体実験の成果あってのことだと言うのはちゃんと知ることができてよかった。 テジェネロ社の事件はただただ怖い。
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残虐なヤツかなと思ったら勇気ある科学者たちの話だった。 今ある治療、知識に関しては誰かが体を張った結果を享受しているんだな、そう感じる一冊。 結構な挑戦をしまくってるので、うげえ……となりながら読みました。
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「世にも奇妙な人体実験の歴史」などという、下世話な好奇心をそそるタイトルを見て、怖いものみたさというか、気持ち悪いものみたさというかで読んでみた。 けれど、内容はかなり真剣。 どちらかというと、科学の発展のために自らを犠牲にしてまで尽力した科学者たちの物語。 例えば、ワクチン開...
「世にも奇妙な人体実験の歴史」などという、下世話な好奇心をそそるタイトルを見て、怖いものみたさというか、気持ち悪いものみたさというかで読んでみた。 けれど、内容はかなり真剣。 どちらかというと、科学の発展のために自らを犠牲にしてまで尽力した科学者たちの物語。 例えば、ワクチン開発のためには誰かが試さなければならない、しかし他人を危険にさらすわけにはいかない、といったような。 読んで分かったけれど、試験的なワクチンが無害か、ということを試す勇気よりも、それが効くのかを試す勇気の壮絶さ。試験的ワクチンを接種したあとで、コレラ菌を自らに注射するとか。。。 そういって人類に貢献した様々な科学者たちの偉大なストーリー。 一部を切り取れば、変人とも言える行動ばかりなのだが・・・。 にしても、タイトルとのギャップを感じて、原題を調べてみたら、a celebration ob self-experimenters。なるほど、この原題ならしっくりくる。 時折、いや結構出てくるシニカルなブラックジョークが、真剣な科学ストーリーをうまいこと面白おかしい感じの読み物にしてくれているのだが、茶化しているようで不快に感じる人もあるかもしれない。。。
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とんでもない人体実験の数々まさにマッドサイエンティスト。 現代の医療はこれだけの苦労によって生み出されたものなのかと感心 画期的かつ一般的な病気に対する新薬が少なくなってきた現在、今後の医療の発展はどこにむかっていくのかなぁ
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
とても面白い! 興味をそそられる内容なのですが、描写がリアルで読んでいると気持ち悪くなってきました…。 残念ながら、途中でリタイアです。 序盤に書いてある、遺体もお金になるという部分は初めて知りました。 墓荒らしが、まだ近い昔の話だったなんて驚きでした。
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面白く、また知的好奇心を刺激してくれるいい本です。 “人体実験”というと、新薬の開発であったり、戦時中の非人道的なものをイメージしていたのですが、それだけでなく人体実験にはその目的や動機によって様々なケースがあることに気づかされました。 その目的には医療、医学的なもの以外にも、人...
面白く、また知的好奇心を刺激してくれるいい本です。 “人体実験”というと、新薬の開発であったり、戦時中の非人道的なものをイメージしていたのですが、それだけでなく人体実験にはその目的や動機によって様々なケースがあることに気づかされました。 その目的には医療、医学的なもの以外にも、人間がどこまでの高さ、深さ、速さに耐えられるのか、などといったものも含まれ、一口に被験者といっても実験者が自ら被験者となる自己実験もあれば、被験者がなんの実験か知らされぬままの悲惨なケースもあり。自己実験者の動機も単純な好奇心や、自説を立証するための探究心であったり、人類の進歩への使命感だったり様々です。 とはいえ、実験の失敗も含めそのほとんど全てが今の世の中に役立っているという事実に驚かされます。 そしてその業績に比べ、死にかけたり、時には死に至ってしまった被験者たちの苦痛が、さほど深く広く知られていないことにも複雑な気持ちに。 どのエピソードも興味深いものばかりですが中でも、それまで外科手術では手のつけられない臓器とされた心臓へのアクセス方法として、血管を通すカテーテルを実際に自分で試したフォルスマンや、「深さ」と「高さ」の両方にチャレンジした天才科学者ピカール博士のエピソードにはより感動させられました。 著者はイギリスの海洋生物学者で、いかにもイギリス的な皮肉の効いた文章が、読書中の興奮をいい具合に冷ましてくれ、クセになります。中には皮肉が効きすぎて笑えないくだりもありますが。 本書原書の副題訳「自己実験という危険な行為を成し遂げた、偉大なる奇人に捧げるウイットに富んだ賞賛」がもっと世の中に知られることを強く望みます。
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