鳥の巣 の商品レビュー
多重人格の話。 主人公に人格がいくつかあるとはいえ、主な登場人物は医者と叔母くらいだし、場面も家か病院が多いから途中ちょっと中弛みしてるように感じられる場面もあったけど面白かった。 シャーリイ・ジャクスンにありがちだけど、はっきりとした答えを示すわけではないところも多いのでモヤッ...
多重人格の話。 主人公に人格がいくつかあるとはいえ、主な登場人物は医者と叔母くらいだし、場面も家か病院が多いから途中ちょっと中弛みしてるように感じられる場面もあったけど面白かった。 シャーリイ・ジャクスンにありがちだけど、はっきりとした答えを示すわけではないところも多いのでモヤッとする人もいるかもしれない。
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自分の見ている世界。それは本当に自分一人が見て、聞いて、体験したものなのか。別の自分が見たものを自分が見た、と思い込んでいないか。最後に統一された彼女の人格は一体誰なのかということが言及されていないせいで、何となく不安定な読後感を得る。もしかしたら、治ったと思っているのは読者である私だけで、更に新しい人格で統一されているのかもしれない。人格が四つもあるせいで、お風呂には何回も入らなきゃならないし、そのせいで叔母のバスソルトは一回で無くなってしまった。冷蔵庫に泥を入れる悪戯も、怒られる場面で押し付けられるように人格交代させられる。人格が何人も居ると、本当に大変だ。問題が明確に分かればそれを克服、治療することで人格統一の手助けになるが、直接の原因に言及されることは無い。どうやら母親とロビン、という二人の人物が問題の原因に思えなくもないが、もしかしたら叔母さんの態度や生活そのものがただ苦痛だったのかもしれない。どの人格もそれ相応に欠点を持っていて、どれも主人格にするには頼りない所がある。とりあえず、私ならベティ以外にします。ライト医師が言うように、あの子は金、金と口を開けばそればかりでうんざりさせられたので。これが主人格になれば、叔母さんはいくらお金が掛かろうが、施設で悠々自適の生活の方を選ぶだろうことが目に見える。統一されたことで、エリザベスはこれから幸せを掴むことが出来るかもしれない。
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ある日博物館が傾き、それを修復するために穴が開けられた。その博物館に勤務していたエリザベスは、その穴と呼応するかのように心身のバランスを崩してゆく。やがて姿を明らかにしていく、エリザベスの別人格たち。それに悩まされる叔母と、彼女を治療しようとする医師。不安感が漂い、しかしどこかし...
ある日博物館が傾き、それを修復するために穴が開けられた。その博物館に勤務していたエリザベスは、その穴と呼応するかのように心身のバランスを崩してゆく。やがて姿を明らかにしていく、エリザベスの別人格たち。それに悩まされる叔母と、彼女を治療しようとする医師。不安感が漂い、しかしどこかしらユーモラスさもある作品です。 神経質で臆病なエリザベス、素直でおとなしいべス、乱暴でわがままなベッツィ、そして狡猾さを感じさせられるベティ。それぞれの人格が入れ代わり立ち代わり現れるのだけれど、口調や言動でだいたいどの人格かが察せられるんですよね。そして、それに騙されたりもしてしまいます。登場人物自体は少ない作品なのだけれど、「人格」それぞれを勘定に入れるとそんなことは全然感じさせられませんでした。扱いは厄介だけれど、ベッツィの人格はなんだか可愛いなあ。マザーグースの引用が多いのも、個人的に好きなポイントです。
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多重人格小説の皮切りともいえる作品 うーん、冷ややかで淡々とした雰囲気だ…リアルだけどリアルじゃない、みたいな…
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面白かった。書かれたのが1954年のせいか、猥雑になりそうな多重人格ものがシンプルに濃く、読者の求めてる読みたいものを表現出来てると思った。同居のおばさんと精神科医が非常に人間臭くて良かった。こういう場合、本人より周りの人間が大変というのを忘れがち。変に湿っぽくなくて良かった。病...
面白かった。書かれたのが1954年のせいか、猥雑になりそうな多重人格ものがシンプルに濃く、読者の求めてる読みたいものを表現出来てると思った。同居のおばさんと精神科医が非常に人間臭くて良かった。こういう場合、本人より周りの人間が大変というのを忘れがち。変に湿っぽくなくて良かった。病気にかかった時にあの時こうしてれば、などと思うこともあるが、実際は何もできないのさ。受け入れるしかないのさ。まさか自分が追い詰めてるなんぞ、間違っても考えないのさ。
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多重人格から主人公や周りの人々の闇が浮かび上がる作品。単なる後味の悪さだけでなく余韻が残る作品です。 主人公、リッチモンドは内気でおとなしい性格の博物館職員。ある日出勤すると職場に大きな穴が開いていました。そこから頭痛と奇妙な行動に悩まされるようになり、精神科医のもとに受診します...
多重人格から主人公や周りの人々の闇が浮かび上がる作品。単なる後味の悪さだけでなく余韻が残る作品です。 主人公、リッチモンドは内気でおとなしい性格の博物館職員。ある日出勤すると職場に大きな穴が開いていました。そこから頭痛と奇妙な行動に悩まされるようになり、精神科医のもとに受診します。そこで彼女には別人格があると発覚するのです。 それぞれの人格はキャラクターが立っており、主張も異なります。精神科医もそれぞれに好意や嫌悪を抱きます。そんな関係性の変化は楽しく、魅力的なおぞましささえ感じてしまいます。
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もちろんまだビリー・ミリガンも現れていない50年代に、こんな多重人格小説を物していたとは、知らなんだ。 ぐるぐるとした不安と危うさ、独特の「イヤ〜な感じ」は、期待通りの紛れもないシャーリイ・ジャクスン。
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『ドーキー・アーカイヴ』第3弾。本当はこれだけ買うつもりだったw シャーリイ・ジャクスンの長編第3作、本邦初訳作。 多重人格もののサスペンスは今でこそ様々な作品が書かれているが、本書が発表された1954年はかなり新鮮な題材だったことが窺える。しかし初訳だとは思わなかった。ホント、...
『ドーキー・アーカイヴ』第3弾。本当はこれだけ買うつもりだったw シャーリイ・ジャクスンの長編第3作、本邦初訳作。 多重人格もののサスペンスは今でこそ様々な作品が書かれているが、本書が発表された1954年はかなり新鮮な題材だったことが窺える。しかし初訳だとは思わなかった。ホント、なんでこれが邦訳されていなかったのだろう? 創元辺りからとっくに出ていても不思議ではないと思う……。
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