賢者の石、売ります の商品レビュー
人間は夢を持つ。そしてその大小に関わらずそれを叶えたいと誰もが願う。 ただ、夢の成就に向けたアプローチは人によって異なるということは確かです。 「マイナスイオン」「パワーストーン」などのような荒唐無稽なものを信じることで、気休めの希望に縋る者もいれば、科学的な根拠に裏打ち...
人間は夢を持つ。そしてその大小に関わらずそれを叶えたいと誰もが願う。 ただ、夢の成就に向けたアプローチは人によって異なるということは確かです。 「マイナスイオン」「パワーストーン」などのような荒唐無稽なものを信じることで、気休めの希望に縋る者もいれば、科学的な根拠に裏打ちされたもののみを信じ、窮屈な希望を追求する者もいるでしょう。 主人公の賢児は、後者の「窮屈」な道を行く人物です。人は悪くないのですが、偏屈で融通が利きません。けれど、効果がきちんと実証された製品を売りたいと思い、科学に夢を託したいと願う誠実な男でもあります。そこは実に好もしいと思いました。 ( 対照的な存在として賢児の母と姉が登場するが、やや極端な設定だとは思う。) 古来から人々は、夢を叶えてくれる「賢者の石」を求めてきました。 他力本願で臨み何にでも飛びつくのか、納得できるものが見つかるまで自力で頑張るのか。その姿勢は人としての生き方を左右します。それは現代でも同じなんだろうと思いました。 科学では解明できないものは多く、そういうものを排除しては生きていけません。 ( 愛情などその最たるものでしょう。) そこに気づいて受け入れた賢児なら、いつかきっと賢者の石を売ることができる日がくるに違いない。そんな未来が見えるようないいラストでした。
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言いたいことはわかるけれど、それは幸せなことじゃない。そんなやり取りをずっと見させられた感ありの1冊。桜川さんの真意が気になるところで、気になるキャラクターがたくさんいるのに、消化不良でした。うーむ。 2021/9/15読了
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
図書館の返却棚にあったので、なんとなく手に取った一冊。 主人公・賢治の似非科学に対する糾弾は、同じクラスだったら絶対近づきたくないタイプ、という印象。 「そうだとしても、言わなくてもよくない?」って。 似非科学でも、心理的効果もあるんじゃない?というのは、私が未開人だからなのか^^; はじめのうちは共感できなかったけど、なぜそんな頑ななのか、背景がわかってくると面白くなってくる。 最後の方は、賢治なりに、相手を思っていることが伝わったのは良かったかなと思う。 あと完全なラストの部分、個人で貯めたお金を宇宙に投資したけど、将来は、商社巻き込んで、もっとでっかい規模の宇宙開発の仕事にやってほしいなー、なんてちょっと妄想した。
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またまた矢野帰子さんの作品。 表紙とタイトルを見て興味がそそられたため。 化学が好きなサラリーマン、賢治は中途で大手電機メーカーに入社して早々、難題に立ち向かうことになる。 賢治、賢治の姉の美冬、賢治の同僚の梨花。この3人の視点がメインで、ストーリーが進行していく...
またまた矢野帰子さんの作品。 表紙とタイトルを見て興味がそそられたため。 化学が好きなサラリーマン、賢治は中途で大手電機メーカーに入社して早々、難題に立ち向かうことになる。 賢治、賢治の姉の美冬、賢治の同僚の梨花。この3人の視点がメインで、ストーリーが進行していく。 賢治は鉱物を愛する父の影響で、化学と宇宙に想いを馳せるようになるものの、 過去に父が病気で倒れ、家も困窮し、母との関係もこじれてしまう。 コミュニケーションが苦手な賢治は、家族や親友、同僚、他者との関係に四苦八苦しながら、生き方を考える。 個人的には、もう一山盛り上がりが欲しかったかなぁ。 矢野帰子さんのことを調べてみた。 79年生まれ。辻村深月さんと同世代なのですね。 マーケティング会社と製粉会社に勤めたこともあり、それらの会社員の経験が「わたし定時に帰ります」や「会社を綴る人」を書くヒントになったのだろう。 私自身も会社員生活が長いため、リアリティのある企業小説に惹かれる。 これからも矢野さんの作品を読んでみたい。
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科学の正しさが人を幸せにする…。大手電器 メーカーに勤める科学マニアの羽嶋賢児は、 その信念ゆえに会社や家庭で孤立を深めるが…。 人間関係に不器用な青年の成長物語。
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似非科学と闘う主人公、その周辺のドラマは普遍的で楽しかった。 ただ、読み終わっても絶望が多いのはなぜだろうか...
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3.5 まずまず。マイナスイオンドライヤー、似たようなの最近買ったばっかり(^-^; お仕事小説+科学オタ、最強の組み合わせかも。
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マイナスイオンドライヤー、へへ、買っちゃいそう。値段高い=効果ありそう、だもんね(笑)。 なんかよくわからないけど、効果ありそう、期待できそうってやつ、ほんとたくさんあるんだもん。気分的なものだよな。あまり、明らかにされると夢がないような気もするし。
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+++ 科学の正しさが人を幸せにする。その信念ゆえに、賢児は会社や家庭で孤立を深めるが……。人間関係に不器用な青年の成長物語。 +++ 科学を愛する少年だった賢児は、親友の譲と科学館に入り浸り、夢を語った。科学者になることにあこがれたが、現実はなかなか思い通りにならず、「商人」...
+++ 科学の正しさが人を幸せにする。その信念ゆえに、賢児は会社や家庭で孤立を深めるが……。人間関係に不器用な青年の成長物語。 +++ 科学を愛する少年だった賢児は、親友の譲と科学館に入り浸り、夢を語った。科学者になることにあこがれたが、現実はなかなか思い通りにならず、「商人」になる。だが、世の中には似非科学に騙され、それを利用するような似非科学商品を作って売る人がいる。そんな部署に異動させられ、似非科学製品を排除することに心を傾けるようになる。当然会社では変人扱いであり、孤立することになる。家に帰れば、未開人の代表のような姉の美空にいらいらさせられ、母との関係もうまくいかない。科学とは、正義とは、さらには人との関わりに大切なものとは何かを考えさせられる。科学絶対主義に凝り固まっていた賢児の視野がほんの少し広がって、これからの行動の仕方に変化がありそうな兆しが見えて、応援したくなる。数年後の賢児を見てみたいと思わされる一冊である。
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15:科学の正しさを信奉する主人公が美容家電(マイナスイオンドライヤーとか)の企画部に異動になって……という、想像するだけで悶えるやつ。正しさだけじゃモノは売れないだろうけど、どう転がるのか……と思わせて、実に直球の展開でした。いい話じゃった( ;∀;)朱野さんのお仕事小説めっ...
15:科学の正しさを信奉する主人公が美容家電(マイナスイオンドライヤーとか)の企画部に異動になって……という、想像するだけで悶えるやつ。正しさだけじゃモノは売れないだろうけど、どう転がるのか……と思わせて、実に直球の展開でした。いい話じゃった( ;∀;)朱野さんのお仕事小説めっちゃ好き。 客は必ずしも正しさを求めているわけではなく、潜在的な願望は簡単に白を黒にする。科学的アプローチにはカネが必要で、そのカネはすぐ目に見える結果を出さないと下りてこない。ままならない。そのままならない現実の中で打ち上げられるロケットの、圧倒的な噴射炎と光。打ち上げられた探査機がまた科学の歩みを進める。うう……好き……。 主人公のお姉ちゃんが妊娠→出産して、母乳至上主義の助産師さんに引っかかったり、なんかもうすごい(語彙)
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