あなたの人生、片づけます の商品レビュー
ストーリーの中の他人を通じて自分を見つめ直すことができたような気がする。 凝り固まったしこりがほぐれたような、自分を許せるような、デトックスしたような気分になれる。
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垣谷美雨さんの本を読むのは2冊目なのだけど(前回は「リセット」を読んだ)、自分の人生を見つめ直したり、認めたり、時に軌道修正したり…2冊とも、そういう考えに至るきっかけをくれるような内容だった。 「部屋を片づけられない人間は、心に問題がある」と考えている片づけ屋の大庭十萬里は、...
垣谷美雨さんの本を読むのは2冊目なのだけど(前回は「リセット」を読んだ)、自分の人生を見つめ直したり、認めたり、時に軌道修正したり…2冊とも、そういう考えに至るきっかけをくれるような内容だった。 「部屋を片づけられない人間は、心に問題がある」と考えている片づけ屋の大庭十萬里は、問題を抱える人たちの部屋を訪れ、その原因を探りながら汚部屋をきれいな部屋に甦らせる。 ターゲットは、社内不倫に疲れた30代OL、妻に先立たれた老人、子どもに見捨てられた資産家老女、一部屋だけが謎に片づいている家に住む主婦。それぞれの問題に、十萬里は立ち向かう。 部屋を片づけられない人、というのはテレビなんかでもたまに目にする。単純に汚いのが平気なパターンもあるのかもしれないし、それをテレビで誇らしげに言うのはどうかと思うけど、実際本当に心に問題を抱えているケースもあるのだと思う。 この小説に出てくる“片づけられない”4人の人たちは、それぞれに問題を抱えているからこそ片づけることが出来なくて、しかも程度や中身にも違いがある。 プライドのために着飾るものを買い込んでは溜めてしまうケースもあれば、妻が死んでしまったために家の中のことが出来ず散らかってしまったケース、戦争を知っているだけに勿体ない精神が強くて不要な物でも捨てられないケース、そして悲しい経験から無気力になってしまい家事が疎かになってしまったケース。 理由はそれぞれあれど、共通してあるのは、心にぽっかりと空いてしまった穴のようなものの存在。空虚を感じているから物を溜め込む、というのは理屈としては当たり前のようにも思えてくる。 溜まったストレスを買い物で発散する、というのは女性ならば経験したことがある人も多くいると思う。虚しいから物で満たす。それで本当に満たされるわけではなくても。 見た目は普通のおばさんである片づけ屋の十萬里は、問題のある人たちに根気よく付き合い、時にするっと心の隙間に入り込み、彼らの問題を解決していく。 依頼者は片づけられない本人ではなく周りにいる身内で、本人は最初十萬里の存在を疎ましがるのだけど、いつの間にか少しずつ問題が解決していく状況に身を委ねる。 本当は助けを求めていたのだ、ということ。 その人の意識内にあるとは限らない問題を、本人に意識させ、そして少しのきっかけを与えることで問題に向き合わせる。 人はみんな淋しくて、心の繋がりのようなものをどこかで求めている。そして要らない人間関係をリセットさせることも時には求めている。 要るものと要らないものの選別を自らするのは、思いのほか難しいのかもしれない。 私は時々ごっそり物を捨てることにしているので慣れてしまったし、要らない人間関係を増やさないために意識していることもけっこうあるのだけど、それでも知らずに物や関係が増えていることがある。 やはり時々意識して捨てることは必要だ、と思う。自分の心のために。 十萬里さんみたいな人、近くにいたらいいのにな、と思う、そんな優しい物語。
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サクサク読みやすくて、あっという間に読んでしまった。とても面白かった。 片付け屋の大庭十萬里さんが魅力的。物の片付けより何故片付けられないのかという心理状況を見出して少しづつ本人に気付かせる。 4話の連作短編集で全て読後感が良い。特に4話、これだけ大庭さんの目線で書かれていて、息...
サクサク読みやすくて、あっという間に読んでしまった。とても面白かった。 片付け屋の大庭十萬里さんが魅力的。物の片付けより何故片付けられないのかという心理状況を見出して少しづつ本人に気付かせる。 4話の連作短編集で全て読後感が良い。特に4話、これだけ大庭さんの目線で書かれていて、息子を事故で失った母親と家族の話が胸を打つ。
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ケース1〜3はふーんという感じだった。 最後のケース4で、交通事故で子どもを亡くした親の家を片付けることを通して、不慮の事故と向き合い、止まっていた時間を今に進めた。 他人には決して理解できない被害者の心情を、事故の被害者同士を合わせることにより、お互いに心情を吐露し、氷を溶かす...
ケース1〜3はふーんという感じだった。 最後のケース4で、交通事故で子どもを亡くした親の家を片付けることを通して、不慮の事故と向き合い、止まっていた時間を今に進めた。 他人には決して理解できない被害者の心情を、事故の被害者同士を合わせることにより、お互いに心情を吐露し、氷を溶かすように自分の気持ちを溶かしていく様は、見事だった。 辛い時に、わかったような事を他人に言われることが一番辛い。共感とは本当に同じ体験をした人としか結べないのかもしれない。 自分にできることは、わかってあげるのではなく、繋ぐことだと感じた。
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初めて読んだ、「お片付け小説」というジャンル(?)。片付けを手伝う訳ではなく、片付け方を指導する。指導は数ヶ月続く…。 効果ありそうだな、と思った。そして文章で読むだけでも、部屋が片付いていく様子ってスッキリするものだ。確かに心が不安定な時って、知らない間に部屋も散らかる。はっと...
初めて読んだ、「お片付け小説」というジャンル(?)。片付けを手伝う訳ではなく、片付け方を指導する。指導は数ヶ月続く…。 効果ありそうだな、と思った。そして文章で読むだけでも、部屋が片付いていく様子ってスッキリするものだ。確かに心が不安定な時って、知らない間に部屋も散らかる。はっと気付いて片付けると、気持ちもスッキリするものなんだなー。そういう事に、最終的に気付けるようになればいいと思う。そして、片付けられない理由をきちんと突き止める十萬里さん、やるな。
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2016/12/29 タイトルに惹かれ、読み始めた。 オムニバス形式で物語は進み、その回毎の主人公は心に歪みや空洞のある人たち。 共依存の女性、全時代的初老男性、井の中の蛙で能天気な初老未亡人、亡霊に振り回され崩壊している家庭、それぞれの典型的なタイプを語り、最後は一筋の希望。...
2016/12/29 タイトルに惹かれ、読み始めた。 オムニバス形式で物語は進み、その回毎の主人公は心に歪みや空洞のある人たち。 共依存の女性、全時代的初老男性、井の中の蛙で能天気な初老未亡人、亡霊に振り回され崩壊している家庭、それぞれの典型的なタイプを語り、最後は一筋の希望。 読後感は爽やか。 シリーズ物に出来そう。 なんで私がこの本(タイトル)が気になったのか、読了後、よくわかった。
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片づけの実用的な本は何冊か読みましたが、「お片付け小説」は初めて。 というか、なかなかないジャンルですね。 ケース1:大手企業に勤めて収入もそこそこ多いアラサーOL。 外面はパリっと身ぎれいで仕事もできるのに家は足の踏み場もない無残な状態……。 十萬里さんの指摘によって、この...
片づけの実用的な本は何冊か読みましたが、「お片付け小説」は初めて。 というか、なかなかないジャンルですね。 ケース1:大手企業に勤めて収入もそこそこ多いアラサーOL。 外面はパリっと身ぎれいで仕事もできるのに家は足の踏み場もない無残な状態……。 十萬里さんの指摘によって、この主人公がテンプレどおりとも言える社内不倫にはまっている事が少しずつ明らかになっていく、その過程が楽しかった。 ケース2:妻に先立たれた木魚職人。 家の事は妻に任せきりだったので……と、こちらも高齢男性にありがちなケース。 十萬里さんの介入によって娘や孫の問題も前向きに変わっていく結末が爽快。 ケース3:一人暮らしの資産家高齢女性。 ひどく散らかったり汚れたりしているわけではないが、大きな家の中には不要なモノがたくさん……。 この女性ほどの土地屋敷持ちではなくても、こういう家はこれからの時代どんどん増えていくと思った。 値打ち品(だったはずのモノ)が売れるどころか引き取ってもらうための代金が発生したのが印象的です。 ケース4:汚屋敷と化したエリート官僚の家。一部屋だけは綺麗に片づいて掃除もされているのは…? 十萬里さんの視点から彼女の叔母のエピソードも交えつつ、この家の奥さんの悲しみに向き合っていく。 少し切なくも心温まるお話でした。 タイトルで「あなたの人生、片づけます」と言われるとおり、4人の主人公たちの家の片づけだけでなく人生にも「カタ」をつける手助けをしてくれた十萬里さんは、まさに「片づけの魔法使い」ですね。
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本書で溜め込まれているのは、何もゴミだけではない。妻の遺品、いつか使うかもしれないもの、思い出…。 片づけ屋の十萬里さんが、片付けられない原因を自分で気がつくよう宿題を出してくれる。そうして、家や部屋ばかりでなく心も整えられていく。 読み終わったときに前向きになれる本。
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巷に溢れる断捨離マニュアルよりもずっと心に響く本。 片づけ方を指南するのではなく、その人の生活の根底に流れる、本人が努めて見ないようにしている問題を白日のもとに晒して突きつける、カウンセラーのような主人公。 シリーズ化されたら追いかけてしまうだろうと思わされる内容だった。 私...
巷に溢れる断捨離マニュアルよりもずっと心に響く本。 片づけ方を指南するのではなく、その人の生活の根底に流れる、本人が努めて見ないようにしている問題を白日のもとに晒して突きつける、カウンセラーのような主人公。 シリーズ化されたら追いかけてしまうだろうと思わされる内容だった。 私の部屋は、散らかりすぎているわけでも片づきすぎているわけでもない(と自分では思っている)けれど、十萬里さんが見たらどう分析するだろう。
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