時計坂の家 の商品レビュー

高楼方子(著者),千葉史子

2024/08/27

とても上品で上質な児童書といった感じ。こういう夏休みの冒険モノは楽しかったりラストが爽やかに終わる印象があるけど、この本は常にまとわりつくような不気味さがあり、ラストもどこか苦く不穏な後味だった(決してバッドエンドではないけれど)。挿絵がとてもいい。マリカの神秘的な空気感、ロォムの屋敷の異様さ、フー子が噴水に向かう場面は挿絵あってこそ。見ていてハラハラした。

勿論ワクワクする楽しい要素もあるので本好きな子にお勧め。

2024/08/20

これは12歳の夏だったから起きたのだ。

と何故かそう思ってしまった。

中だるみのない読みやすい作品。

んーなんとも言い難い、フー子とえーすけが扉とおばあさんの秘密を暴いていくストーリーはとてもおもしろかったです。
読み進めるほどぞわぞわそわそわ止まらない。テンポがいいのですらすら読めた印象。

お祖父さん好きだわー。本当に強い人なんだと思います。素敵な紳士です。
あとえーすけもいいキャラです。

ただラストに納得がいかないという言い方だと違うのですが、いまいちピンとこない終わり方だったなという印象。
それはおそらく私とロォムの価値観があまりにも違い、彼が求め欲したものが私には見えてこなかっただけのような気もします。

2024/08/10

幻想的な児童文学。
時計坂の家から繋がる別の世界はファンタジーなんだけど、祖母を探すミステリーの要素もあり。
骨太すぎて大人にぜひ読んでもらいたい。

12歳の夏、時計坂の祖父の家に遊びに行くフー子。
憧れの従姉妹に会うためだったが、そのなかで、不思議な扉と不思議な時計を見つける。
美しいのにぞっとする、ぞっとするのに近づいてしまう。ドキドキして読み応えがあった。

2023/08/29

昨年夏に読んで以来の再読。

昭和の夏の濃い空気感の挿絵、不思議な祖父の時計坂の家、憧れのいとこ、祖母の過去、ロシア人の時計師の謎に迫っていく緊迫感、蠱惑的な園…。
あぁ、なんと惹きつけられることか。
どっぷりと物語の世界に浸る感覚がたまらなくいい。

2023/05/21

面白かった。ファンタジー風味かつミステリー風味で、見方によってはちょっとホラーかも。特に中盤、祖母の謎にせまるあたりからは引き込まれた。単純に12歳のフー子ちゃんのひと夏の冒険としても楽しめるけど、不思議な園が何を象徴しているのか、終盤の祖父の台詞の意味などを考えると奥深い作品だと思う。
高楼方子さんの作品は「十一月の扉」に続いて２作目。どちらも「小学校高学年から」と書いてある児童書だけど、大人にもおすすめできる。すっかりファンになった。

2023/01/28

異世界への入口を発見し、あちらの世界に行く話。
なーんだ、ナルニアみたいな話か、あっちを見つけたから出掛けて探検するんでしょ、と思っていたものの、まったく違った。

何かを素敵だと思う心、強い憧れが扉を開けるのに、その強い憧れ、突き詰めたいという思いが身を滅ぼすことになる。
思っていた話ではなかったけど、心に刺さる一冊でした。

2022/09/23

リサさんの登場でふと思い出したけど小学生の頃に読んでいた！
蠱惑的でぼんやりと霧がかっていて甘い匂いのする秘密の庭に導かれる少女フー子
その庭に呑み込まれた祖母スギノにとっては、夫や子はこの世に留まる理由にならなかったと想像できるところが、グワーッと苦しいけどすごくイイッ！
スギノさんの時代にそぐわない自由奔放さや情熱、好奇心、様々なものへの憧憬が、家庭に入ったとしても失われずに夫や子より優先されてしまった…
良き妻や良き母である前に「スギノ」という魂であったことが苦しいし、羨ましいし、でもそういう魂を有する女性は時代に関係なくいたっていい！！

2021/12/28

想像の翼を思いっきり広げて、お話の世界にどっぷりつかることができれば、ワクワクドキドキしながら読み進められる。

ファンタジー好きな読書家の子どもにおすすめ。

2021/08/17

どこかゾワゾワする話。
子供だったら途中で怖くて読めなくなっちゃう気がする・・・。
むしろ、大人な今だからこそ楽しく？読める本な気がする。
読んでいる最中、場面の様子がすぐにイメージでき、爽やかな夏空の下、どこか不気味な雰囲気も感じる。両極端な要素があり、そのバランスも良い。、

2021/02/22

うわお。いい！途中から一気におもしろくなってぐわっと入り込んだ。夏休みに祖父の家に滞在することになった女の子。時計塔、不思議な庭園、寡黙な祖父、魅力的ないとこ、心を許せる男の子、ジプシーの男、行方不明の祖母…。高楼さんの描く世界とそこで暮らす人々は何て魅力的なんだろう。いい本に出会えた。