生命、エネルギー、進化 の商品レビュー
生命の誕生時から現在にいたる「生命史」をエネルギーの観点から説明した本。 よく詩的な表現で「生命の灯を渡す」みたいなことを言うが、まさにそれで、ある観点からすると、生命史とは、原始の生命誕生時に発生したエネルギーを化学反応で連鎖させて再生産し続けた歴史とも言えるのだと理解できた...
生命の誕生時から現在にいたる「生命史」をエネルギーの観点から説明した本。 よく詩的な表現で「生命の灯を渡す」みたいなことを言うが、まさにそれで、ある観点からすると、生命史とは、原始の生命誕生時に発生したエネルギーを化学反応で連鎖させて再生産し続けた歴史とも言えるのだと理解できた。 この「生命の灯」の正体(レドックス反応からATP生成に至る過程)や、その「渡し方」、つまり原核生物と真核生物の分岐(ミトコンドリア革命)を含めた生命の進化について、ドキュメンタリーみたいな筆致で描かれていた。ただ、化学や生物のリテラシーが乏しい私からすると、生成AIに聞きまくって、やっと概要を掴めた程度だったので(それはそれで楽しかったが。。)、「謎に迫る!」みたいな書き方ではなく、もう少し教科書的に説明してくれたら有りがたかった。もっとも、それは私の知識不足のせいであり、もっとこの分野に詳しい人を読者と想定すると、最も面白く内容を伝えられるのが、このドキュメンタリー調の書き方だと思う。 生命に関して新たな視点をもたらしてくれる、そんな本だった。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
真核生物は海底のアルカリ熱水孔における細菌と古細菌の奇跡の共存からミトコンドリアが細胞の一部となって生まれたという説を提唱。この広い宇宙において地球と同じような環境が他の惑星で無数にあったとしても同じことが起きる可能性は非常に低いという。 生命の神秘を感じる名著
Posted by
私の生物学の基礎知識が乏しく、返り討ちにあったような読後感。だが、生命の誕生についてよくある「原始の海の有機分子が濃縮されたスープに何らかの化学反応が起きて生命が誕生した」といった説を否定し、アルカリ熱水噴出孔において無機鉱物を介したプロトン勾配が有機分子の発生を促したという説は...
私の生物学の基礎知識が乏しく、返り討ちにあったような読後感。だが、生命の誕生についてよくある「原始の海の有機分子が濃縮されたスープに何らかの化学反応が起きて生命が誕生した」といった説を否定し、アルカリ熱水噴出孔において無機鉱物を介したプロトン勾配が有機分子の発生を促したという説は、条件が揃えば生命が発生するのは必然であるかもしれないことを素人にも分かりやすく伝えてくれる。 またミトコンドリアは真核生物の単一の起源であることなども、驚かされる。私もそばの木にもミトコンドリアを持ち、その共通の起源は40億年前にアルカリ熱水噴出孔でもぞもぞ動いていた生物にまで遡れるとは。生命の不思議さについて改めて考えさせられる。
Posted by
2025年2月2日、メルカリから「めいちゃん」や「ファスト&スロー」の新着通知の期限切れの通知が来て設定を見直してたら、「世の初めから隠されていること」が6600円で出ており、その出品者がこの本を出してた。2000円。 この表紙みたら、なぜか東大の生協の本屋を思い出した。ありそ...
2025年2月2日、メルカリから「めいちゃん」や「ファスト&スロー」の新着通知の期限切れの通知が来て設定を見直してたら、「世の初めから隠されていること」が6600円で出ており、その出品者がこの本を出してた。2000円。 この表紙みたら、なぜか東大の生協の本屋を思い出した。ありそう。
Posted by
専門外だと難易度高めだが、じっくり読めば理解出来なくはない感じで、しかも論理展開が面白い。どういう話かというと、生命の誕生についてなのだが、細菌みたいな原核生物からどうやって真核生物に進化したのか、という物語。 そこには内部共生という過程で、細胞同士が融合したり、更にプロテオバ...
専門外だと難易度高めだが、じっくり読めば理解出来なくはない感じで、しかも論理展開が面白い。どういう話かというと、生命の誕生についてなのだが、細菌みたいな原核生物からどうやって真核生物に進化したのか、という物語。 そこには内部共生という過程で、細胞同士が融合したり、更にプロテオバクテリアなどを取り込んでしまう進化の過程があった。それがミトコンドリアだが、これにより、真核生物はより強大なエネルギーを代謝する能力を得る事ができた。 ー 初期の地球で生命の誕生の助けになりえた環境は、定常的な炭素とエネルギーの流れが組み合わさったアルカリ熱水噴出孔。熱水孔の細孔内の薄い半導体の障壁をはさんだ地球化学的なプロトン勾配が、反応に対するエネルギーの障壁を打ち壊す可能性があることに気づいた。反応性の高いチオエステルを作ることで、プロトン勾配は炭素とエネルギーの両方の代謝の誕生を促せ、熱水孔の細孔内に有機分子の蓄積をもたらしながら、「脱水」反応を容易にしてDNAやRNAやタンパク質などの複雑なポリマーができるのだ。私は遺伝コードがどうやって生じたかなどの説明はかわし、こうした条件が理論上、遺伝子とタンパク質をもつ原始的な細胞を作り出したという概念上の議論に的を絞った。細胞の集団はまったく通常の自然選択を受けた。 ー ここ地球であれ、宇宙のどこかであれ、最も現実的に生命を生み出しうる環境は、アルカリ熱水噴出孔だ。そうした熱水孔は細胞に天然のプロトン勾配を利用させ、ついには細胞自身を生み出させる。この流れで言えば、地球上のすべての細胞が化学浸透共役を利用していても何の不思議もない。そして全宇宙の細胞も化学浸透共役を利用すると私は予想しよう。すると、それらの細胞も地球上の生命とまったく同じ問題に直面するはずだ。 ー 専門家が数十年かけて世界じゅうの考古学的事物を調べ、もっと前の都市、すなわち古代ローマ以前の文明の遺跡を発掘しようとしたとする。そうすれば、ローマがどうやってできたのかがいくらかわかるかもしれない。数百の例が見つかるが、よく調べると、どれも古代ローマよりも新しいことが判明する。古くて原始的に見えた都市がどれも、本当は古代ローマにみずからの祖先をもつ人々が「暗黒時代」に築いたものだったと。結局、すべての道はローマに通じ、ローマは実は一日にして成っていたというわけだ。ばかげた空想のように思うかもしれないが、これは今われわれが生物学で直面している状況に近い。現に細菌と真核生物をつなぐ中間の「文明」はない。中間に見えたごくわずかなものも、いまやかつての栄光はない。帝国の見かけをしたビザンティウムが、最後の数世紀に都市を囲む城壁にまで縮んでしまったように。このみっともない状況をどうしたら解決できるのか?実は、系統学が手がかりを与えてくれる。その手がかりは、単一の遺伝子の研究ではどうしても得られなかつたが、現代の全ゲノムの比較によって暴かれたのである。 どうやってミトコンドリアのような別の生物が人体に組み込まれたのかに興味があったが、その答えが本書で得られる。専門用語はネットでも調べながら、少し苦戦する読書だが、満足である。
Posted by
研究者が脳で感じているスリルをこの本を読んで感じることができたのと、自分は生物学の専門知識が多少あったので、なんとなく理解したけど、ない人は少し厳しいかも
Posted by
人をマイクロに突き詰めてくとここに到達する最先端にいると思われる本。内容は難解だが、何度も読みたい本。
Posted by
はじめに——なぜ生命は今こうなっているのか? 第 I 部 問題 1 生命とはなにか? 生命最初の20億年小史 遺伝子と環境に関わる問題 生物学の中心にあるブラックホール 複雑さへの失われたステップ 間違った疑問 2 生とはなにか? エネルギー、エントロピー、構造 生命のエネルギ...
はじめに——なぜ生命は今こうなっているのか? 第 I 部 問題 1 生命とはなにか? 生命最初の20億年小史 遺伝子と環境に関わる問題 生物学の中心にあるブラックホール 複雑さへの失われたステップ 間違った疑問 2 生とはなにか? エネルギー、エントロピー、構造 生命のエネルギーのメカニズムは不思議と狭い可能性に絞られている 生物学の中心的な謎 生命は結局のところ電子 生命は結局のところプロトン 第 II 部 生命の起源 3 生命の起源におけるエネルギー 細胞の作り方 熱水孔は流通反応装置 アルカリ性であることの重要性 プロトン・パワー 4 細胞の出現 LUCAへ向かう岩だらけの険路 膜の透過率の問題 なぜ細菌と古細菌は根本的に違うのか 第 III 部 複雑さ 5 複雑な細胞の起源 キメラという複雑さの起源 なぜ細菌はいまだに細菌なのか 1遺伝子あたりのエネルギー 真核生物はどうやって制約から抜け出したのか ミトコンドリア—— 複雑さへ導く鍵 6 有性生殖と、死の起源 遺伝子の構造の秘密 イントロンと、核の起源 有性生殖の起源 ふたつの性 不死の生殖細胞、死を免れぬ体 第 IV 部 予言 7 力と栄光 種の起源 性決定とホールデーンの規則 死の閾値 フリーラジカル老化説 エピローグ──深海より
Posted by
【総合評価 ⒋3】 ・革新性⒋5 進化や生命の起源のプロセスにエネルギーの観点を持ってくるという発想に驚かされた。 ・明瞭性⒊5 内容が非常に高度、高校レベルの生物学(一部大学レベル)を要求されるため理解するのにかなり時間がかかった。 ・応用性⒋0 生物学の根幹を学べるため、...
【総合評価 ⒋3】 ・革新性⒋5 進化や生命の起源のプロセスにエネルギーの観点を持ってくるという発想に驚かされた。 ・明瞭性⒊5 内容が非常に高度、高校レベルの生物学(一部大学レベル)を要求されるため理解するのにかなり時間がかかった。 ・応用性⒋0 生物学の根幹を学べるため、生物系の分野全てに生かすことができそう。 ・個人的相性⒌0 生物好きの私にとっては大好物であった。内容の難解さを上回る興味を持って読み進めることができた。
Posted by
後半はやや構成が甘く散漫な印象になってしまっているが、 前半の生命誕生を解き明かす件は素晴らしく、どきどきする ような読書体験であった。もちろん今のところ仮説の域を 出ないし、これから様々な検証や訂正を繰り返していくの だろうが、少なくとも「生命スープ」仮説を聞かされた時の 何と...
後半はやや構成が甘く散漫な印象になってしまっているが、 前半の生命誕生を解き明かす件は素晴らしく、どきどきする ような読書体験であった。もちろん今のところ仮説の域を 出ないし、これから様々な検証や訂正を繰り返していくの だろうが、少なくとも「生命スープ」仮説を聞かされた時の 何とも言えないモヤモヤ感は吹き飛ばしてくれる内容で あった。「周回遅れ」になる前に読むべし。
Posted by
- 1
- 2
