徹底調査 子供の貧困が日本を滅ぼす の商品レビュー
我が国において、子供の貧困は見えづらい。 なぜならこの国での子供の貧困とは相対的貧困であり、我々が一般的にイメージする「着る物も食べるものもなく、やせ細って腹部だけが膨らんでいる」子供ではないからだ。 しかしその分かり難さゆえに、非難の的になったり、適切な対応が取られなかったりす...
我が国において、子供の貧困は見えづらい。 なぜならこの国での子供の貧困とは相対的貧困であり、我々が一般的にイメージする「着る物も食べるものもなく、やせ細って腹部だけが膨らんでいる」子供ではないからだ。 しかしその分かり難さゆえに、非難の的になったり、適切な対応が取られなかったりする。 格差は深刻だというのに、多くの人はそれに気づけなかった。 本書で取り上げられている記事等の中で、朝日新聞における特集、「子どもと貧困」、NHKスペシャルでの報道については、私も読んだり見たりしていたし、母が福祉行政に携わっていたこともあり、知識の素地はあった。 しかし思っていた以上に格差が年々広がっており、子供の貧困がもたらす社会的損失が大きく、古い知識では間に合わないことを悟った。 このままでは日本は確実にすべての部門で立ち行かなくなることが明らかである。 にもかかわらず、子供に対する支援は高齢者に対するそれに比べて圧倒的に少なく、お粗末としか言いようがない。 これで先進国とは! しかし私はここで世代間の対立を煽りたいわけでも、政治的可否を問いたいのではない。 とにかく、長期的かつ幅広い視点で問題を把握し、解決のためのプロセスを整備すべきだと言いたいだけなのだ。 読書が子供達の自立や貧困から抜け出す一助になるということ、また親向けのプログラムが子供の非認知能力に大きく関わるという指摘は印象的だった。 ここで例として取り上げられている「グリムスクール」をアルバイト先で扱っていたこと、自身が読書好きであることから、期待を過度にかけているかもしれないが、それを差し引いたとしても傾聴に値する。 私も中学生の頃から母子家庭で育ってきた。 「貧困」ではなかったが、親の努力、図書館など地域の教育施設、奨学金によって今、こうして生きていられる。 当事者ではないが、決して遠くはないところにいた。 だから、もっと知りたい。 力になりたい。 「ジブンゴト」、そう捉える人が少しでも多くなることを心から願っている。
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子供の貧困とは17歳以下の相対的貧困の割合。 相対的貧困とは可処分所得の真ん中に満たない暮らしをしていること。学歴と収入は比例しており、特に大学進学率の差が大きく、教育格差が将来の所得格差につながる。 貧困を定義すると、可視化する上で統計データがあるものとして、生活保護世帯、児童...
子供の貧困とは17歳以下の相対的貧困の割合。 相対的貧困とは可処分所得の真ん中に満たない暮らしをしていること。学歴と収入は比例しており、特に大学進学率の差が大きく、教育格差が将来の所得格差につながる。 貧困を定義すると、可視化する上で統計データがあるものとして、生活保護世帯、児童養護施設、ひとり親世帯に分類できる。 現状を放置すると、非正社員や無業者が増えることで税や社会保険料の負担は減るが、生活保護などの社会保障給付が増える。 就業者数が少ないと、税収が減り、社会保障給付額も増えない。 経済や財政が悪化し、社会保障給付額や公共サービスを削減、税負担の増加など社会全体の負担が増す。結果として、犯罪の増加や結婚や出産のハードルが上がり、社会不安も高まる。貧困の再生産は続くこととなる。 学歴は関係ないと言う人がたくさんいますが、新卒の給料をみても何高卒と大卒では大きく開きがあります。大卒しか採用しない企業も沢山あるため、中卒や高卒は不利です。スタートが違うため、将来的な所得格差が発生します。 貧しい家庭では日々生活していくことで精一杯のため、塾や習い事に通わせるお金もありません。数年前から自分の職場でも、正社員は大卒のみの採用となっています。私自身も高卒、大卒どちらも部下として受け持ったことがありますが、高卒はすぐ感情的になったり、短絡的な思考の持ち主が多いように思えます。 教育格差が所得格差となり、貧困の連鎖が生まれるのだと強く感じました。
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子供の貧困が、貧困の連鎖を産み、ひいては社会的損失を生む。小さいうちからの、適切な教育が、そのリスクを減らす。行政マンとして、非常に有意義な本であった。私も、行動を起こしていきたい。と思いました。また、子供の救済と合わせて、親への教育も必要である。
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■4章ー貧困の連鎖の断ち切り方 ・「社会的相続=自立する力の伝達」が重要。 ・自立する力には以下の3つの要素がある。 1)お金(勤労) →就学・就業に必要。就業感にもつながる。 2)学力(認知能力) →未だ学歴社会のため必要。子の教育投資にも。 3)非認知能力 →自制心、やり抜く力、社会性など。最重要。 ・乳児期から学童期までは、以下の要素を以下の順序で体得することが重要。 1)基本的信頼 →両親は絶対に助けてくれるという安心 2)自律性 →まずは自分でやってみる、失敗してもOK 3)積極性・自主性 →他者との関わり。分担、責任感、我慢など 4)勤勉性 →やり抜く力、努力の重要性 ■5章ー実証実験 ・以下の3つの事例が4章の理論を裏付け。 1)ペリー就学前計画 2)アベセダリアンプロジェクト 3)シカゴハイツ幼児センター ・幼児期の数年のプログラムが、30年以上後の就業状況や所得に影響することを確認。 ・幼児期の非認知能力向上は、将来の所得や就業確率向上の効果が大きい ・非認知能力とは社会性や他者とのコミュニケーション能力のこと ・親向けプログラムは、こどもの非認知能力を育てる ・非認知能力のある子ほど、自助努力ができるため、認知能力の伸びが大きい ・まず非認知能力、ついで認知能力を高めると、効率が良い
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【毎年43兆円が失われる――他人事ではいられない貧困問題】6人に1人とされる子供の貧困を放置すると毎年40兆円の社会的損失が生まれる! データと当事者の肉声でたどる貧困問題の最前線。
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